BPSDの認知症の人の介護はどうやってすればいい?

認知症

認知症とは、病名ではなく状態のことで、周囲の人やものを認識したり、ものの名前や状態を記憶したり、状況を判断したりする力が何らかの原因で障害され、社会生活に支障を来すようになったことを言います。

認知症の症状にはさまざまなものがありますが、特に近年聞かれる「BPSD」とはどのような症状のことを指すのでしょうか?また、BPSDの認知症の介護はどのようにすれば良いのでしょうか?

認知症の中核症状とBPSDってどういう意味?

認知症の症状は、大きく2つの状態に分けられます。「中核症状」と呼ばれるものと、「BPSD(行動・心理症状)」と呼ばれるものです。BPSDはかつては「周辺症状」と呼ばれていましたが、近年はBPSDという名称が一般的になってきています。

中核症状とは、脳の神経細胞が壊れることによって起こる症状です。直接的な症状のため、メインの症状という意味もあって「中核症状」と呼ばれます。一般的に「認知症」と言ったときに想像されるのはこの中核症状でしょう。具体的には、以下のようなことを指します。

  • 記憶障害…直前に起きたことでも忘れてしまう
  • 判断力の障害…筋道を立てた思考ができなくなる
  • 問題解決能力の障害…予想外のことに対処できなくなる
  • 実行機能障害…計画的にものごとを実行できなくなる
  • 見当識障害…いつ・どこがわからなくなる
  • 失行…いつもしていた日常的な行動ができなくなる
  • 失認…道具の使い方がわからなくなる
  • 失語…ものの名前がわからなくなる

中核症状は認知症になると誰にでも現れる症状で、逆に対処法も充実しています。一方、周囲の人や環境との関わりの中で発生する症状のことを「BPSD」と呼んでいて、具体的には以下のようなことを指します。

  • 暴言、暴力、多弁、多動
  • 幻覚、妄想、せん妄、もの盗られ妄想
  • 異食、過食
  • 抑うつ、思い込み、不安、焦燥、依存
  • 不眠、昼夜逆転、徘徊
  • 弄便、失禁、介護への抵抗

これらの症状は個々人の置かれている環境や、その時周囲にいる人との人間関係、性格などが複雑に絡み合って発生するため、人それぞれ現れ方が違います。そのため、介護する人も中核症状に比べて対応に苦労するのがBPSDです。

BPSDの介護をするときのポイントって?

BPSDの介護をするときのポイントとして、主に以下の8つの点に注意して行うと良いでしょう。

  1. 幻覚…現実にはそこにいない人物や動物などが見える(幻視)、声や音が聞こえる(幻聴)
  2. もの取られ妄想…置き忘れた財布や眼鏡などを盗まれたと思ってしまう
  3. 焦燥…人を叩いたり引っかくなど攻撃的になる、悪口や奇声、物を隠す、全てを嫌がる
  4. 易怒性…イライラ、些細なことで不機嫌になる、怒る、怒りで暴力を振るう
  5. 徘徊…目的もなくうろうろと歩き回り、外に出かけてそのまま帰り道がわからなくなる
  6. 夜間せん妄・昼夜逆転…夜間に興奮する、寝ていたのに突然騒ぐ、暴れる、眠れない
  7. 抑うつ…気分が落ち込む、趣味への興味や意欲を失う
  8. 意欲低下(アパシー=無感情)…何をしてもやる気がない、無表情・無関心になる

それぞれの症状に対する対処法を以下に詳しく見ていきましょう。

幻覚への対処

まずは、すぐにできるケアを行いましょう。

  • 幻覚に対する不安がある時は、「あの人(物)は悪いことをしないので大丈夫ですよ」「すぐいなくなりますよ」など、本人が安心できるよう働きかける
  • 歌を歌わせるなど、別の行動をさせる
  • 目を閉じたり開いたりする
  • 幻視の見えるところから目を外してみる
  • 不安や恐怖を煽るような環境を改善する

幻視や幻覚は、まずそこから気をそらすことが大切です。別の行動をさせたり、目を閉じたり開いたりさせるなど、視点を変えてみましょう。また、幻覚に対して不安や恐怖を感じている場合、「大丈夫ですよ、もうすぐいなくなりますよ」と、安心できるよう声をかけてあげることも大切です。

また、施設などに入居した直後だったり、薄暗くて幻覚を生じやすいなど、不安や恐怖を感じやすくなっている場合はしばらく介護時間を増やす、室内を整備するなど環境を整えてあげましょう。幻覚体験を重ねるうち、自ら「これは幻視・幻聴である」と気づいて治療しなくても生活していけるようになることもあります。

服用薬の影響ではないかと思われる場合や、発熱などの身体的な変化がある場合、睡眠に影響して眠れなくなったり途中で起きてしまったりする場合、せん妄(軽度の意識障害で、幻覚なども現れる)の症状が疑われる急な幻覚、興奮があるなどの場合は、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。

もの盗られ妄想への対処

まずは、すぐにできるケアを行いましょう。

  • 盗まれたことを否定するのではなく、一緒に探すなど本人に共感を示す
  • 別の話題や行動をさせるなど、興味や注意をそらす
  • 日中、やることをたくさん作ってあげる
  • ものをなくした時に探しやすい環境にする
  • ものがなくなっても、代用品を使うことができると伝え、安心させる
  • 眼鏡や補聴器を本人の視力・聴力に合わせたものにする
  • 施設に入った直後など環境が変わった時は、関わる時間を長めにする

もの盗られ妄想で最もつらいのは、最も身近な家族や介護者などが妄想の中で犯人に仕立て上げられてしまうことです。盗まれたことを否定すると余計に妄想が酷くなることがありますので、否定はせず一緒に探すなど、まずは共感しましょう。そうしながら、別の話題や行動をする、積極的な趣味などの活動をたくさん勧めるなど、できるだけ「ぼーっとしている時間」をなくすようにしましょう。

また、部屋などが雑然としていてものをなくしやすい環境であると考えられる場合、片付けをしてものがなくなっても探しやすい、見つけやすい環境にしておくことも大切です。眼鏡や補聴器が本人の視力・聴力に合っていない場合は、合ったものに変えましょう。信頼関係が築けている状態なら、ものがなくなっても代用品で十分対応できることを伝えて安心感を持ってもらいましょう。

その他、薬の影響や精神疾患、せん妄などが疑われる場合はかかりつけ医に相談しましょう。

焦燥への対処

まずは、すぐにできるケアを行いましょう。

  • 身体的な苦痛・不安を軽減する治療を試みる
  • 室温や照度の調整、騒音の除去など不快な刺激を取り除く
  • 好きな音楽などで落ち着ける環境を作ってあげる
  • わかりやすい言葉や文章で意思の疎通をはかる
  • 安心感を与えるようなゆっくりと穏やかな対応をする

身体的な不快感は精神的な部分にも大きく影響しますので、疼痛などの身体的な症状がある場合や部屋の温度・照明、騒音などの不快な刺激がある場合、まずはそれを軽減するような治療や環境整備をしていきましょう

また、好きな音楽をかける、わかりやすい言葉で穏やかに話しかける、など安心感を与えることも非常に大切です。否定や叱責は行わないようにし、良い点を褒めたり評価してあげると、焦燥感が落ちつく場合もよくあります。

それでもどうしても焦燥がおさまらない場合、精神科を受診して薬物療法を受けるという手もあります。ただし、薬物療法は有効とは限らず、逆に薬物の副作用でイライラが悪化したりすることもありますので、薬物療法を行う際はかかりつけ医とよく相談しながら行いましょう。

易怒性への対処

まずは、すぐにできるケアを行いましょう。

  • 怒りがおさまるまで待つ
  • 心理的な距離を無理に近づけようとせず、冷静に対応する
  • 気分がしずまるよう、穏やかにわかりやすい言葉で話しかける
  • 怒りの対象から他のことに意識をそらす
  • 介助を行う際、これから何をするかわかりやすく説明する

本人の認知機能に合わせた対応をすることが大切です。わかりやすく説明することはもちろん重要ですが、子供扱いされていると感じてしまうと怒る人もいます。介助を行う際にはこれから何をするのかをわかりやすく説明し、ケアを嫌がる時は他の方法を考えましょう。それでもどうしても嫌だという場合は、無理に説得せず怒りが落ち着くまでまず放っておくことも一つの方法です。

また、気分が落ち着くよう、安心できる部屋の環境を作ったり、落ち着く音楽や趣味など他のことに意識をそらしてあげるなども効果的です。可能なら安心できる人と面会してもらうのも良いでしょう。それでも暴言や暴力などがおさまらず、介助者に危険が及ぶような場合は薬物療法に移行する方法もあります。この場合も必ずかかりつけ医とよく相談し、安易に薬物療法に頼らないよう気をつけましょう。

徘徊への対処

まずは、すぐにできるケアを行いましょう。

  • 目的があって徘徊している場合、対処可能であれば対処する
  • 不快な環境や身体疾患の苦痛に配慮する
  • 不安を和らげる話し方を工夫し、安心感を与える
  • お菓子や音楽など、他のことで気を紛らわせる
  • 可能なら親しい人や家族などにしばらく付き合ってもらう、一緒にしばらく歩く
  • 病院の名札などをつけ、徘徊先で連絡してもらえるようにする
  • GPSの設置などを考慮する
  • 脱水症状が起こらないよう、水分補給をしっかりする

徘徊にはっきりした目的(体の不調で医師や看護師を探していた、室内が不快など)がある場合は、まずその問題を解決しましょう。しかし、目的がない場合はお菓子や好きな音楽など、木を引けるもので注意をそらす、不安を和らげるよう話し方で安心感を与えられるよう配慮しましょう。

可能なら、親しい人や家族にしばらく付き添ってもらい、安心してもらえるようにすることも大切です。また、万が一外に出てしまって帰り道がわからない場合でも連絡してもらえるよう、病院や連絡先を書いた名札などをつけておくのも良いでしょう。GPSのついた電子機器をつけてもらうなども効果的です。

また、歩き回ることで水分を消費しすぎてしまうことに注意し、脱水症状には気をつけましょう。

夜間せん妄・昼夜逆転への対処

まずは、すぐにできるケアを行いましょう。

  • 不快な環境、頻尿や体位変換など断眠の原因をできるだけ取り除く
  • 疼痛や痒みなど、身体疾患による苦痛に配慮する
  • 脱水や食事の摂取不足を検討する
  • 昼間に定期的な運動や日光浴をする
  • 薬剤による不眠の場合は、かかりつけ医に相談する
  • 可能なら親しい人、家族などにしばらく付き添ってもらう
  • 可能なら施設職員がしばらくの間、添い寝する

昼夜の逆転がある場合、まずは朝起きて夜寝るという生活リズムを改善しましょう。その上で、不眠があるようなら不眠の治療を行います。夜間のせん妄が起こっている場合は、身体疾患・脱水や食事量の不足、室内環境の整備を行いましょう。昼間に定期的な運動や日光浴を行い、身体リズムを正しく保つことも必要です。

それでも治らない場合、または薬剤による不眠が疑われる場合はかかりつけ医に相談しましょう。

抑うつへの対処

まずは、すぐにできるケアを行いましょう。

  • 施設に慣れていない、近親者の死など環境や心理的ストレスがある場合、落ち着くまで介護時間を増やして負担軽減をはかる
  • 痛みや疲れなど身体症状が増えているようなら、状況をよく聞いて共感を示す
  • 絵画や日記などで自己表現したり、音楽療法などを行う
  • エアロビクスやダンス、フィットネスなど有酸素運動をする
  • マッサージをする

抑うつ状態は、まず何らかのストレス因子がないかどうか考慮しましょう。入所後すぐの場合、近親者の死を経験したなどの大きなストレスがある場合は、介護時間を増やしたり話を聞いたりしてできるだけ不安を取り除いてあげるようにしましょう。ある程度落ち着いてきたら、絵画や音楽・有酸素運動などの趣味や気分転換をしましょう。

薬剤の副作用や基礎疾患などの可能性が疑われる場合は、かかりつけ医に相談しましょう。

意欲低下への対処

まずは、すぐにできるケアを行いましょう。

  • 起床や就寝などの生活リズムをしっかり構築する
  • できるだけ多く声をかけて発話を促す
  • さまざまな活動に参加するよう促し、それに寄り添う
  • 自分で排便や排尿ができるよう声掛けをする、または便意や尿意を伝えるよう促す
  • 身体的や精神的な「廃用症候群」が起こっていないかどうか常にチェックし、その兆候が見られた場合は予防的介入を実施する

アパシー(apathy)とは、無感情・無気力状態のことを指します。高齢者のアパシーとは、これらの無感情・無気力状態によって意欲も低下し、身体的・精神的な活動がほとんど行われなくなってしまうことを指します。

そこで、まずは起床・就寝などの生活リズムを崩さないよう気をつけましょう。起床や就寝のリズムまでも崩れると、他のさまざまな疾患につながっていく可能性があります。また、できるだけ多く声をかけて発話を促す、趣味や運動などのさまざまな活動に参加するよう促したり、可能なら一緒に行うのが良いでしょう。

また、排便や排尿などを自分で進んで行わない場合、自分でできるように声をかけたり、便意や尿意を伝えるよう促したりすることも大切です。アパシーによって活動が極端に低下すると、筋力が著しく低下したり臓器に異常が現れたりと体にさまざまな不調や障害が現れる「廃用症候群」が起こることもあります。そうならないよう、早めに予防しておくことが大切です。

おわりに:BPSDの症状そのものに振り回されず、冷静な対応を

BPSDは暴言や暴力、幻覚やもの盗られ妄想、徘徊など、周囲の人々を振り回すような言動がどうしても多くなります。しかし、これは本人の意志ではなく、れっきとした病状なのです。ですから、症状そのものに介護者が感情を乱されることなく、あくまでも冷静に対処しましょう。

また、逆に抑うつやアパシーなど、気力の低下も深刻な問題です。こうした場合は運動や趣味の活動など、適度に気分転換をしていくことが大切です。

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