認知症の患者さんは、症状に個人差が大きく、細やかな対応や専門的な知識が求められます。そのため、一般的な介護施設では、認知症の患者さんの受け入れができないところや、ごく軽度で日常生活に支障がない患者さんに利用を限っているところも少なくありません。
一方、認知症デイケアは、認知症の患者さんを専門に受け入れるための施設です。どんな特徴のある施設で、どんなプログラムを受けることができるのでしょうか。
認知症デイケアとは?
認知症デイケア(重度認知症デイケア)とは、精神症状や行動障害が著しい認知症の患者さんに対し、一般的に6時間以上のケア及びリハビリテーションを通所リハビリテーションの形で提供するサービスのことです。ケアの中には対象者の健康管理も含まれているため、認知症患者さんの心身の機能回復や維持のために、通常の医療の枠組みの中ではカバーしきれないさまざまな活動が行われます。
まずは認知症外来などで医師の診察を受け、スタッフから患者さんの家族へデイケア内容を説明した後、家族の了承を得て正式にデイケア参加となります。デイケアの費用には医療保険と老人医療が適用されますので、介護度や介護保険は関係なく、介護認定は原則として必要ありません。また、自立支援医療制度を利用している場合はこれも適用となります。そのため、多くの患者さんが介護保険によるデイサービスよりも少ない負担で利用でき、家族の在宅介護の負担軽減につながります。
ケアプログラムとしては、食事や入浴などの介護サービスはもちろん、個々の患者さんの認知機能の進行を予防し、生活機能の改善を図るという目的のもと、日常生活機能訓練や回復のためのリハビリテーション、レクリエーションなどを通じ、老後の生きがいや楽しみを発見できるような環境が整えられています。
認知症デイケアには、専門医や作業療法士、看護師などの専門スタッフが配置されていますので、症状が悪化した際にも早期に対応できます。重度認知症デイケアと一般的な通所介護デイサービスの違いは、以下のようになっています。
- 重度認知症デイケア
- 運営は病院・診療所などの医療機関で、利用には医師の指示が必要
- 作業療法士などがリハビリテーションを実施する
- 申請の必要はあるが、自立支援医療制度などの経済的な負担を軽減する制度を利用できる
- 医師・看護師・作業療法士などの専門スタッフが診療とケアを行う
- 通所介護デイサービス
- 要介護者が同じ立場の人とコミュニケーションする機会を増やす場所
- 社会的孤立感の解消や、心身のリフレッシュ、老化の防止、家族の負担軽減などが目的
- 医療の専門家は置かれていないことも多い
対象となるのは、主に医師がデイケアの必要ありと判断した精神症状や行動障害がある認知症の患者さんですが、そのほかにも昼間、家に一人でこもりがちである、仲間や生きがいを見つけたいという方も相談の上、利用することも可能です。詳しくは、利用したいデイケアの専門医に相談してみましょう。
また、こうしたデイケアなどのサービスは患者さん本人だけでなく、介護する家族のためにも存在しています。在宅で介護を行うのは負担も大きいため、こうした介護サービスを上手に利用し、負担を減らしていきましょう。
認知症デイケアを提供できる施設の条件は?
認知症デイケアを提供できる施設には、以下のような認定基準があります。
- スタッフ
- 精神科医:1人以上が勤務
- 作業療法士及び看護師:専従がそれぞれ1人以上勤務
- 精神病棟への勤務経験がある看護師または精神保健福祉士、臨床心理技術者:専従がいずれか1人以上勤務
- 患者数:従事者4人に対し、1単位25人とする。1日2単位を限度とする。
- 施設面積
- 重度認知症患者デイケアを行うにふさわしい、専門の施設を有する
- その専用施設の広さは60㎡以上であり、かつ、1単位の患者1人当たりの面積は4.0㎡が基準である
- 施設の設備・器具など
- 重度認知症患者デイケアを行うために必要な専用の器械や器具を具備している
認知症は個人差の大きい症状であることや、認知症のない人の介護と比べて専門的な知識が必要になってくることから、精神科医や精神・心理療法などに関する知識を有するスタッフの勤務が義務づけられています。また、スタッフ4人に対して患者数は25人を限度とするなど、スタッフの目が行き届かなくならないような配慮がされています。
施設の広さに関しても、患者さん1人当たりのスペース基準が定められており、窮屈さを感じないようにされています。専用の器械や器具は、かつては施設基準で指定されていましたが、現在では患者さんのリハビリテーション過程や状態に即した器具が目的に応じて具備されていればよいとされています。
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どんなプログラムがあるの?
認知症デイケアのプログラムは、施設ごとに細かい時間や種類の違いはあるものの、大まかには以下のような流れで進んでいきます。
- 迎えに行くまたは来所してもらい、健康チェックを行う
- 回想法や創作活動などの作業療法、リハビリテーション
- 昼食・口腔ケアなど
- 各種レクリエーション、イベントなど
- お茶を飲みながら、1日の活動を振り返る
- 自宅まで送るまたは迎えに来てもらう
多くの認知症デイケア施設が送迎車を用意していますが、中には用意がないところもありますので、送迎可能かどうかは事前に確認しておきましょう。健康チェックは体温や血圧・脈拍などを測り、必要に応じて昼食などの健康管理に反映されます。また、ご家族と一緒に来所された場合、健康相談や介護指導などを行っている施設もありますので、希望する場合は問い合わせてみるのがおすすめです。
また、希望者には入浴サービスを行っている施設や、誕生会・夏祭り・敬老会・クリスマス会・新年会・お花見などのイベントを行っている施設もあります。こうした季節ごとのイベントは、日々の楽しみや生きがいになると同時に、見当識障害を軽減するための手がかりにもなることでしょう。
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おわりに:認知症デイケアでは、専門スタッフによるケアプログラムが受けられる
認知症デイケアは、一般的な介護施設のデイサービスとは異なり、医療機関が運営するサービスなため、専門医と専門知識を持ったスタッフが常に勤務していて、入浴・食事などの介護サービスや専用のケアプログラムが受けられるほか、症状が悪化した際にもすぐに対応してもらえます。
反面、利用には医師の診察と指示が必要です。利用したいと考える家族の方は、ぜひ一度認知症デイケア施設の専門医に相談してみましょう。
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