年齢を重ね、体の自由が利かなくなってくると、お風呂に入るのにも介助が必要になります。
今回は、家族に「入浴介助」が必要になったときのために知っておきたい、入浴介助に必要な準備物や手順、注意点を解説していきます。
入浴介助では、どんなものが必要?
高齢者の入浴介助に必要な準備物としては、以下が挙げられます。入浴に必要なものと介助者が身につけるもの、両方を確認し、準備しておきましょう。
- 入浴に必要なもの
- シャワーチェアや転倒防止マットなど、高齢者向けの入浴用品
- ボディソープや石鹸、シャンプー
- 体を洗うためのスポンジやタオル
- 高齢者の体を拭くための、大きくて吸水性に優れたタオル
- 新しいおむつや、尿取りパッドなどを含む着替え
- 爪切り、保湿剤など、入浴後のケアに使う薬品など
- 介助者が身につけるもの
- 撥水性のあるエプロン
- 滑りにくい、ゴム製靴
- 手袋
準備が不十分だと、裸の状態のまま高齢者を待たせることになってしまいます。
高齢者への入浴の声掛けは、上記を一通り準備してから行ってください。
入浴介助の手順って?
まずは高齢者を浴室に呼ぶ前に、以下の準備をしましょう。
入浴介助の手順1:入浴前の準備
- 脱衣所と浴室を25度前後まで温め、他の部屋との温度差をなくす
- お湯の温度は、摂氏40度くらいに設定しておく
- 体温測定、血圧測定、顔色の確認、脈拍・呼吸をチェックする
- 体調に問題がなさそうなら、入浴前にトイレに連れていき排泄を済ませてもらう
- 前項で紹介した準備物を一通りそろえ、不足がないか確認する
- 高齢者用のいすやマットを浴室にセットする
- 安全に配慮しながら脱衣所で服を脱いでもらい、浴室へ入る
体力の低下した高齢者は、入浴による体温や血圧の変化により、急に体調を崩すことがあります。このため上から3つ目、入浴前のバイタルチェックは非常に重要です。
顔色が悪くないか、本人が不調を訴えていないか、めまいはないかを確認し、可能であれば体温・血圧も確認してください。
体温が平熱より高いようなら、入浴は辞めておいた方がよいでしょう。
なお血圧は、あらかじめ担当医に基準となる値を聞いておいて、その範囲を出るかどうかで判断してくださいね。
それでは続いて、浴槽に入るところから入浴中の介助の手順を見ていきましょう。
入浴介助の手順2:髪・体を洗う
- お湯を高齢者の手が触れるところ、壁やいす、手すりにかけ温めておく
- 転ばないようゆっくり浴室に入ってもらい、いすに座り、手すりを握っていてもらう
- ※片麻痺がある場合は、麻痺のある方を壁に着け、ない方で手すりを持ってもらうこと
- 本人に温度を確認してもらい、OKが出たら、お湯を足元から心臓の方へかけていく
- 髪 ⇒ 顔 ⇒ 体の順に、本人と介助者で洗っていく
- 洗い残しのないよう、しっかり泡を流す
- 髪・体を洗う時のポイント
- 陰部をはじめ、自分でできる部位は高齢者本人に洗ってもらう
- 介助者が髪を洗うときは、指の腹で頭皮を洗うイメージで
- 手と足の指の間、女性は乳房の下までもれなく洗う
- おなかは「の」の字を書くようにやさしく洗う
入浴介助の手順3:浴槽への出入りの仕方
- 手すりにつかまって立ち上がり、心臓から遠い足元からゆっくり浴槽へ移動する
- ※体に麻痺のある場合は、台などに腰かけた状態になり、麻痺のない足から浴槽へ。その後は介助者が高齢者の背中を支え、麻痺のある足を浴槽へ入れていく。
- 足が浴槽に入ったら、腰かけた状態になり、体全体を浴槽に沈めていく
- 脱水や血圧変化に配慮し、5~10分程度で入浴を切り上げ、逆の手順で浴槽から上がる
入浴が終わったら、滑って転ばないよう足の裏の水分を拭き取ってから脱衣所に出て、湯冷めしないうちに素早く全身を拭いていきます。
爪切りや保湿クリームなどでのケアが必要な方なら、脱衣所にいすを用意しておき、水分補給をしてもらいながら拭き上げ・ケアの両方を済ませてしまってください。
寝たきりの人のシャンプーの方法は?
寝たきりの人をシャンプーするときは、最低でも週に1回を目安に行います。
まずは以下の通り、必要なものを用意しましょう。
- 寝たきりの人のシャンプーに必要なもの
- ヘアブラシ
- テーブルクロスくらいの大きさの、ビニール製の敷物
- ケリーパッド
- 予備のお湯を入れておくためのやかん、お湯を頭にかけるための小鍋
- 汚れたお湯を捨てるためのバケツ
- お湯を入れた洗面器
- シャンプーとリンス
- タオル、綿棒、ドライヤー
必要なものを用意したら、寝たきりの方の頭の下に座布団を入れ、ケリーパッドを付けて傾斜を付けます。洗髪に使ったお湯が流れやすいようにしたら、準備完了です。
- 寝たきりの人のシャンプーの手順
- まずよくブラッシングして汚れを浮かせてから、やかんのお湯で髪全体を濡らす
- シャンプーを付けて、指の腹で頭皮をマッサージするように洗っていく
- 襟足や首の後ろも忘れず、後頭部を静かに持ち上げるようにして洗うこと
- シャンプーが終わったら、タオルで泡を拭き取ってからお湯で数回すすぐ
- リンスをつけて、軽くすすいだら洗髪は終了
- 髪をしぼり、タオルで髪の水分を、綿棒で耳の中の水分を取り除く
- 顔に熱風が当たらないように注意しながら、ドライヤーする
おわりに:しっかり必要物を準備し、高齢者の体調を診つつ入浴介助を!
入浴は、体力の落ちた高齢者の血圧や体温を急変させ、体調を悪化させる可能性のある行為です。このため入浴介助を行うときは、スムーズに入浴できるよう必要なものを事前にしっかり準備したうえで、高齢者本人の体調を観察しながら提供する必要があります。本記事を参考に入浴介助の必要物・手順を確認し、安全に入浴介助をしてあげてくださいね。
コメント