アルツハイマー型認知症の原因とされる、アミロイドβって何?

認知症

アルツハイマー型認知症の原因は長いことこれだというものが発見されず、一時的にアルミニウムや鉛などが原因と言われたことがあったものの、どれも原因として決定的なものではありませんでした。

しかし、近年の研究で、アルツハイマー型認知症の原因として「アミロイドβ」という物質が注目を集めています。アミロイドβとはどのような物質なのか、本当にアミロイドβが原因なのかについて解説します。

アミロイドβってどんな成分?

アミロイドβはタンパク質の一種で、健康な人の脳にも少量は存在します。しかし、健康な人であれば老廃物として短期間で分解され、排出されてしまう物質です。しかし、産出されるアミロイドβの量が多かったり、異常なタンパク質の出現などで排出経路を塞がれてしまったりすると、アミロイドβが排出されずに蓄積していってしまいます。

アミロイドβは、認知症を発症する10〜20年程度前から脳に溜まり始めていると言われ、蓄積したアミロイドβは脳細胞を死滅させてしまうと考えられています。記憶に関する部分の脳細胞が死滅すると物忘れが起こる、というわけです。さらに、アミロイドβが血管の壁に沈着すると脳出血の原因になることもあります。

このアミロイドβは、アルツハイマー型認知症の人の脳に見られる「老人斑」を構成する主成分であることがわかっています。アルツハイマー型認知症ではこの「老人斑(脳内のシミのようなもの)」のほか、脳の萎縮や、脳神経の中に糸くずのようなもつれ(神経原線維変化)が発見されています。こうした脳細胞の異常が、妄想や記憶障害を引き起こしていると考えられます。

かつては、アミロイドβが脳細胞に蓄積しているかどうかは死後に脳の組織を顕微鏡で観察するしかありませんでした。しかし、現在では「アミロイドPET(アミロイドイメージング)」という検査によって、生きている人の脳でも画像診断をしてアミロイドβの蓄積量を判断することができるようになりました。

アルツハイマーは本当にアミロイドβが原因なの?

結論を言うと、アミロイドβがアルツハイマー型認知症の原因という説は、まだ仮説の段階です。もっとも有力な仮説ではありますが、アミロイドβが蓄積し、脳細胞に異常が起こった人が全員アルツハイマー型認知症を発症しているわけではないからです。

そもそもアミロイドβは、脳内でタンパク質が分解されてできた、40個前後のアミノ酸がくっついた物質です。分解されるときに微妙に切れ目が異なると、無害で排出されやすいものと、くっつきあって脳に溜まりやすい毒性が強いものの2つに分かれます。これらがどういう機序で脳内に蓄積するのかはまだ詳しくわかっていませんが、加齢による身体機能の低下によってタンパク質の分解や排出がうまくいかなくなると、毒性の強いアミロイドβが溜まりやすくなると考えられています。

毒性の強いアミロイドβが溜まると、脳に老人斑ができたり、脳神経の原線維変化などが起こります。しかし、老人斑ができたり、神経原線維変化が起きた人が必ずしもアルツハイマー型認知症を発症しているわけではありません。中には、こうした脳細胞の異常が多く起こっていても、認知症の症状を発症しない人もいるのです。

つまり、アミロイドβが関わっている可能性は高そうですが、アミロイドβの蓄積による脳細胞の変化が必ずアルツハイマー型認知症を引き起こすというわけではない、と言えそうです。

最新の研究では、アミロイドβの蓄積がアルツハイマー型認知症の始まりだとする仮説を「アミロイドβ仮説」と呼び、この仮説に基づいて毒性の強いアミロイドβの産生を抑えるとともに、分解や排出を促す方法が研究されています。アミロイドβ仮説は、要約すると以下のような内容です。

  1. タンパク質分解酵素の作用が加齢によって変化し、蓄積しやすい毒性の強いアミロイドβが脳に溜まっていく
  2. アミロイドβの毒性によって神経細胞やシナプス(神経細胞のネットワーク)が傷つけられ、神経原線維変化を引き起こす
  3. 傷ついた神経細胞が次々と死滅し、脳が萎縮して認知症を発症する

現在、認知症に関する新薬開発の研究はこのアミロイドβ仮説に基づいたものが主流となっていますが、他にも「アセチルコリン仮説」「オリゴマー仮説」など、さまざまな仮説があります。また、アミロイドβ仮説を否定し、全く別の側面からアプローチする研究もあります。つまり、アミロイドβ仮説は現状もっとも有力な仮説ではあるものの、決定的ではありませんので、絶対に原因であるとは言い切れないということです。

アミロイドβを減らす薬はあるの?

アミロイドβ仮説によって、新薬開発の研究は日夜進められていますが、残念ながらまだ製品化されたものはありません。しかし、抗認知症病薬の開発は進み、既に抗アミロイドβ抗体や脳内アミロイドβ量を少なくするような新薬が研究・開発されています。中には、治験の最終段階まで進んだものもあります。

医学博士アルツハイマー氏がこの病態を発見してから実に100年以上が経過していますが、人類はようやくその予防・治療まであと一歩のところまでたどり着いたとも言えます。今後の研究が待たれます。

おわりに:アミロイドβ仮説は決定的ではないものの、現状もっとも有力な仮説

アミロイドβがアルツハイマー型認知症の要因となっている物質だ、とする「アミロイドβ仮説」は、現在もっとも有力な仮説とされていますが、アミロイドβによって傷ついた脳細胞を持っている人のすべてがアルツハイマー型認知症を発症するわけではないため、決定的とは言えません。

しかし、新薬の研究・開発は徐々に進んでいます。製品化したものはまだありませんが、今後の研究が待たれます。

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