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認知症のリスクは歩き方で変わってくるって本当?

認知症

「歩く」という動作を、頭で考えて行う人はほとんどいないでしょう。しかし、近年のさまざまな研究によって、歩くという動作は脳の複雑な機能が関わっていることがわかってきました。そのため、歩くという動作に支障が出てきた場合、認知症を発症していなくても認知機能が低下しているのではないかと考えられます。

この記事では、歩幅と認知症、ながら歩きと認知症の関係から、歩き方と認知症のリスクについてご紹介します。

歩幅が狭いと認知症になりやすいの?

歩くという動作は、乳児の頃から誰もが自然に行っていることで、日常生活の中で特別に意識することもそうそうありません。このため一見、非常に単純な動作のように思えるのですが、近年の脳の画像検査や血流検査を用いた研究により、歩行という動作に関して、脳の中では非常に複雑な処理が行われていることがわかってきました。

すなわち「目や足などの感覚器官から伝わる周囲の情報を脳が処理する」「障害物や路面の状態、身体のバランスなどを瞬時に判断する」「適切な歩幅になるよう、筋肉の動作を計算して指示を出す」という一連の処理です。歩くという動作は、複雑な脳の神経伝達と情報処理が必要とされるものなのです。

つまり、歩幅が狭いことそのものが身体に何らかの影響を及ぼして認知症になる、のではなく、脳機能が衰えてきた結果、歩幅が狭くなり、認知症を発症しやすい状態にあると言えます。実際に、通常の加齢による変化よりも明らかに早く歩行機能が衰える人は、数年後に認知症を発症することが多いことが知られています。

もちろん、どんな人でも加齢によって筋肉がやせて減り、若い頃と比べて歩く速度が遅くなったり、歩幅が狭くなったりするのは自然なことです。しかし、同年代に比べて明らかに歩く速度が遅かったり、歩幅が狭かったりする場合、数年の間に認知症を発症するリスクが高いと言えます。

歩幅の目安としては「横断歩道の白線を踏まずにまたぐことができるかどうか」でチェックすると良いでしょう。横断歩道の白線の幅は約45cm、白線と白線の間隔は約20cmです。ですから、後ろ側のつま先が白線を踏むか踏まないかのところにあり、前に出した足のかかとが白線を越える場所にあれば、歩幅が約65〜73cm程度あり、十分な歩行能力があると判断して差し支えないでしょう。

ながら歩きができない人も注意

「ながら歩き」というと、近年非常に問題となってきている「スマホのながら歩き」のように悪いイメージが強いですが、「会話をしながら歩く」「計算をしながら歩く」などの行為も「ながら歩き」です。このような「ながら歩き」はとくに問題になるような迷惑行為ではありませんし、脳機能が活発な人にとっては難なく行えることですが、認知機能の衰えた高齢者にとっては難しいことだと言われてきました。

「ながら歩き」は専門的な用語では「二重課題条件下での歩行」という言い方をされます。「歩く」という1つの課題と、「話す」「計算する」などの2つめの課題を同時にこなすため「二重課題」と呼ばれます。この場合、歩くことだけに集中すれば会話や計算はできませんし、会話や計算に集中しすぎれば立ち止まったり、段差や障害物に気づかず転倒してしまうこともあります。

このように、ながら歩きをする際には注意力を2つの課題に適切な分量で割り振る能力が必要となります。ある研究によれば、歩行中に話しかけられた高齢者のうち、「話すために止まった人」と「歩きながら答えた人」では、止まった人の約8割がその後半年の間に何らかの転倒をしたとのことです。一方、歩きながら答えた人は半年の間、転倒しなかったことがわかっています。

つまり、ながら歩きができる能力は、歩行する際にさまざまな場所に注意を割り振れるという意味で、段差や障害物に早く気づき適切に回避できるといった、安全な歩行の上でとても重要な能力である、と言えるのです。

このような二重課題の処理能力は、認知機能とも密接に関係しているのではないかと言われています。例えば、日常生活ではとくに問題のない72歳の健康な高齢者に歩いてもらったところ、スタスタと軽快に歩くことができました。しかし、同じ高齢者に計算課題として「50から1を引き続ける」というものをやりながら歩いてもらったところ、歩くスピードが極端に低下しました。

そこで、詳細な検査をしてみたところ、この高齢者は認知症の一歩手前の状態である「軽度認知障害」という状態であることがわかりました。軽度認知障害は認知機能の低下があるものの、日常生活には支障がないため気づかれにくいのですが、この段階で気づくことができれば認知症へ進行することを食い止められる可能性も十分にあるため、重要な状態です。

この高齢者の例に見られるように、日常生活の中で歩く分には何の問題もないものの、話しかける、計算をしてもらうなど、認知機能の負荷をかけると歩く速度が真っ先に落ちる、という人は認知機能が衰えている傾向があるとわかってきました。さらには、カナダの研究によると、こうした二重課題の処理能力が低い人ほど、現在問題がなくても将来的に認知症を発症するリスクが高いことがわかりました。

この研究では「100から1ずつ、あるいは7ずつ引いていく」「動物の名前をできるだけ多く言う」などのごく簡単なもので、これらの成績が悪かった(歩行速度が落ちやすかった)人ほど、そうでない人と比べて約2.4〜3.8倍、認知症を発症しやすくなるという結果になったのです。

もちろん、スマホのながら歩きは危険ですから、年齢に関わらずやめましょう。しかし、誰かと話しながら歩いたり、頭の中で計算しながら歩く、動物の名前を思い浮かべながら歩く、という「ながら歩き」はとくに危険なことではありません。認知機能低下の指標として、隠れた認知症予備軍のチェックとして、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

おわりに:歩行機能の衰えが著しい人は、認知症を発症しやすい

歩くという行為は、普段ほとんどの人が意識もせずに行っていることですが、実は複雑な脳機能が働いています。そのため、歩行機能が低下することは単純な筋力の衰えではなく、脳機能の低下も一因であると言えます。

実際に「会話しながら」「計算しながら」などのながら歩きができない、つまり脳機能の低下が著しい人は、そうでない人より認知症を発症しやすいこともわかっています。簡易チェックとして、試してみると良いでしょう。

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