認知症が原因の便失禁で気をつけることは?

認知症

認知症も初期のころは、もの忘れや軽度の見当識障害など、日常生活にはとくに支障がないことも多いのですが、症状が進行してくると、身体的な症状ももの忘れも進んでいき、便や尿の失禁に至ることもあります。

尿の場合はほとんどが水分ですから、パッドなどで吸収してしまえば済むのですが、固形物の多い便はそうもいきません。便失禁が起こってしまった場合、どのように処理を行えば良いのでしょうか?

便失禁とは?

便失禁は便漏れとも呼ばれ、下痢や便秘などのように便の状態が悪いときや、肛門の開閉を制御する筋肉が衰えたとき(身体状況のほか、基礎疾患がある場合も)に起こります。糖尿病や多発性硬化症などの慢性疾患とも関係しますが、とくに認知症の場合、トイレへの行き方を思い出せなくなったり、排泄の必要性を認識できなくなったりしてしまい、便失禁が起こりやすくなります

尿も同じですが、排便を制御できなくなったと感じてしまう便失禁は、患者さんにとって非常に衝撃的な出来事であり、社会的な行動や精神状態に影響を及ぼすこともあります。このため、なかなか本人も周囲も話題に挙げることができず、隠してしまいがちですが、問題を早期発見することで素早く介入し、対処することができます。

便失禁は、漏れや臭いに関する社会生活上の問題もさることながら、そもそも本人の身体の清潔状態に大きな影響を及ぼしますので、早急に何らかの対策を講じる必要があります。便失禁の原因は1つとは限らず、多くの要素によって起こっている可能性がありますので、いつ、どのように起こったのかを正確に把握し、原因を特定するとともに、予防と管理のプランを立てなくてはなりません。

認知症の便失禁の原因と対応方法は?

認知症によって便失禁が起こる状況としては、大まかに分けて「トイレの場所がわからなくなった」「トイレには行けたが、排泄に集中できていない」「トイレには行けたが、他の原因で失禁してしまった」の3つが考えられます。それぞれについて、対応方法を見ていきましょう。

トイレの場所がわからない(他の場所で排泄してしまう)
  • トイレの扉に「トイレ」「便所」などの大きな張り紙をする、電気をつけておく、扉を開けておくなどわかりやすくする
  • トイレを探しているような場合、本人の羞恥心に配慮してその人だけに聞こえるよう「トイレに行きませんか」と誘ってみる
  • 断られた場合は、「食事の前にトイレに行って、すっきりしておきましょう」など、日々のスケジュールに合わせてタイミングを図ってみる
  • 恥ずかしいことだという意識が強くなりがちなため、無理強いしたり他の人に知られたりしないような配慮をする
トイレで排泄に集中できない
  • 本や小物、カレンダーなどが置いてあると、認知症の人は気になってしまう
  • 排便に集中できないと、つい気になっている間に失禁してしまうこともあるため、この場合はトイレの中のものを片付けておく
トイレの中で失禁してしまう
  • ボトムスや下着を下ろす前に間に合わなかった、下ろし方がわからなかったなど
  • トイレの便座の座り方を忘れてしまう、姿勢を保つのが難しいという場合も、
  • 本人のプライドや羞恥心に配慮しつつも、必要な部分には声をかけながら介助を行う
  • 姿勢を保てない場合、手すりをつける、和式から洋式にする、なども効果的

また、もし失禁してしまった場合、羞恥心からつい汚れた下着を隠してしまう人もいます。家族としても失禁はショックですから、思わず失禁したことや隠したことを叱ったり責めたりしてしまうこともありますが、これは本人のプライドを大きく傷つけてしまいますので、やめましょう。

失禁してしまったら「気持ち悪かったですね。取り替えてすっきりしましょう」などと羞恥心を和らげられるような声かけが大切です。もし、失禁しているのに取り替えるのを拒否される場合は「食事の前に、きれいにしましょう」「散歩の前に、トイレに行っておきませんか」などと誘導し、タイミングをはかると良いでしょう。

便失禁に羞恥心を感じ、プライドが傷つけられたと感じるのは「下の世話になるのは恥ずかしい」などの意識が本人の中にあるためです。そのプライドや尊厳はできるだけ尊重しながら、できるだけトイレで気持ちよく排泄ができるよう、介助を行いましょう

根本的な対策はあるの?

できれば、便失禁は起こる前に防ぎたいものです。しかし、トイレに行けても失禁してしまうような場合、本人だけに任せていても防ぎきれないことがあります。そこで、周囲の人や介護者が排泄のタイミングをつかみ、そろそろかな?というタイミングで声かけをするとトイレできちんと排泄できることが多いようです。

排泄のタイミングをつかむためには、「毎日排便があるか、または何日間隔か」「食前か食後か」「排便を促す薬を服用しているか」などの排便パターンを数日〜1週間程度チェックします。ただし、タイミングがわからない全くの最初は、毎食後30分程度経ったころを目安として声かけをすると良いでしょう。

とくに、排便を促す薬を服用している場合は、下痢や便失禁を起こしやすいため、腹痛や排ガスの状態など、より細かく観察しておく必要があります。通常はだいたい1日1回の排便をトイレで行えれば便失禁はある程度防げますが、排便を促す薬を服用している場合はその間隔も異なる場合はありますので、ぜひ注意して観察しておきましょう。

便失禁による肌荒れに気をつけよう

便失禁が起こり、肛門だけでなく周囲や他の部分の皮膚に便がついてしまった場合、皮膚の表面に発赤や痛み・かゆみなどの炎症が生じることがあります。場合によっては腫れ・水疱・乾燥・かさつきなどが起こることもあり、こうした肌荒れが生じると感染への抵抗力も弱まってしまうことから、適切にスキンケアを行う必要があります。

便の中には消化酵素が含まれていて、とくに便失禁を起こしやすい下痢のときには活性化されたままのタンパク質分解酵素や脂質分解酵素が含まれるため、これらが皮膚に炎症を引き起こしてしまうのです。ですから、皮膚に便がついてしまった場合、速やかに取り除くようにしましょう。処理のときには高齢者の肌に考慮した優しい洗浄剤や保湿剤を使うとともに、必要に応じてクリームのような皮膚の保護剤を使うのがおすすめです。

また、処理の際には以下のポイントに注意しましょう。

  • 使用済みのパッドを交換する際には、毎回臀部と脚の間を清拭して清潔に保つ
  • 優しく清め、保湿と保護を行ってくれるような製品を使う
  • 水分を拭き取るときは、お肌をこすらないよう優しくパッティングする
  • 肌が乾燥してかゆくなると本人が引っ掻いてしまうことがあるため、ローションなどで保湿ケアを行う
  • クリームを使う際は、塗りすぎないよう注意する

おわりに:認知症が原因の便失禁は本人のプライドや尊厳を尊重しながら処理する

排尿もそうですが、とくに排便を制御できずに漏らしてしまうということは、認知症の本人にとって非常に衝撃的なことであり、社会的な行動や精神状態に大きく影響することも少なくありません。本人のプライドや尊厳を守りながらも、適切な処置が必要です。

排便の頻度はたいてい1日1回ですから、できれば、排便のパターンを周囲の人や介護者が把握し、適切なタイミングで声をかけ、トイレに誘導できると良いでしょう。

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