アルツハイマー型認知症とうつ病には、どんな違いがある?

認知症

アルツハイマー型認知症とうつ病は、初期症状がよく似ていることから、とくに高齢者でよく間違えられやすい疾患です。うつ病かと思って病院に行ったら軽度認知障害だった、逆に認知症だと思って専門医を受診してみたら実はうつ病だった、という例は少なくありません。

しかし、本来この2つの疾患は全く違うもので、症状の現れ方も細かく見ていくとたくさんの違いがあります。では、どんなことに違いがあるのでしょうか。

アルツハイマー型認知症とうつ病の違いとは?

アルツハイマー型認知症とうつ病は、全く違う疾患でありながら、同じような症状が出ることがあります。代表的なものがもの忘れや判断力の低下、興味や喜びを感じなくなり、今まで楽しんでいた趣味を楽しめなくなるといった症状です。しかし、これらの症状も、細かく見ていくと違いがあります。

アルツハイマー型認知症とうつ病の症状の違いを、症状の現れる部分ごとに詳しく見ていきましょう。

項目アルツハイマー型認知症うつ病(抑うつ症状)
知能明らかに低下する。日時や場所がわからなくなる低下しない。ただし、高齢者の場合はやや低下する場合もある
気分・行動易怒性が見られ、行動に一貫性がない。予測できない行動をとる午前中は調子が悪く、昼から夕方にかけて調子が良くなるなど、気分に変動がある。行動しなくなる
対人関係無関心になる、配慮に欠ける。時に無礼ととられる行動も引っ込み思案になったり、緊張が見られる
作業・仕事まとまったことができず、自分の関心事だけに集中する自信や根気がなくなり、続かない
自己像他人を疑いやすく、他罰的になる自分を責めやすく、自罰的で内向的になる
身体症状不眠が見られることがある不眠・食欲低下・自律神経症状が見られる
性欲関心を示さなくなる、または性的逸脱行為に出る減退する
感情感情鈍麻、我関せずのように情動が全体的に低下する悲哀・情けない・悲しい・虚しいなど負の感情が強くなる

アルツハイマー型認知症とうつ病の最大の違いは、アルツハイマー型認知症が攻撃的で他罰的になりやすいのに対し、うつ病では自分自身を責めやすく、自罰的で内向的になりやすいということです。また、うつ病では喜びや楽しさは感じにくくなりますが、逆に悲しみや虚しさなど負の感情は強くなるのに対して、アルツハイマー型認知症では全ての情動が低下する「感情鈍麻」という状態になりやすいです。

このように、アルツハイマー型認知症とうつ病は、似ているようで実際にはさまざまな違いがある疾患です。とくに高齢者ではどちらなのか判断しづらいことや、さらにアルツハイマー型認知症を発症することで二次的に抑うつ症状が現れることもありますので、家族や身近な人には判断が難しいことも多いです。上記のような症状が現れてアルツハイマー型認知症なのかうつ病なのか迷ったら、ぜひ、専門医を受診して正確な診断を受けましょう

うつ病からアルツハイマーに移行するって本当なの?

前章ではアルツハイマー型認知症から二次的に抑うつ症状が現れることがあることをご紹介しましたが、逆にうつ病からアルツハイマー型認知症に移行することもあります。実際に、日本では高齢者がうつ病にかかるケースが増えていますが、そのままアルツハイマー型認知症に移行してしまうケースもまた、非常に多いのです。

ヨーロッパにおいてうつ病患者2,220人を6年間追跡調査した結果によれば、うつ病から軽度認知障害へ、そして最終的にアルツハイマー型認知症へと移行した人は85%にものぼったということです。一方、うつ病にかからなかった人が軽度認知障害へ移行したのは32%で、比較的若い頃にうつ病を発症した人はアルツハイマー型認知症になりやすいのではないかと指摘されています。

このようなデータは各地で蓄積されていますが、うつ病そのものが認知症発症の要因なのか、うつ病と認知症の両方に関わる第三の要因があるのかはまだはっきりわかっていません。しかし、若い頃のうつ病が認知症のリスク因子であることは、だんだん疑いようがなくなってきている、と言われています。

うつ病と認知症は予防できるの?

うつ病と認知症は、いずれもいわゆる「気の持ちよう」「年だから仕方ないこと」ではなく、れっきとした脳機能障害であることがわかってきています。であれば、脳細胞を活性化させ、脳を健康に保つことが予防や改善の秘訣と言えます。脳を活性化するためには、脳を使ったパズルやトレーニングのほか、運動や食事コントロールが有効なことがわかっています。

認知症のリスク因子のうち「加齢」そのものはどうにもなりませんが、加齢によるリスク因子とは、主に細胞が受ける酸化ダメージや脳内の老廃物(アミロイドβなど)が蓄積していくことです。つまり、これらのダメージや老廃物をできるだけ流してやれば、いつまでも健康で若々しくいられる上に、うつ病や認知症のリスク因子も減らせるということになります。

例えば、運動によって脳内のアミロイドβが軽減することは、既にラット実験によって証明されています。さらに、カロリス(カロリーリストリクション)という、普段の食事から3割カロリーを減らすこともアミロイドβの軽減に有効であることも、同様にラット実験でわかっています。

腹7分目とも言われるカロリスは、寿命を15%延長することができるとも言われています。カロリーの摂りすぎ(とくに糖質の摂りすぎ)は細胞への酸化ダメージを増やしてしまいますから、逆にカロリーを必要な分だけに絞れば、身体全体を活性化し、アンチエイジングにもつながります。このことが、やがてはうつ病を改善・解消し、認知症の予防にも効果が期待できるというわけです。

ですから、普段からウォーキングなどの適度な運動習慣を持ち、栄養バランスを考えた腹7分目の食生活を心がけていくことが、うつ病の予防・改善にも、認知症の予防にも重要であると言えます。

おわりに:アルツハイマー型認知症とうつ病は違う病気だが、関連性はある

アルツハイマー型認知症とうつ病は、疾患としては全く異なります。とくに、自己像などの症状においてはアルツハイマー型認知症が他罰的・攻撃的なのに対し、うつ病は自罰的・内向的になりやすい特徴があります。

しかし、若い頃のうつ病がアルツハイマー型認知症の可能性を高めることから、関連性がないわけではありません。いずれも運動習慣や食生活の見直しで予防・改善できますので、ぜひ日頃から心がけていきましょう。

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