老人ホームで看取りをしてもらえるの?

老人ホーム

老人ホームは、高齢者が集団で日常生活を送ることができる施設で、施設によって受け入れられる要介護度に違いはあるものの、食事や生活支援サービス、入浴や排泄介助などの介護サービス、リハビリや機能訓練、レクリエーションやイベントなどを行います。

では、老人ホームでそのまま最期のときを過ごす「看取り」はしてもらえるのでしょうか?施設の条件や看取り介護の内容についてご紹介します。

看取りってどういう意味?

看取りとはもともと、病気の人の側で世話をする、看病する、死期が来るまでの長期間にわたって見守る、といった患者さんへの介護・看護全般を指し示す言葉でした。しかし、近年では人生の最期である「臨死期」においての介護、看護のみを「看取り」と言い表すことが多くなってきています。そのため、「看取り」は自然、緩和ケア・終末期ケア・エンゼルケアなどと非常に深く関係しています。

緩和ケアや終末期ケアは、近い将来に亡くなられることが予想される人に対するケアで、患者さん本人の意向をできるだけ尊重しつつ、身体的・精神的・霊的な苦痛をできるだけ和らげ、患者さんそれぞれがその人らしい充実した最期を迎えられるよう、介護や援助をすることです。緩和ケアと終末期ケアは、ケアの対象疾患や対象時期などが多少異なるものの、基本となる理念はほぼ同じです。

一方、エンゼルケアは亡くなられた人に対するケアで、前述の緩和ケア・終末期ケアが広まっていく中、日本古来の「湯灌(ゆかん)」という葬送のためのお清めの儀式の習慣などと結びついて生まれた言葉です。病院などで死を迎えることが増えるにつれ、病院では綿詰めや清拭などのごく基本的な処置を行い、帰宅してから湯灌として体を湯水に入れて洗浄し、化粧や着替えを業者が行うことが多くなりました。

エンゼルケアでは、従来行われてきた医療機関としての「処置」だけにとどまらず、死に立ち会う専門職としての立場として、患者さんご本人の死の直後からご家族への精神的なケアを含めてできうる限りの援助を行うとともに、その過程を通じて援助を行う専門職自身も成長していく、という考え方をします。

看取り介護では、どんなケアをしてくれるの?

介護現場で行われる「看取り介護」では、主に以下の3種類を中心に行います。

精神的ストレスの緩和
  • 死を前にすると、誰でも不安や寂しさを感じる。今までできていたことができなくなることも多い
  • 友人や知人でも亡くなる人が増えてくることから、喪失体験で大きなストレスを感じる
  • 相手を理解しようとしたり、手や体をさすったりするなど優しいコミュニケーションに努め、ストレスを軽減することが重要
  • 本人の希望を聞き出し、できるだけ希望に沿った生活を送れるような支援もする
身体的ストレスの緩和
  • 現状の体調を維持できるよう、日々観察し、バイタルの変化を管理する
  • 死を間近にすると趣味嗜好が変わることもあり、今の本人の希望を聞くことが大切
  • 食事の味付け、水分の温度や種類、運動習慣や入浴習慣の好みなども変化することがある
  • 寝たきり状態になる場合、とくに床ずれ(褥瘡)の予防として定期的に体位変換をしたり、クリームなどで皮膚を保護したりして身体への負担を軽減する
家族に対するケア
  • 利用者さん本人だけでなく、家族ともこまめに情報を共有し、最期のときに備える
  • 残された期間や、そのためにしなくてはならないことを説明し、納得してもらう
  • 利用者さんご本人は「家族に迷惑をかけたくない」と思っており、家族は「本人に充実した最期を送ってほしい」と思っているため、このギャップを解消するのもスタッフの仕事

自分の死に直面しているとき、誰でも不安で寂しいものです。とくに、認知症や老衰で利用される人の場合、友人や知人を亡くして喪失感に襲われることも多いでしょう。そこで、精神的なストレスを軽減できるようなコミュニケーションに努めたり、本人の希望をできるだけ尊重した生活を送れるよう支援したりします。また、体調がこれ以上悪くならないような観察とケアも重要です。

このような利用者さんご本人に対する精神的・身体的両面からのケアはもちろん、家族に対してのケアも同時に行っていきます。残された時間で何ができるのか、そしてどのような準備をしておかなくてはならないのかといった説明に加え、利用者さんご本人と家族の間での気持ちのギャップを埋め、うまく解消したりすることも看取り介護の大切な役割の一つです。

利用者さんご本人が亡くなられた後には、家族に対してグリーフケアも行います。グリーフケアとは、身近で大切な人を亡くして大きな悲しみを感じている人のためのケアで、大切な人の死を受け入れて納得し、精神的にも肉体的にも立ち直り、正常な日常生活へ戻るための支援を行います。

ご本人がどのように介護を受け、どう生活していたかをお話したり、日常生活でのさまざまな場面の写真や映像を撮っておき、家族に渡したりすることもあります。最初はどうしても受け入れづらく、毎日泣き暮らしてしまう家族も多いのですが、こうした話や写真、映像によってだんだんと癒やされていくことでしょう。

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看取りができる老人ホームはあるの?

看取りができる老人ホームもあり、その数は年々増加傾向にありますが、すべての老人ホームでできるとは限りませんので、注意しましょう。介護保険には「看取り介護加算」という項目が設定されていて、以下のような条件を満たす施設であれば、看取り介護加算をサービス料に付加できますので、看取り介護も行えます。

  • 常勤看護師(常駐でなくてもよい)が1名配置されていて、施設または病院などの看護職員との連携による24時間の連絡体制が確保できている
  • 看取りの指針を定めていて、入所の際に本人や家族などに説明し、同意を得ている
  • 看取りに対し、職員研修を実施している
  • 医師が一般に認められている医学的知見に基づいて、回復の見込みがないと判断した場合に看取り介護を行う
  • 本人や家族の同意を得て、介護計画を作成している
  • 医師や看護師、介護職員などが共同で利用者の実態を随時、本人や家族に説明し、同意を得たうえで介護を実施している
  • 医師や看護師、介護職員などが協議し、その施設の看取り実績を踏まえ、適宜、看取りに関する指針の見直しをする
  • 看取りを行うときは、個室または静養室が利用できるよう配慮する

看取り介護加算の点数は、以下のようになっています。この加算により、入居者ご本人とその家族に対し、1〜3割の自己負担が発生します。

  • 家族に看取りに同意してもらった後、4〜30日以内…144点
  • 死の前日と前々日…680点
  • 死亡日…1280点

それほど高いハードルではありませんので、看取り介護を行っていない施設の方が少ないことは確かです。厚生労働省「平成27年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」によれば、特別養護老人ホームの76.1%、老人保健施設の64.0%、介護療養型医療施設の81.9%が「終末期に入った入居者に対して看取りを行っている」とのことです。

看取り介護で医師が必要になるのは「検死」であり、死亡を確認してもらうときですから、病院などの医療機関に比べて医師が常駐しなくてよいことも、比較的実施しやすい理由の一つです。病院で看取りを行う場合は、一般的に老人ホームよりも点滴や人工蘇生など、ターミナルケアに近い内容となりますが、それぞれの病院やホームの特徴によっても変わります。

実際に看取りを行う手順って?

死期が近いということはあらかじめわかっていても、その瞬間は突然やってきます。利用者の容態が悪化するとすぐに介護士や看護師が家族に連絡し、施設に直行してもらいます。しかし、その後数時間で息を引き取る場合もあれば、意識が低下したまま数日間が経過することもあり、人それぞれなので、家族の宿泊スペースを設けている施設もあります。

家族が到着するまで、施設スタッフはできるだけのケアを行い、最期のときを家族と一緒に迎えられるよう図らいます。息を引き取られた後はエンゼルケアを行いますが、このタイミングは医師の到着を待つまでの間か、検死後のどちらかで行います。身体をきれいに拭き、新しい服に着替えを行い、整容や化粧などを施します。

その後、葬儀社が到着したら、対応は施設スタッフから葬儀社に引き継がれます。最期に、職員や親しかった入居者などに見送られ、施設を後にすることになります。

看取り介護に必要な手続きとは?

看取り介護を実施するに当たっては、以下の書類を作成し、家族の同意が得られた場合のみケアを行います。

  • 看取り介護指針(看取り介護で提供する各種書類を含む)
  • 重要事項説明書
  • 急変時や終末期における医療などに関する意思確認書

また、看取りに特化したケアプランと言える「看取り介護計画書」も作成され、家族の同意を得ます。通常のケアプランとだいたい同じで、いつ・誰が・どのように・何をするのかが計画されています。もちろん、これらの同意は状況や本人・家族の考えが変わった場合には、いつでも変更することができます

おわりに:老人ホームでも看取りをしてもらえることが多い

すべての老人ホームで看取り介護を実施しているわけではありませんが、看取り介護を実施している老人ホームは圧倒的に多いです。基本的には死期の近い利用者さんに対し、精神的・身体的なケアを行うとともに、家族に対してさまざまな準備や説明を行います。

看取り介護に当たっては、看取り介護計画書や指針、意思確認書などを作成し、家族に一緒に確認してもらい、同意を得る必要があります。

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