高齢者の睡眠障害の原因は? 病気が潜んでいる可能性も?

老後の不安・悩み

「年を取ってから早寝早起きになった」「就寝中トイレで何度も目覚めるようになった」というのは、健康な高齢者でも起こる現象です。しかし中には、高齢者がかかりやすい病気が原因で、睡眠障害を起こしてしまっているケースもあります。以下で詳しくお伝えしていきます。

高齢者の睡眠障害は「年のせい」?

一般的に高齢になると、脳の松果体(しょうかたい)から分泌される「メラトニン」(自然な眠りを誘うホルモン)の分泌量が減り、体内時計の睡眠・覚醒リズムが乱れることで、「眠りが浅い」「朝早く目覚めてしまう(早朝覚醒)」といった睡眠トラブルをきたすようになります。

しかしこれは加齢に伴う自然現象であり、健康な高齢者でも起こることです。若い頃ほど眠れなくなったからといって、過度に気にする必要はありません。70歳以上になると、1日7時間以上の睡眠は生理的に難しくなります。
また、高齢者は若年層と比べ、環境的な変化(退職や死別、一人暮らし)に伴う心理的ストレス、日常的な運動量の減少などによって、睡眠トラブルに見舞われやすい傾向にあります。

ただ、高齢者がかかりやすい病気が原因で、睡眠障害が引き起こされているケースも存在します。

高齢者の睡眠障害の原因となる病気とは?

健康な高齢者でも、加齢や環境変化の影響で多少の睡眠トラブルには見舞われますが、以下のような病気が原因で睡眠障害が引き起こされている可能性もあります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に繰り返し呼吸が止まって熟睡できなくなり、日中に過度の眠気やだるさを招く病気です。
多くのSASは咽頭や喉頭周囲の骨格筋が緩み、気道が狭くなることが原因で起こります(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)。一部の患者さんは、脳の病気や心不全等の疾患によって呼吸のリズムが調整できなくなることで起こります(中枢性睡眠時無呼吸症候群)。

SASの主な症状は以下の通りです。

大きないびき
いびきの後に呼吸が止まる
寝汗
睡眠途中の覚醒
熟眠感の低下
日中の眠気や倦怠感、集中力の低下
起床時の頭痛

実は高齢者の約10~20%は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群ということがわかっています。これは加齢に伴う呼吸調節機能の衰えが原因です(井上雄一「高齢者における睡眠障害」より)。
なお60歳以上の男性高齢者は、約20%の割合でSASにかかっていることもわかっています(三島和夫「高齢者の睡眠と睡眠障害」より)。

長期にSASが続くと、日中の眠気やだるさだけでなく、体内の酸素不足によって高血圧や心不全、心筋梗塞、脳卒中などの命に関わる病気を引き起こす恐れがあります。本人にSASの自覚がないことも多いため、一緒に寝ている人が異変に気づき、専門外来を受診させることも重要です。

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

レストレスレッグス症候群とは、夕方から深夜にかけて、下肢を中心に下記のような感覚が出現する病気です。

足がむずむずする
足が痛痒いような感覚がする
足をじっとさせていると非常に不快な感じがする

足を動かすとこれらの感覚は消えるものの、足をじっとさせていると再び不快感に見舞われるようになります。

レストレスレッグス症候群は、中年期以降の女性に比較的多い病気です。鉄欠乏性貧血や、腎不全による人工透析を受けている人に多く見られる傾向にあります。

この病気の患者さんは布団の中で足をじっとさせることが難しいので、眠いのに眠れない状態に陥ります。何とか寝つけても、足が周期的にピクピク勝手に動き続けてしまうこと(周期性四肢運動障害)が多いため、睡眠が浅くなって熟眠感が得づらくなります。また夜間に十分眠れなかったために、日中の眠気や過眠症状も引き起こすようになります。

レストレスレッグス症候群による不眠は睡眠薬で改善するものではなく、パーキンソン病に使われる薬が有効です。該当する症状にお悩みであれば、専門外来を受診してください(厚生労働省 e-ヘルスネット「レストレスレッグス症候群」)。

パーキンソン病やレビー小体症に伴う「レム睡眠行動障害」

レム睡眠行動障害とは、レム睡眠時(浅い睡眠時)に夢の中の体験と同じ行動をとってしまう病気です。

健康な人はレム睡眠時も筋緊張が緩んでおり、体は休んだ状態で夢を見ますが、レム睡眠行動障害では夢で見たことがそのまま体に反映され、下記のような行動が見られるようになります。

大声での寝言
腕を上げて何かを探す等の行動に出る
(重症の場合)起き上がって歩き回る、殴る等の行為をする

50代以上の男性に比較的多い病気で、パーキンソン病やレビー小体症などの神経疾患を持っている人に見られやすい睡眠障害です(厚生労働省 e-ヘルスネット「レム睡眠行動障害」)。

関連記事:レビー小体型認知症に現れるパーキンソン症状ってどんな症状?

認知症

アルツハイマー型などの認知症の患者さんの場合、体内時計を司る脳の視交叉上核の変化や睡眠調整機能の障害により、同年代の高齢者と比べてさらに睡眠が浅い傾向にあります。また、下記のような症状が出ることがあります。

夜間の不眠による昼寝の増加
昼夜逆転の不規則な睡眠リズム
せん妄
ぼんやり、またはもうろうとしている。言うことのつじつまが合わず、物忘れも多くなる現象。
日没症候群
夕方~就寝の時間帯にかけて、徘徊や奇声、興奮などの異常行動が目立つ減少。

認知症の高齢者の睡眠障害に有効な薬物療法は、今のところありません。逆に睡眠薬を使いすぎると本人のQOLが低下し、介護負担が増加する可能性もあります。

午前中に日光を浴びるようにする、日中の運動量を増やす、就寝・起床時間を規則正しく整える、認知症の治療薬(コリンエステラーゼ阻害剤)の午後以降の服用を避けるといった対処を根気強く続けることが大切です(厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の睡眠」)。

おわりに:高齢者の睡眠トラブルは、症状や原因の見極めが重要

睡眠トラブルは、健康な人であっても高齢になれば起こりうる現象です。ただ、ご紹介したような病気が原因で睡眠障害に陥る高齢者も少なくないので、日頃から症状を確認し、その原因を専門医に診断してもらい、原因に沿った対処を行うことが重要です。

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