高齢化社会が進む日本では、介護を必要とする認知症患者の数も増加傾向にあります。その上、介護職の人手不足や家族内での介護負担も深刻化する一方です。そこで近年導入されつつあるのが「介護ロボット」です。実際に導入された事例で、どのようなメリットが得られたかお伝えしていきます。
介護ロボットが認知症が改善する!?
「認知症が進んだ高齢者の心を癒す効果がある」として、近年注目されているのがコミュニケーションロボットによるロボットセラピーです。
認知症になると、今の自分の状況をうまく認識できないために不安や抑うつ感情を抱えやすい、という症状が出る場合があります。本来は根気よく適切なコミュニケーションをとれば、こうした不安は和らぐのですが、介護者は認知症患者の長い会話に付き合うのをストレスに感じたり、付きっ切りで介護し続けたりするのが難しいのが現実的な課題です。
そこで活躍するのが、癒し系のコミュニケーションロボットです。まだ導入事例は少ないものの、コミュニケーションロボットを導入した介護施設では、ロボットとのふれあいを通じて「認知症患者の笑顔が増えた」「抑うつ症状の改善が見られた」といった精神的なケア効果が確認されています。
コミュニケーションロボットの種類はメーカーごとに特徴の差がありますが、会話力や表現力が豊かなのが特徴で、接し方によってロボットの性格が変化するという人間らしさを持ち合わせているものもあります。見た目が可愛らしく、動物のような見た目や触り心地を再現したものも存在します。
介護ロボットの導入で、認知症患者への介護負担が減る
認知症患者は度々不安感が大きくなるので、介護者がコミュニケーションをとることも必要な上に、徘徊など突然の行動を起こすこともあるため、なかなか目を離せません。つまり、介護負担がかなり大きいという問題点があります。
コミュニケーションロボット等の介護ロボットを導入することで、認知症患者がロボットとふれあう時間が増え、その隙に介護職員は他の入居者の排泄介助に回ることで、実質的な介護負担が軽減する効果も報告されています。
また、認知症患者に見られる繰り返しの会話や妄想、暴言で、ストレスを感じて感情的になってしまう介護者も多いですが、ロボットはそうした苛立ちを感じることはないので、介護する側もされる側も心理的負担が軽減する効果も見込めます。
認知症患者の「見守り型」介護ロボットも
近年ではコミュニケーションロボットだけでなく、認知症患者の行動を分析し、生活支援を行う「見守り型」の介護ロボットの開発も進んでいます。
認知症になると記憶機能や認知機能が低下することで、日常生活に支障が出ます。そのため介護者は認知症患者を付きっ切りで見続ける必要がありますが、1日中相手をするのは無理があります。
そこで役立つのが、AIによる認知症患者の行動の分析・推測です。認知症患者は服薬や通院、デイサービスへの通所時間を忘れてしまうことが少なくありません。しかし決められた行動パターンを予めロボットに記憶させることで、服薬の時間を知らせたり、デイサービスのお迎えを知らせたりすることが可能になります。
また、認知症患者特有の理解不能な行動・言動が起こりやすい状況をAIが分析・学習することで、突発的な症状を防ぐ効果も期待できます。ロボットのセンサーが患者の顔色や脈拍、声のトーンから「ここで口論になると、興奮して怒り出す可能性がある」「この時間になると徘徊しやすい」等の予測を介護者に伝えることで、適切なケアを学べたり、突然のトラブルを予防できたりする可能性があるのです。
おわりに:介護ロボットの導入が本格化されれば、介護負担の軽減が近づくかも
超高齢社会の日本では、今後「認知症の高齢者をどう介護していくか」が一層問題化することが見込まれます。介護ロボットの導入事例はまだ少なく、開発途上で検証段階にあるのが現状ですが、認知症患者の症状や介護者の負担を和らげる効果が期待できることから、介護施設や家庭内でも当たり前に導入される未来も近いかもしれません。
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