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ターミナルケアって、どんな内容のケアが受けられるの?

介護

認知症やその他の疾患によって、あるいは老衰によって、人は人生の最期を迎えます。ある日突然大きな疾患で亡くなるのではなく、徐々に体力を失っていく場合、ある程度死期がわかることが多いです。

そんなとき、最期までの残された時間をサポートするためのケアの1つが「ターミナルケア」です。ターミナルケアとはどんなケアのことなのか、またその具体的な内容について見ていきましょう。

ターミナルケアって?看取りとは違うの?

「ターミナル」とは終末期のことを指しますので、ターミナルケアとは終末期ケアのことです。人生の終末期、疾患の終末期が来たとき、延命するのか、残された時間をできる限り充実させていくのかという非常にデリケートな決断から始まり、治療による延命よりも、疾患による苦痛や不快感を緩和し、残された時間を充実させようとする場合には、ターミナルケアが選択されます。

ターミナルケアでは、疾患で余命わずかとなった人はもちろん、認知症や老衰によって死期が近いとされる人たちが、人生の残された時間を自分らしく充実して過ごすことができるよう、肉体的な苦痛や不快感を和らげるのはもちろん、精神的な平穏や残された時間のQOLを高めるためのケアまでを包括的に行います。

通常の治療行為と同様、ターミナルケアを行うかどうかは患者さん本人と家族の意思によります。しかし、ターミナルケアを始めることは、延命を諦めることとほぼ同じですから、その決断は非常に難しい問題です。本人の意思で開始を決断できれば理想的ですが、とくに認知症などでは本人に意思確認するのが難しいことも多く、その場合は家族の判断で行われます。

がんなどの疾患では、症状から予測される余命、治療の効果がどのくらい期待できるかどうか、などを考慮してタイミングを決断します。認知症や老衰の場合は、一般的に「寝たきりになり、介助があっても食事がとれなくなったとき」がターミナルケアの開始時期とされています。

看取りケア・緩和ケア・ホスピスケアとはなにが違うの?

ターミナルケアと同じようなケアとしてよく聞かれるものに、「看取りケア・緩和ケア・ホスピスケア」があります。死期が近い人のケアをする、という意味ではいずれも同じですが、少しずつ意味や対象とする人などが違います。それぞれについて、ターミナルケアとの違いを見ていきましょう。

看取りケアとターミナルケアの違いとは?

看取りケアとは、主に在宅や介護施設で最期のときを迎える人に対して行われるケアです。ターミナルケアと非常に近い考え方のもとで行われ、ケアされる本人に安らぎを感じてもらうことや、たとえ意識がなくても最期のときまで人間らしい尊厳を守り、身体の介助や声かけを行っていくケアのことを指します。

そのため、看取りケアには特殊な知識やテクニックが必要というわけではなく、患者さんにとってもその家族にとっても、残されたわずかな時間を充実して過ごしてもらうための「相手を思いやる気持ち」が最も大切です。例えば、思い出話に花を咲かせたり、本人の希望をできるだけ尊重しながら楽しく過ごしたり、そんな時間がかけがえのないものと言えるでしょう。

緩和ケアとターミナルケアの違いとは?

緩和ケアは、末期がんやAIDS(後天性免疫不全症候群)などといった不治の病を抱えた人に対して行うもので、主にこれらの疾患による苦痛を取り除くことを目的とした、非常に医療的なアプローチだと言えます。がんやAIDSを発症した患者さんは、その疾患によるさまざまな症状や合併症に苦しんでいます。

そこで、これらの苦痛を取り除き、患者さんに残された時間のQOLをより高めることが緩和ケアの主な目的です。ターミナルケアが「治療を中断し、残された時間をより心穏やかに過ごす」ものであるのに対し、緩和ケアは「治療を続けながら、残された時間のQOLも上げていく」という考え方に基づいて行われます。

ホスピスケアとターミナルケアの違いとは?

ホスピスケアも、基本的には緩和ケアと同様、疾患による苦痛を取り除き、最期を看取ることを目的とした医療的なケアです。「ホスピス」という言葉は、1967年にイギリスのロンドンで、末期がん患者の苦痛を取り除くために作られた施設から取られました。日本では、現在ホスピスケアと緩和ケアはほぼ同義で使われていることから、「ホスピス・緩和ケア」とひとまとめにして扱われることも多いです。

ターミナルケアの具体的な内容とは?

ターミナルケアの内容は、大きく「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の3つに分けられます。「身体的ケア」とは主に身体の痛みなどを取り除く医療行為であり、医師や看護師などの医療従事者が行わなくてはなりません。「精神的ケア」は患者さんの不安や恐怖を和らげるケア、「社会的ケア」は費用などの負担を取り除くケアのことで、この2つは特別な資格がなくても、患者さんの家族や友人が行えます。

とくに、疾患によって死期を宣告された人の心理状態は、一般的に「否認→怒り→取引→抑うつ→受容」という5段階を辿って落ち着くとされています。何かの間違いではないかと考える「否認」、どうして自分が死ななくてはならないのかという「怒り」、神や仏など人智を超えた存在に縋り、死を遅らせてほしいと思う「取引」など、患者さんの心は非常に乱れます。

こうした怒りや恐怖、不安、猜疑心などは、患者さんの言動にも当然現れてきます。周囲の人にも負担の大きい時期ですが、これらのプロセスがあることを理解し、できるだけコミュニケーションを取りながら不安や恐怖を取り除き、本人の心の整理を助けてあげると良いでしょう。そして、本人が納得のいく最期を迎えられるよう手助けし、支えてあげてください。

「身体的ケア」って具体的にどんなもの?

主に投薬などの医療的なケアにより、身体的な苦痛を取り除くのが「身体的ケア」です。医療的な処置のため、医師や看護師などの医療従事者が行う必要があります。例えば、がんなどの疾患の終末期には強い痛みが発生することが多く、患者さんが痛みで眠れなくなったり、身体を動かせなくなったり、精神面でも強い負担がかかったりしますので、これを和らげるものです。

また、ターミナルケア開始の判断基準ともなっている「食事がとれなくなったとき」の対応も、身体的ケアに含まれます。食べやすいように料理を細かくすり潰したり、チューブを通して食べ物を胃に送り込む「経管栄養」を行ったり、胃に小さな穴を開けて食べ物を注入する「胃ろう」の処置をとったりなど、さまざまな方法で栄養の補給を行います。

ただし、栄養補給は延命措置にもなりえますので、そもそも栄養補給を行うかどうか、行うならどんな補給手段にするかといった選択は、本人や家族の意思を確認し、できるだけその意思に沿って行わなくてはなりません。

毎日の生活において、着替えや排泄・移動などの介助を行ったり、寝たきり状態になった際は床ずれ(褥瘡)を防ぐためのケアをしたりすることも広い意味で「身体的ケア」に含まれます。状態に応じて酸素吸入や点滴が行われることもあります。こうした介助やケアは、自宅介護においては介護者の大きな負担にもなりますので、介護サービスを積極的に利用し、プロの手を借りて家族の負担を軽減することも重要です。

少しでも心穏やかに過ごすため、身体を清潔に保つことも大切です。とはいえ、自力で入浴できない人の介助を毎日行うのは、介助される本人にとっても、介助を行う人にとっても体力の消耗や負担が大きくなります。そこで、基本的には入浴の代わりに、全身の清拭を毎日行うのが良いでしょう。髪を整えたり、女性ならメイクをしたりするのも、残された日々を人間らしく過ごす方法の1つです。

「精神的ケア」って具体的にどんなもの?

当たり前と言えば当たり前ですが、誰しも自分の死は怖いものです。死を目前にした患者さんは、死への不安や恐怖に加え、遺される家族を心配するなどで精神的に不安定になることもあります。そのような感情に寄り添い、不安や恐怖などのマイナスの感情を軽減し、安心して明るく過ごせるよう努めるのが「精神的ケア」の主な目的です。

とくに、今までずっと家庭を支えてきた人や、職場で重要なポジションに就いていた人など、社会的な責任が強い立場にいた人にとっては、死期を意識するに当たって遺される周囲を心配したり、責任を感じたりすることも多いでしょう。患者さんの思いに寄り添い、安心させてあげるのは専門職だけでなく、家族や友人でもできることです。

例えば、ベッドの周囲にできるだけ今までと同じような環境を整えてリラックスできるように配慮したり、好きな音楽をかけたり、気が済むまで患者さんの話を聞いてあげたりするのが良いでしょう。本人の過ごす部屋を落ち着ける場所、満足のいく場所にしてあげるとともに、親しい人と過ごす時間を十分に作ってあげることも大切です。

死に対する不安や心残りが強くなりすぎないよう、死をタブー視しすぎるのではなく「不安や恐怖は感じて当たり前のもの」と周囲の人が理解し、患者さんの気持ちに寄り添っていく必要があります。一人で死に臨むというような孤独感を感じさせないよう、できることで支えてあげてください。

「社会的ケア」って具体的にどんなもの?

ターミナルケアを受けるうえで、どうしても入院や介護に関わる費用の問題は心配ごとの1つになりやすいです。そこで、この負担を減らすため、療養中の心理的・社会的援助を行ってくれる専門職に「医療ソーシャルワーカー」というものがあります。病院にソーシャルワーカーがいる場合は、ぜひ相談してみましょう。また、遺産相続や遺品整理などの金銭的な問題をサポートするのも、「社会的ケア」に含まれます。

他にも、職場や家庭で責任のある立場だった人が、自分の入院や要介護状態で周囲に負担をかけてすまないという気持ちとともに、重要な立場や役割を失い、不安感や孤独感、喪失感に苛まれることも少なくありません。「自分なんかもういてもいなくても良いのだ」といったマイナス思考や自暴自棄に陥らないよう、コミュニケーションをしっかりとっていくことも、「社会的ケア」の1つです。

おわりに:ターミナルケアとは、人生の終末期を心穏やかに過ごすためのケア

ターミナルケアとは、人生や疾患の終末期において、治療を継続することよりも、苦痛を取り除いて残された時間を充実させ、心穏やかに過ごすことをサポートしていくケアのことを指します。

ターミナルケアは医療従事者が行う「身体的ケア」と、家族や友人など近しい人を中心に行う「精神的ケア・社会的ケア」の3つからなります。本人が安心して残された時間を過ごせるよう、できることで支えてあげましょう。

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