家族が認知症になった場合、自宅でのケアを求められることがあります。
専門的な知識も技術もない状態で、どのようにケアをしていけばよいのでしょうか。
今回は、自宅で認知症の人のケアが必要になった場合どんなことに注意すればいいのか、利用できる介護サービスのこととあわせてご紹介していきます。
認知症の人の身体介助の注意点は?
まずは、認知症の人が快適に日常生活を送れるよう、体に直接触れて食事・入浴・排泄の介助をする「身体介助」の注意点について、解説していきます。
身体介助の注意点:食事の場合
食事は生きるための栄養を補給するための行為であるとどうじに、見た目や味、一緒に食べる人とのコミュニケーションを楽しむ時間でもあります。
認知症患者の体調や持病に配慮しつつ、食欲をそそる見た目と味の料理を提供しましょう。
咀嚼や飲み込みが難しいようなら、材料を細かく刻んだ「きざみ食」や飲み込みやすくとろみをつけた「とろみ食」を取り入れて、誤嚥を防いであげてください。
食事をする時間や環境は可能な限りもともとの習慣に合わせ、本人の様子を見て食べるスピードや量、手助けをするかを決めると良いですよ。
身体介助の注意点:入浴の場合
塗れた床での転倒や、浴室外との急激な気温差による身体への負担など、認知症の高齢者にとって入浴は危険がいっぱいです。
転倒防止マットや手すりの設置で転倒を予防し、入浴前に脱衣所と浴室を温めておくようにして、入浴中の事故リスクを下げるよう意識しましょう。
ただ、入浴は食事のように毎日必要なものではありません。本人が気乗りしないようなら、温かいタオルで体を拭くだけにしてもOKです。
身体介助の注意点:排泄の場合
便意の認知やコントロールが難しくなること、また徐々に生活動作が遅くなりトイレへの道順がわからなくなることから、認知症患者の多くが排泄の問題を直面します。
尿や便を失禁してしまうと、不衛生なばかりでなく本人の自尊心を大きく傷つけます。
排泄介助は本人が自然な便意を感じているときにできるよう、本人がよく排泄している時間帯を狙って早めに声掛けし、トイレに連れて行ってあげてくださいね。
認知症の人に気持ちよくケアを受けてもらうためにできることは?
認知症を発症し道順や記憶に混乱を生じるようになっても、患者は私たちと同じようにものを見て感じ、考えていると言われています。このため、介助・介護する側が「認知症だからどうせわからない」と適当に扱ったり、大きな声で叱ったりすると、認知症の人はより不安定になってしまいます。
認知症の人に気持ちよくケアを受けてもらうには、相手を自分と同じ1人の人間だと考え、小さな子に接するように余裕を持って笑顔で接することが大切です。
ただ、どうしてもコミュニケーションがうまくかなかったりイライラしてしまうときは、介護サービスなどを積極的に利用し、まず介護者側が息抜きしてください。
そうすることで、認知症の人にもより良い介護を提供できるようになるでしょう。
認知症の介護サービスって?
認知症を発症し「要介護」の認定を受けると、介護保険適用の対象となり、以下のような介護サービスを受けられるようになります。
要介護認定で受けられるようになる介護サービス
最経度の1~最重度の5までレベルがあり、認められればケアマネジャーが作成する計画に基づいた在宅・通所の介護サービスが受けられるようになる。
ただし、要介護度のレベルに応じて受けられる介護サービスの程度も変わってくる。
要介護認定は、認知症の人が住む自治体の窓口で申請し、認められれば受けられます。
家族が認知症になり、今後の暮らしや介護について不安があるなら、まずはお住まいの市区町村に相談してみると良いでしょう。
おわりに:認知症患者へのケアは、本人の様子と自尊心に配慮して行おう
認知症を発症しても、物事の見え方や感じ方が大きく変わるわけではありません。記憶や認知に混乱を生じているだけで、物事や人に対しての感じ方は、健常者と同じだと言われています。このため認知症患者へのケアは、身体介助にしろ声掛けにしろ、本人の人柄や自尊心に配慮して行う必要があります。当たり前のことですが、私たちと同じ感覚を持つ相手と理解し、常に余裕を持って笑顔で、丁寧にケアに当たることが求められるのです。
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