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MRI検査で認知症に関してどんなことがわかるの?

認知症

認知症とは、主に高齢者で発症する「もの忘れ」「日時や場所がわからなくなる」「急に怒りっぽく、感情がコントロールできなくなった」などの症状のことを言います。65歳以上で発症する人が多いことから、一般的に高齢者の症状として知られています。

認知症の診断には「MRI検査」という検査が使われることがあります。MRI検査は放射線などを使わない人体に安全な検査ですが、この検査でどんなことがわかるのでしょうか。

MRI検査は認知症の診断にどう役立つの?

認知症とは単なるもの忘れではなく、疾患の名称というわけでもありません。さまざまな原因となる疾患があり、その疾患によって脳機能に障害や機能低下が起こり、さまざまな症状や状態が現れます。その症状や状態をまとめて「認知症」と呼んでいるのです。

脳には機能によってさまざまな部位があり、だいたい以下のように分かれています。

前頭葉
  • 脳全体の司令塔
  • 思考・行動・言語・意欲など
側頭葉
  • 言語・記憶に関係している
  • 聴覚・嗅覚・情緒・感情など
頭頂葉
  • 痛み・温度・圧力などを感じる、自分の体の感覚、方向感覚など
後頭葉
  • 視覚中枢として、目から伝わる情報を処理・解析する

さらに、認知症の原因となる疾患によってどの部位に頻繁に障害や機能低下が起こるのかに違いがあります。

アルツハイマー型認知症
  • 頭頂葉〜側頭葉にかけて異常が見られる
  • 症状:もの忘れ・日時や場所がわからなくなる・怒りっぽくなるなど
血管性認知症
  • 前頭葉の一部
  • 症状:服の着方がわからないなど日常生活の実行機能障害・思考や行動が緩慢になる
レビー小体型認知症
  • 後頭葉の一部
  • 症状:幻視・動作が遅くなる・日によってもの忘れなどの症状の程度が異なる
前頭側頭型認知症
  • 前頭葉と側頭葉の一部
  • 症状:自分勝手な発言や行動が増える・他人の迷惑を考えなくなる・毎日決まった行動を繰り返す

このように、それぞれの疾患によって異常(血流が悪くなる)部位が異なります。血流が悪くなるとその部位の脳細胞に十分な酸素や栄養分が行き渡らなくなるため、脳の機能が低下するのです。そこで、この部位の脳の形や働きをCTスキャンやMRI、脳SPECTなどの画像診断で検査することが、本当に認知症かどうかの一つの診断材料となります。

認知症の診断には家族や周囲の人・本人からの問診、ペーパーテストなどを行いますが、これに加えて画像検査を行うことで、認知症の原因疾患を高い確率でつきとめられるのです。

関連記事:認知症の種類にはどんなものがある?治せるものがあるって本当?

MRI検査でわかるのはどんなこと?

では、実際に画像検査によってどのような違いがわかるのでしょうか。まず、脳の形を見る「MRI検査」では「T1強調画像」と「T2強調画像」というものを撮影しますが、T1強調画像の方が体の解剖学的な構造を見やすいという特徴があります。

そこで、「T1強調画像」で72歳の健康な人とアルツハイマー病の人の脳を水平に輪切りにするように撮影したものを比較してみると、健康な人に比べて、アルツハイマー型認知症の人では脳に空洞な部分が多く見られます。とくに、「側脳室下角」や「側脳室体部」などのもともとあった空洞も大きく広がっていることから、脳が萎縮している様子が見て取れます。

また、脳の働きを見る「SPECT検査」では、同じように水平断面像を撮影しますが、SPECT画像では脳の形そのものではなく、脳内の血液の流れを見ます。赤や黄色で表示される部分は血液の流れが良い部分、青や緑で表示される部分は血流が低下している部分です。この血流を見てみても、健康な人では脳全体に血液が十分に流れているのに対し、アルツハイマー型認知症の人では頭頂葉の後部などで血流が低下していることがわかります。

早期アルツハイマー型認知症診断に使える「VSRAD」って?

MRI画像を使い、脳の萎縮度を診断する「VSRAD」という検査によって、早期アルツハイマー型認知症の診断を支援することができるようになりました。この検査だけで早期アルツハイマー型認知症を確定診断することはできませんが、診断の一つの材料となります。もの忘れが気になる50歳以上の人であれば、頭部MRI+MRA検査(約15分)に約6分の追加撮影で簡便に検査が行えるため、MRI検査を受ける人は追加で受けてみても良いでしょう。

アルツハイマー型認知症をより早期に発見・診断できれば、早い段階で積極的な治療を開始でき、認知症の症状の進行を抑えることもできる可能性が高くなります。ただし、50歳未満の人は個人差が激しく、検査を行うことはできるのですが、判定の信頼度が下がるため、無理に受ける必要はないでしょう。

VSRADとは「Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer’s Disease」の頭文字を取ったもので、アルツハイマー型認知症では脳の萎縮、とくに記憶を司る海馬という部分の萎縮が著しいことから、この萎縮の程度を見ることでアルツハイマー型認知症の進行度合いや兆候を見つけようというものです。

例えば、50歳以上で以下のような症状が気になる場合は一度検査を受けてみると良いでしょう。

  • しょっちゅう同じことを言ったり聞いたりするようになった
  • いつも探しものをしていたり、見つからないと周囲の人のせいにする
  • よく知っている人の名前がすぐに思い出せないだけでなく、ヒントを言っても思い出せない
  • 食べた物を思い出せないだけでなく、食べたことそのものを忘れてしまう
  • 今まで普通に書けていた漢字を忘れてしまった
  • 何かをしようと思ったとき、それを忘れてしまうことが多くなった
  • 理由もないのに不機嫌になったり、落ち込んだりする
  • 身だしなみに無関心になったり、外出を億劫がったりする

上記のような症状は、アルツハイマー型認知症の典型的な症状です。思い当たることがあれば、また、家族など周囲の人が気づいた場合は、検査を受けてもらうよう促してみましょう。

また、VSRADに関するよくある質問をまとめると、以下のようになります。

検査は痛いの?
MRI検査の1つですから、痛みはありません。ただし、心臓ペースメーカー埋め込み直後や、閉所恐怖症の人など、MRI検査を受けられない人はVSRADも受けることができません。
時間はかかる?
通常のMRI検査にプラス6分程度の短時間で終わる検査です。
VSRADで悪い結果が出たら、必ずアルツハイマーを発症しているの?
VSRADは海馬を中心に脳の萎縮度合いを見る検査ですから、あくまでも「海馬が萎縮している」ということしかわかりません。つまり、VSRADで海馬の萎縮が発見されても、それが必ずしもアルツハイマー型認知症かどうかはわからず、本人や家族から聞いた問診の結果やペーパーテストなどを総合的に判断する必要があります。
海馬を中心とした脳の萎縮が見られる疾患には、アルツハイマー病の他にも「脳血管性認知症」「前頭側頭型認知症」「海馬硬化症」「ピック病」などがあり、これらのどれなのかはVSRADだけではわからないのです。
若年性アルツハイマーが心配。検査はできる?
65歳未満で発症する若年性アルツハイマー病の場合、50歳以上の人ならVSRADの検査を受けられます。50歳未満では個人差が激しく、検査自体はできますが、判定の信頼度は下がります。

また、脳梗塞がある人、撮影中に大きく動いてしまった場合、まれにその他の理由によって解析結果が正しく表示されないこともあります。

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おわりに:MRI検査では、脳の形やとくに記憶を司る海馬の萎縮状態がわかる

認知症の検査には、ペーパーテストの他に画像検査があります。画像検査にはCTスキャン・MRI・脳SPECT検査などがあります。認知症、とくにアルツハイマー型認知症では記憶を司る「海馬」の萎縮が特徴的なため、この部分の萎縮を見る「VSRAD」という検査も注目されています。

VSRADは早期アルツハイマー型認知症の発見にもつながりますので、50歳以上で症状が気になる人は受けてみると良いでしょう。

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