レスパイトケアとは、英語の「respite(=一時中断、小休止、息抜きなど)」から来た言葉で、高齢者・障がい者・乳幼児などの介護者・保護者が行っているケアを一時的に代行することを指します。
このような一時的な代行サービスは、認知症の場合にも対応してもらえるのでしょうか?また、対応可能な施設や条件に基準はあるのでしょうか?
レスパイトケアってなんのこと?
「レスパイトケア」とは、家族などの介護者が一時的に介護から離れ、休息とリフレッシュをはかるための介護者を支援するサービスのことです。介護は一般的な職業と違い、年中無休で行わなくてはならないため、介護疲れによるさまざまな事件が社会問題となっています。そのため、開始当初は介護者の病気や事故・冠婚葬祭などのやむを得ない事由がない限り利用不可能でしたが、現在では旅行やレジャーなど、私的な理由の利用も認められています。
日本で最初のレスパイトケアは、1976年に心身障がい児を対象としたショートステイを行ったものです。
レスパイトケアは介護者・保護者に休息の時間を持ってもらうことが最大の目的ですが、介護者だけでなく要介護者の方にも大きなメリットがあります。ショートステイによって他の障がい者と交流したり、介護の専門家から支援を受けることで、家族による介護の良い点・悪い点を見直すきっかけになったりします。
レスパイトケアの形態は、以下の3つに分けられます。
- ショートステイ
- 要介護の人が対象、数日〜数十日の宿泊利用が可能
- デイサービス
- 半日のケアが可能。近年では1泊程度の宿泊に対応していることも
- レスパイト入院
- 医療行為が必要な要介護者の場合、医療機関でレスパイト入院を行う。医療保険の適用となる
ショートステイは介護施設の一形態としてよく知られていますが、もともとはレスパイトケアのために生まれました。また、デイサービスは基本的に半日のケアですが、日中デイサービスを利用して、そのまま夕食・就寝のサービスまで行ってくれる宿泊対応のデイサービスも登場しています。
ただし、人工透析など医療行為が必要な場合、介護施設での対応が難しいこともあります。そのような場合は、「レスパイト入院」に対応している医療機関を利用しましょう。
認知症の介護にも対応できる?
レスパイト入院を受け入れる医療機関は、現状それほど多いわけではありません。しかし、専門知識を必要とする医療行為を行わなくてはならない介護者の場合、ショートステイやデイサービスなどを行う介護施設では対応しきれないことが多いのです。看護師がいる施設であっても、その看護師が夜勤などに対応していない場合、宿泊を伴う入院は受け入れられないのです。
一方、認知症のケアについては、専門的な研修を受けている職員がいれば対応できるようにしているなどの措置によって、受け入れ可能な介護施設も増えています。つまり、医療行為ではなく、認知症のケアのみが必要であるという場合は、対応できる介護施設が増えてきているのです。これには、「認知症専門ケア加算」の範囲が広がったことも関係しています。
「認知症専門ケア加算」は、これまで「特別養護老人ホーム」や「介護老人保健施設」など、ごく一部の介護施設しか受けられないものでした。しかし、以下の要件を満たせば、ショートステイの介護施設であっても「認知症専門ケア加算Ⅰ(1日あたり3単位の加算)」を受けられるようになるのです。
- ショートステイ利用者のうち、過半数が日常生活自立度3以上
- 国や自治体が行う「認知症介護実践リーダー研修」を修了した職員が在籍している
- 認知症ケアに関することを職員間で共有・指導するための会議を定期的に実施している
施設内に必要な「認知症介護指導者研修を修了した職員」の数は、認知症の方が20名未満なら1名、20〜29名までは2人、以降10名増えるごとに1名増やす必要があります。さらに、「認知症介護指導者研修」を修了した職員が1人以上配置され、その職員の指導のもと、介護職員・看護職員ごとに研修計画を作成・実施している場合には「認知症ケア加算Ⅱ(1日あたり4単位の加算)」というプラスの評価が得られます。
ケアプランは必要?
レスパイトサービス(ショートステイ・デイサービス)を介護保険を使って利用する場合、「ケアプラン」という介護サービスの利用計画が必要です。ケアプランは要介護者本人またはその家族が自作する(セルフケアプラン)ことも可能ですが、作成者に大きな負担がかかること、ケアプランの作成を含めた居宅介護支援は無料で受けられること、などから、特別な事情がない限りは「居宅介護支援所」に在籍しているケアマネジャーに依頼するのが一般的です。
ケアマネジャーが決まったら、ケアプランを作成します。ケアプランとは、要介護者本人と家族の状況や要望に基づき、「本人がこれからどのような生活を送りたいか」などの目標を設定し、その目標に向けて利用するサービスの頻度や種類を決める計画書です。「今できること・できないこと」「今はできるけどやっていないこと」「今はできないけれど、できるようにしたいこと」をはっきりさせ、それに向けてどうすべきなのかを本人・家族・ケアマネジャーの3者でよく相談しながら目標を設定します。
ケアプラン作成の流れは、以下のようになっています。
- ケアマネジャーによるアセスメントを受ける
- 健康状態・生活環境・家庭環境を把握すし、どのような介護サービスが必要か評価・分析する
- 本人のできること・できないこと・要望をヒアリングし、具体的な目標を立てる
- 本人だけでなく介護者(家族)にも、普段の様子や要望・体制などを確認し、介護に使える金額なども聞く
- ケアプランの原案が作成され、サービス担当者会議を行う
- アセスメントから、具体的なケアプランの原案を作成する
- ケアプラン原案をもとに、ケアマネジャー・サービス提供事業者の担当者を主導とした「サービス担当者会議」が開かれる
- 本人・家族を含めたケアプラン原案の検討が行われる
- ケアマネジャーから本人・家族にケアプランの説明
- 担当者会議終了後、本人と家族へケアプラン原案の説明と最終確認
- 同意が得られれば、正式にケアプラン作成完了となる
ケアマネジャーは「地域包括支援センター」などにも在籍していますが、デイサービスやショートステイをレスパイトケアとして利用する場合、要介護認定が必要です。要介護認定を受けた人のケアプランを作成できるケアマネジャーは「居宅介護支援所」に在籍している人なので、間違えないようにしましょう。
おわりに:レスパイトケアは認知症にも対応している
レスパイトケアは、医療行為が必要なレベルの介護者にはまだまだ医療機関の病床数が足りず、対応していない病院も多いのですが、専門的な医療行為を必要としないレベルの要介護認知症の場合、対応できるデイサービスやショートステイも増えてきています。
ただし、利用する場合はケアプランの作成が必要です。居宅介護支援所に在籍するケアマネジャーに無料で作成を依頼できますので、まずは相談してみましょう。
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