まだら認知症のリハビリや対応のコツとは?

認知症

まだら認知症とは、その名前のとおり「まだら」な症状が特徴の認知症です。朝できていたことが急に夕方にできなくなる、難しい専門書は読めるのに、お昼のニュースは覚えていないなど、1日の中でも、できることとできないことにも大きな波があります。

そんなまだら認知症に対して、周囲の人はどのように接したら良いのでしょうか?また、リハビリや介護の際に気をつけるポイントはあるのでしょうか?

まだら認知症と気づいたときに、周囲の人が気をつけることは?

まだら認知症はさまざまな原因から起こりますが、その多くは脳血管性障害によって起こる「脳血管性認知症」の1つの状態です。このように脳血管性障害から起こるまだら認知症の場合、能力に大きな偏りがあったり、波があったりするという点を周囲の人が理解しておかなくてはなりません。

例えば、アルツハイマー型認知症の場合、記憶力や遂行機能とともに、判断力や専門知識・理解力なども低下します。そのため、忘れたこと自体を忘れてしまう、できないということ自体がぼんやりと理解できなくなってしまう、という人も少なくありません。しかし、まだら認知症の場合、判断力や理解力は保たれているため、記憶力や遂行機能に障害があることを自分でも自覚しやすく、「忘れてしまう」「できていたことができない」というもどかしさや苦しみをよりいっそう感じやすいのです。

脳血管性認知症には、感情のコントロールがしにくいという症状もありますが、上記のようなもどかしさや苦しみも相まって深い絶望感や苛立ち、ぶつけどころのない怒りへとつながりやすいと考えられます。こうした強い負の感情が周囲への暴言や暴力、絶望からのセルフネグレクト(自分の環境や状態が悪化していても、改善する意欲がなくなってしまった状態)へと進行してしまうこともあります。

ですから、まだら認知症の状態には波があり、本人は周囲の人が思う以上にもどかしさや苦しみを抱えているということをまず理解し、できないことに目を向けすぎず、本人ができることを大切にし、自信や尊厳を保てるよう慎重に配慮していくのが良いでしょう。

また、周囲の人に気をつけておいて欲しい点がもう1つあります。症状の変化や波が、新たな脳血管性障害の徴候である可能性もあるという点です。ごく小さな脳梗塞から始まった脳血管性認知症は、即座に意識障害や麻痺などの大きな症状にはつながりづらいですが、徐々に脳機能を低下させ、まだら認知症を生じさせることがあるのです。

そして、その小さな症状がやがて大きな脳梗塞を引き起こす可能性も考えられるのです。まだら認知症を既に発症している状態でも、今までと違う症状や波が出てきたなど、気になる症状の変化があれば、早めに主治医に相談しましょう。

リハビリや介護の対応では、どんなことに注意すればいい?

では、まだら認知症の介護やリハビリテーションの場では、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。それぞれ項目に分けて詳しく見ていきましょう。

まだら認知症の介護のポイント

まずは、最初にご紹介したとおり「波があるのは当たり前」ということを理解し、常に念頭に置いておくと良いでしょう。まだら認知症はできることとできないことの落差が大きいため、本人も周囲の人も誤解しやすく、混乱しやすい状態です。症状の波が強いときの状態に気を取られすぎて家族が落ち込みすぎたり、普段身近にいない人が症状のおさまっている状態だけを見て「まだしっかりしているのに認知症扱いにするなんて」と家族を責めてしまったりすることもあります。

しかし、まだら認知症はこの症状の波によって、本人も状態の悪いときを自分で自覚しやすいことから、周囲が思う以上に本人はもどかしさや辛さを感じているのです。ですから、家族や周囲の人は本人の症状の波に振り回されず、症状の変化に一喜一憂するのではなく、長い目で見守っていくことが大切です。

このようなまだら認知症の症状を正確に把握するためにも、気になる症状の変化があったときには、体の状態や薬の量、引き金になりそうなできごとなどを記録しておきましょう。例えば、食後に症状が現れている場合、食後に血圧を測ると、自律神経の失調で血圧が急降下していた、というケースがあります。また、夕方に症状が現れるという人の水分不足がわかり、水分をしっかり摂取してもらうと症状が軽減した、というケースもあります。

また、新しい脳血管性障害が起こって症状が進行しないよう、日々の食事や散歩などでコレステロールや血圧のコントロールを行うことも重要です。医師や専門家と相談し、適切な食事療法や生活習慣を心がけましょう

このような観察と記録は、いつも側にいる家族だからこそできることであり、詳細な記録があれば医師や看護師などに相談するときにも役立ちます。身体的な要因を思いがけず発見することができれば、症状の変化や波が睡眠薬など薬のせいだったので、量を調節したら落ち着いた、などということもあります。

まだら認知症のリハビリテーションのポイント

まだら認知症のリハビリテーションも、その症状の「波」をしっかり把握して行う必要があります。まだら認知症では、認知症の症状が強まるとき、弱まるときがありますので、症状が弱まり、できるだけ良い状態のときに行うようにしましょう。この波を見極めるためにも、前述のとおり普段から症状をしっかり観察し、記録しておくことが大切です。

脳血管性認知症の場合は、アルツハイマー型認知症などと異なり、リハビリテーションは進行を抑えるだけでなく、一定程度は改善も期待できます。脳の機能は基本的に部位によって決まっているものですが、リハビリテーションを続けるうち、失われた部位の機能を他の部位がカバーする可能性もあることがわかっています。とくに、年齢が若いうちはリハビリテーションの効果も高いとされているため、できるだけ早くリハビリテーションを始めると良いでしょう。

しかし、リハビリテーション中に症状が悪化したり、予定していた時間になってもぼんやりした意識低下の状態だったりする場合は、無理にリハビリテーションを行わないようにしましょう。意識がはっきりしない状態で無理をしたり、騒々しい環境で訓練を行うと、せん妄やその他の思いがけない症状を引き起こしたり、悪化させることがあります。認知症の症状が強く出ているときは絶対に無理をさせず、安全で静かな環境を提供しましょう。

まだら認知症に予防方法はある?

まだら認知症のほとんどは、脳血管性認知症に含まれます。ですから、脳血管性認知症を予防することが、まだら認知症の予防につながります。すなわち、高血圧・糖尿病・動脈硬化などを予防し、血管がなるべくダメージを受けて硬くならないように気をつけましょう。最も大切なのは、塩分を控えたバランスの良い食生活と、適度な運動です

適正な血圧と体重を維持することは、動脈硬化をはじめ、生活習慣病と呼ばれる一連の疾患の予防に重要です。高血圧や高血糖症、高脂血症などによって血管がダメージを受け、硬くなってしまうと、詰まったり出血しやすくなったりしてしまいます。喫煙や過度の飲酒も動脈硬化の一因ですから、これらの習慣がある人も注意しましょう

もう1つ大切なのが、脱水を起こさないことです。脱水という言葉のイメージから、夏だけ注意すればいいと思いがちですが、人間の体は1年中いつでも皮膚からの汗、呼吸に含まれる水蒸気など、体内の水分を外に排出しています。意識していないので、不感蒸泄と言いますが、とくに高齢者ではのどが乾きにくくなったり、トイレに行くのが億劫だったりという理由から、不感蒸泄はあるのに水分を十分に摂取せず、体の水分がいつも足りない状態になりがちです。

体内の水分が不足すると、血液の水分が足りなくなります。すると血液がドロドロになり、より血管を傷つけたり、詰まりやすくなったりします。つまり、脳血管障害を起こしやすい状態になってしまうのです。脱水予防には、一度にたくさんの水分を摂取するのではなく、こまめに少しずつ水分補給するのが大切です。

以上のことから、具体的には「1回30分程度の散歩やウォーキングなどの有酸素運動を週に3回程度行う」「血圧測定や体重測定を習慣づける」「食生活を見直す」「こまめな水分摂取を心がける」「年1回の健康診断を受ける」などのことを、日常生活の中でできることから少しずつ行っていくのが良いでしょう。

おわりに:まだら認知症には「波」がある。一喜一憂しすぎず対応する

まだら認知症の症状のポイントは「波」があるということです。1日の中でも症状や状態は変化しますし、記憶力や遂行機能には障害があっても、判断力や理解力は衰えていないこともよくあります。

このような状態の波に家族や周囲が一喜一憂することは、本人にも家族にもよくありません。波があることを理解し、症状をよく観察・記録しておくとともに、状態のよいときにリハビリテーションなどを行いましょう。

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