認知症による症状には個人差がありますが、なかには人が変わったように家族に暴言・暴力をふるうようになるケースも、少なくありません。
今回は認知症の人が暴力的になる原因について、家族が暴力をふるわれたときの対処法や、相談先などについて解説します。
認知症の人の暴力は、何がきっかけになるの?
認知症を発症したすべての人が、暴力的になるわけではありません。
認知症により暴力をふるう人は、症状が進行するなかで前頭葉が委縮した状態になり、以下のようなきっかけで感情が爆発するのが原因と考えられます。
記憶障害により、強い不安を感じ混乱してしまった
認知症状でこれから起こること、向かっている先、帰り道などがわからなくなることによる強い不安が、衝動的な暴力として現れるパターンです。
負の感情のみが残り、周囲の感情で増幅された
認知症の人が暴力をふるうと、周囲の家族は困惑や不安の表情を浮かべます。
すると不安・混乱していた認知症患者の気持ちは、周囲の家族の様子に影響されてさらにかき乱され、暴れてしまうことがあります。
湧きあがった負の感情をコントロールできず、爆発させてしまった
認知症状の1つとして、感情のコントロールが難しくなることが挙げられます。
不安や羞恥心など、突発的に沸き上がった感情を抑制したり、コントロールできないまま、暴力というかたちで爆発させてしまうことがあるのです。
自尊心が傷つけられたと思い、過敏に反応してしまった
認知症にかかっても、かけられた言葉への感じ方は健常者と大きく変わらないとされます。
このため、周囲の家族が何気なく書けた言葉に対し「馬鹿にされている」など自尊心が傷つけられたと感じ、その悲しい気持ちが暴力として現れるパターンです。
体調不良を言葉でうまく答えられず、暴力という態度で現れた
認知症になると、体の不調や痛み、不快感を正確に感知し周囲に言葉で伝えることが難しくなります。
不快感や痛みなど、体調不良から苛立ちやストレスを募らせ、家族への暴言・暴力につながるケースも十分考えられるのです。
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暴力や暴言をふるわれたときの対処法は?
認知症の人から暴言・暴力を受けたときは、まず以下の対策を取りましょう。
危険物と一緒に離れて、落ち着くのを待つ
家族に向けて投げられるもの、本人のケガの原因となるものを遠ざけたうえで自分も離れ、身の安全を確保してください。力で押さえつけず、興奮が収まるのを待ちましょう。
興奮が収まったら、体の状態をチェックする
事前に「いまから○○に触るよ」などと一声かけたうえで、体に触れて暴れたことによるケガや発熱、薬の副作用などが出ていないかを確認しましょう。
認知症の人から暴言・暴力を受けたら、無理に抵抗したり、力づくで抑えて恐怖を与えるのではなく、一旦離れてお互いに落ち着くのを待つべきと覚えておいてくださいね。
困ったときは、まず相談しよう
あまりに何度も、激しく自宅や外出先で暴れて家族だけで対処しきれないと判断した場合は、家庭内だけで抱え込まずに意思やケアマネジャーに相談してください。
専門職としての経験から、認知症患者が暴れたときの効果的な対処法や似たような事例、利用できる介護サービスなどの案内を受けられます。認知症の人が1日数時間、介護施設へのショートステイに行くだけでも家族の負担は軽減されますし、暴力の原因が体調不良なら医師の治療で改善するかもしれません。
家族に暴言・暴力を受けることも、向けることも非常に辛いことです。
認知症患者と介護する家庭内の様子を専門家の視点で診てもらって、必要なサポートを受けられるよう周囲に助けを求めてくださいね。
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おわりに:認知症の人が暴力をふるってくるのは、感情の高ぶりや体調不良が原因
認知症が進行すると、感情のコントロールが効かなくなったり、体調不良を的確に感知して言語化・対処することができなくなります。その結果、記憶障害やちょっとした不安・不快から感情が爆発したり、体調不良へのストレスから家族に暴言・暴力をふるうようになるケースが見られるのです。認知症の家族から暴力をふるわれたときは、一旦本人から離れて、落ち着くのを待ちましょう。なお辛いときは、医師やケアマネジャーに相談してくださいね。
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