近年、認知症の早期発見・治療開始のために各地の大規模病院で「物忘れ外来」が新設されています。
今回は物忘れ外来とは何か、受診の目安や注意点、認知症以外の疾患を指摘される可能性や再検査の必要性とあわせて解説します。
物忘れ外来ってなにをするところなの?
物忘れ外来では、物忘れ症状のある人に対して認知症、または軽度認知症(MCI)を発症しているかを、うつ病との判別とあわせて診断する外来施設です。
受診すれば、精神科や脳神経外科の医師、または臨床心理士など認知症診断の専門家が問診、心電図や脳波測定、血液検査、画像撮影などの結果から診断してくれます。
以下のような物忘れ症状のうち、自分や家族に2~3個当てはまる項目がある場合は、物忘れ外来の受診を検討した方が良いでしょう。
- 何度も同じことを言ったり聞いたりしてしまう
- 人との約束や、いま自分が置かれている日時、季節、場所を忘れる
- 物を無くしたり忘れることが増えて、どこに置いてきたか思い出せない
- 過去の出来事や人名などをまるごと忘れ、忘れたことにさえ自覚がない
- 料理など、いままで当たり前にできていたことができなくなった
- 好きだったことや日課に興味を失い、やらなくなってしまった
- 服装や身だしなみに関心がなくなり、気を使わなくなった
- 些細なことで怒る、何事にも疑り深いなど、以前とは人格が変わってきた
物忘れがあっても認知症とは限らないって本当?
物忘れの原因としては、認知症以外にも以下のような疾患が考えられます。
- 加齢による物忘れ
- 年齢を重ね、少しずつ神経細胞が死滅し脳が委縮している影響で、物忘れが起こる現象
- 何かを忘れているという自覚が本人にあり、ヒントがあれば忘れたことを思い出すことができて、日常生活に支障をきたさないのが特徴
- 軽度認知症(MCI)
- 加齢による物忘れが、認知症へと進行する前段階
- とくに治療を受けなくても認知症に進行しない可能性はあるが、軽度認知症を発症した人のうち半数は認知症を発症するといわれている
- その他の病気による物忘れ
- 慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症、うつ病などの病気が原因で起こる物忘れのこと
- 原因疾患を特定し、適切な治療を受けることで物忘れも改善させることができる
そして認知症は、正常に発達していた能の知能が低下し、委縮するなどして生活に支障をきたすレベルの物忘れを生じる病気です。
このようにひとくちに物忘れと言っても、その背景にはたくさんの疾患や原因が考えられます。
物忘れの症状があるからと言って必ずしも認知症とは限らないからこそ、物忘れ外来で検査・診断を受け、正しく現状を理解することが大切なのです。
前に検査したとき大丈夫だった人も行った方がいいの?
原因が何であれ、物忘れは少しずつ進行していくことが多い症状です。
過去に一度検査を受けたことがあり、病的な物忘れの心配はないと診断されていても、数年後に認知症や他の脳疾患に進行している可能性は十分に考えられます。
仮に認知症であった場合にも、早期に発見・治療を開始することで、進行を大幅に遅らせることができます。物忘れが進行していないか、認知症を発症していないかを確認するためにも、ある程度の年齢に達したら定期的に物忘れ外来での検査を受けるようにしてくださいね。
おわりに:物忘れ外来は、物忘れの原因を検査・診断してくれる外来施設
物忘れ外来は、認知症を含め加齢や他の脳疾患など、さまざまな原因で起こる物忘れについて検査・診断してくれる外来施設です。受診すると、記憶障害や認知症の専門知識を持った医療スタッフが、問診や画像検査、脳波や心電図の検査結果から、物忘れの原因について診断をしてくれます。
一度問題なしという結果が出ても、時間とともに物忘れ症状が進行して認知症になっている可能性もありますから、定期的な受診と検査を続けましょう。
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