認知症の人が怒りっぽくなってしまう原因とは?

認知症

認知症の人は、脳の神経や血管などに何らかの異常が起こり、そのために機能が低下しています。すると、単なるもの忘れや記憶障害だけではなく、心理的・精神的な面にもさまざまな症状が現れます。

中でも、認知症で情動が抑えられなくなり、怒りっぽくなってしまうのはよく知られている事実です。怒りっぽくなるのはなぜなのか、怒りっぽくなってしまった人へ対応するときはどんなポイントに気をつけるべきか見ていきましょう。

認知症の人が怒りっぽくなる理由とは

認知症の人が怒りっぽくなるのは、脳の機能が低下し、衝動や欲求などの感情的な部分をコントロールできなくなってしまうからです。これは「易怒性(いどせい)」と呼ばれ、認知症の行動・心理症状の1つです。さらに、認知症によってもの忘れや判断力の低下が起こると、「今までできていたことができない」という自分に対する苛立ちや不安で余計に怒りっぽくなってしまうこともあります。

また、アルツハイマー性認知症やレビー小体型認知症の場合、猜疑心が強くなり、人が信じられなくなるという心理症状の特徴があります。自分の思い通りにならないと「だまされた」と思い込んでしまったり、財布が見つからないと「盗まれた」と思い込んでしまう、などです。しかも、この場合は家族や介護者など身近な人に猜疑心の矛先が向いてしまい、自分以外が集まって話をしていると「仲間はずれにされた」などと思い込んで怒ってしまう、というケースにもつながることがあります。

そのため、こうした怒りっぽさは「MCI(軽度認知障害)」の症状であると考えられます。高齢になり、最近明らかに怒りっぽくなった、イライラすることが増えた、という場合はMCIの兆候かもしれません。

怒りっぽいのは認知症のサイン?

前章でご紹介したMCIには、怒りっぽさのほかにも「頑固になった」「だらしなくなった」「人の話を聞かなくなった」などの人格の変化が見られることがあります。特に、アルツハイマー性認知症の場合は、こうした人格の変化の現れがMCIの時期から現れることが多いです。易怒性は周辺症状の中でも周囲との関わりの要因が大きく、ケアによって改善する可能性もあります。

健常者がMCIの症状を発症した場合、早期発見と早期対処によって14〜44%の人がその後も健常者として生活できる程度に回復しています。逆に、MCIの状態で何も対処を行わない場合、1年で10%、5年で40%の人が軽度認知症に移行しています。

さらに、MCIの症状が起こる前には「MBI(軽度行動障害)」というごく初期の心理的・社会的な障害が起こることが、2016年の国際アルツハイマー病会議で発表されました。MBIは「関心や意欲」「気分や不安」「衝動制御」「社会適合」「思考」の5つの観点から評価され、この項目に沿ったチェックリストが日本でも各所で作られています。

チェックリストは作成者によって項目が多少増減しますが、もともとのチェックリストが38項目あり、情緒面の質問も多くありますので、本人だけでは客観的な判断が難しいこともあります。そこで、家族や周囲の人と一緒に確認することが大切です。例えば、以下のような質問があります。

  • これまで関心を持っていたことに好奇心を示さなくなった
  • 自発性や行動性が乏しくなってきた
  • 嫌なことを言ったり、怒りっぽくなることが増えた
  • 他人の気持ちや思いについて、疑り深くなった

長い間、認知症は防げないと考えられてきましたが、最近ではMCIの段階で適切な対処を行えば、認知症にそのまま症状が進行するのを防ぐことができるようになりました。ですから、怒りっぽくなったりイライラや不安・猜疑心に苛まれることが増え、MCIかもしれないと思ったら、こうしたチェックリストを参考に、早めに診断を受けると良いでしょう。

怒りっぽい認知症の人には、どうやって対応すればいいの?

認知症の怒りには、「冷静に対処する」「話題を変える」「距離を置く」「医師に相談する」の4つの対処法がポイントです。怒りに対して慌てたり反発したりしてしまうと余計に事態を悪化させてしまうこともありますので、あくまでも感情を交えず、冷静に対処することが大切です。

4つの対策のポイントは、以下の通りです。

冷静に対処する
  • その人の存在を受け入れ、感情に共感する姿勢を見せる
  • ゆっくりと落ち着いたトーンで話をする
話題を変える
  • 怒りそうになった時点で、気をそらすことが重要
距離を置く
  • 介護サービスやデイサービスなど、相手と物理的に距離を置く
  • ケアマネージャーに相談し、第三者から支援してもらう
医師に相談する
  • 専門医を受診する(認知症ではなく、精神疾患の可能性もある)
  • 暴力行為がやまないときは、薬物療法で対処することもできる
  • 薬が効けば、イライラや怒りをしずめて穏やかに過ごせることも

症状が軽度なうちは、冷静に対処したり話題を変えるなどして家族や身近な人が対処するのも良いですが、暴言や暴力がひどい場合は、ぜひケアマネージャーや医師にすぐ相談しましょう。介護サービスや薬物療法などを使い、本人にとっても家族や周囲の人にとっても穏やかに日常生活を送れるようにすることが大切です。

おわりに:認知症の怒りの原因は脳機能の低下

認知症で怒りっぽくなるのは、脳機能の低下によるものに加え、今までできていたことができなくなるという苛立ちも含まれています。この怒りっぽさは「易怒性」と呼ばれ、認知症の行動・心理症状の1つです。

認知症の怒りには、真正面からぶつからないようにしましょう。冷静に対処したり話題を変えるなどを行っても暴言や暴力が酷い場合は、医師やケアマネージャーなどの専門家に相談することも大切です。

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