認知症は、現在の医療技術では完治する方法がまだ見つかっていません。しかし、進行を抑える方法はさまざまなものが研究されています。その一つが「リバスタッチ®」という貼り薬で、アルツハイマー型認知症の進行を抑える働きがあります。
リバスタッチ®はどのようにアルツハイマー型認知症に作用するのでしょうか?また、使い方や副作用についてもご紹介します。
リバスタッチ®にはどんな効果があるの?
リバスタッチ®は、アルツハイマー型認知症の症状の進行を抑える薬です。あくまでも現在の状態より症状が進行しないよう抑える薬であり、アルツハイマー病そのものを健常者と同じ状態に戻すような、治療するための薬ではありません。
そもそも、アルツハイマー病の症状が出るのは、神経細胞の情報伝達が悪くなっているからだと考えられています。神経細胞の情報伝達に関わる物質の一つが「アセチルコリン」というものですが、アルツハイマー病ではこの「アセチルコリン」の量が健常な人と比べて減少傾向にあることがわかっています。
そこで、リバスタッチ®はこのアセチルコリンを分解してしまう「アセチルコリンエステラーゼ」という酵素を阻害します。アセチルコリンの分解が阻害されると、脳内のアセチルコリン量が増え、情報伝達物質であるアセチルコリンの量が増えると、記憶力の低下や認知機能の低下など、認知機能障がいが進行するのを防ぐことができる、というわけです。
また、リバスタッチ®には「ブチリルコリンエステラーゼ」という酵素も阻害する働きがありますが、この酵素を阻害することによってアルツハイマー病などにどのような効果があるのかはまだよく知られていません。
リバスタッチ®の使い方は?どこに貼ればいい?
リバスタッチ®はパッチタイプの薬剤で、背中・胸・上腕のどこかに貼りつけて使います。4.5mg、9mg、13.5g、18mgの4種類があり、基本的には4.5mgからスタートして4週間ごとに1段階ずつ量を増やしていき、最終的に18mgを継続して使用していきます。ただし、医師の指示によってはこの限りではありませんので、使用方法は主治医の指示に従ってください。
具体的な使い方は、以下のようになっています。
- 1日に1枚、背中・胸・上腕のどこかに貼り替える(※全く同じ場所の皮膚には続けて貼らない。同じ部位でも場所をずらす)
- パッチが剥がれてしまったら新しいものに貼り替え、はがれたものは捨てる
- 使い終わったパッチは、皮膚についていた面を内側にして半分に折りたたみ、捨てる
- パッチを触ったあとは、目に触れないよう注意し、できるだけすぐに石鹸で手を洗う
また、もし貼り忘れに気づいた場合は、気づいたときにすぐ貼ります。ただし、4日間以上忘れてしまっていた場合、次に使うパッチの大きさが変わることもありますので、主治医の判断を仰ぎましょう。
まれに、パッチを貼った場所に赤みなどの皮膚症状が出ることがあります。多くは自然に治るため、放っておいても問題ありませんが、何日も続き、症状が軽くならない場合は主治医や薬剤師に相談しましょう。また、こうした皮膚症状を起こさないために、次のようなことに気をつけて使いましょう。
- 傷口や湿疹など、もともと皮膚に問題のある場所には貼らない
- 一度に2枚以上を貼らない
- 同じ場所に連続して貼らない(できれば2週間以上あける)
リバスタッチ®に副作用はある?
リバスタッチ®は、飲み初めの時期に「めまい・眠気」などの症状が現れる場合があります。転倒しないよう気をつけるとともに、車の運転など、注意力・集中力を必要とする作業はできるだけ控えましょう。また、人によっては吐き気・嘔吐・食欲不振などの消化器症状が起こることもありますが、これらの症状は多くの場合、体が薬剤に慣れていないことによるもので、慣れとともに消えていきます。
もし、嘔吐や吐き気などの症状が続いたり、胃のもたれ・痛み・便が黒くなるなどの症状も見られるようになった場合は、主治医や薬剤師に相談しましょう。
また、その他に使用中、以下のような症状が出る場合があります。
- 脈が遅くなる(徐脈)、脈が乱れる(不整脈)など心血管系の不調
- イライラ、怒りっぽくなる、などの精神症状
- 気を失う、けいれんが起こる、などの意識症状
このような症状が現れた場合、すべてまずは主治医や薬剤師に相談しましょう。精神症状や意識症状が出た場合には、別の薬を追加して投与する必要があることもあります。
ただし、上記いずれの症状が出た場合も、自己判断で勝手に中止することはやめましょう。また、リバスタッチ®はあくまでも症状の悪化を妨げるための薬剤であり、健常な状態に戻すための薬剤ではありませんので、一見、自覚症状が変わらないように見えることがあります。この場合も、自己判断で勝手に中止してはいけません。
認知症の症状は、何も対策しないとどんどん悪化の一途を辿ります。リバスタッチ®は途中でアセチルコリンの減少を食い止めることで、ぐっと底上げをしているような状態です。つまり、リバスタッチ®の使用を途中で止めてしまうと、そのサポートが外れるため、短期間で何もしなかったのと同じ状態まで一気に症状が悪化してしまうリスクがあります。
どうしても症状が変わらないことが気になる場合は、まず主治医に相談してみましょう。
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おわりに:リバスタッチ®は認知症の症状の進行を抑える貼り薬
リバスタッチ®は、1日に1枚貼り替えて使う貼り薬で、認知症の人で減少しやすい「アセチルコリン」を分解してしまう酵素である「アセチルコリンエステラーゼ」の働きを阻害することで、脳内のアセチルコリン量を増やし、情報伝達能力を維持します。
リバスタッチ®の副作用として、初期にめまいや眠気、嘔吐や食欲不振などの症状が出ることがあります。これらは体が慣れれば消えていきますが、続く場合は主治医に相談しましょう。
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