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認知症の人に運転を止めてもらうには、どうすればいいの?

認知症

日本は、世界で最初に高齢者の割合が21%を超えた「超高齢社会」と呼ばれており、既に4人に1人は高齢者という社会になっています。そんな高齢者の多い日本では、高齢化社会ならではの問題も多く、例えば認知症の高齢ドライバーによる交通事故はニュースでもよく取り上げられています。

このような不幸な事故を起こさないためにも、認知症の人にスムーズに運転を中止してもらうには、どうしたら良いのでしょうか?

どんな人が運転免許取り消しになるの?

75歳以上の高齢の人は、3年に1度の運転免許更新時に、記憶力や判断力などを診断する30分程度の認知症検査を受ける必要があります。この検査は免許更新時以外に、運転中に信号無視や一時不停止などの違反行為をしたときにも行われ、得点が低い場合は「認知症のおそれ」と判定され、医師の診断を受けなくてはなりません。そこで認知症と診断されると、運転免許の取り消しや停止とされます

判定は他にも「認知機能が低下」「問題なし」の2つがあり、問題なしの場合はそのまま免許更新、または罰金などの通常通りの処理で済みます。「認知機能が低下」と判断された場合や、検査で「認知症のおそれ」と判定されても医師の診断で「認知症ではない」と診断された場合も、すぐに免許取り消しとはなりません。しかし、健常な人よりも認知機能が低下してきている、という事実を本人や家族が意識しておく必要はあるでしょう。

こうした制度は、2017年からスタートしました。高齢ドライバーが増え、認知機能の低下によるアクセルとブレーキの踏み間違いなどが原因の交通事故が相次ぎ、大きな社会問題となったことによります。実際に、検査を受けた約173万人のうち約5万人(3%程度)が「認知症のおそれ」と判定され、免許取り消しになった人や、医師の診断を受ける前に自主的に免許を返納したり、更新手続きをせずに免許を執行させた人を合計すると約1万5千人程度にのぼりました。

この取り組みにより、2017年の1年間で起きた75歳以上の高齢ドライバーによる事故は、2016年中よりも41件減少したことがわかっています。ただし、地域的な問題でバスや電車の駅が遠かったり、本数が少なかったりして、車がないと移動に非常に不便な場合などの課題はまだ多いと言われています。

例えば、買い物や通院が不便になると家に引きこもってしまい、かえって認知症が進行してしまうリスクがあります。免許取り消しの診断に至る前に自主的に返納した場合はバスや電車の利用料を割引するなどの支援を行っている地域もありますが、全国的に見るとまだまだ普及している制度ではありません。今後、解決に向けて尽力すべき課題と言えそうです。

認知症の人に現れる運転の変化とは?

認知症には、有名なアルツハイマー型認知症のほか、「前頭側頭型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」などがあります。それぞれ症状が少し異なるため、運転に関して見られる症状も変わってきます。以下に4つの認知症タイプによる運転行動の特徴をまとめました。

アルツハイマー型
  • 運転中に行き先を忘れる
  • 駐車や幅寄せなど、空間認識が下手になる
前頭側頭型
  • 交通ルールを無視する
  • 運転中のわき見が増える
  • 車間距離が短くなる
血管性
  • 運転中にぼーっとするなど、注意散漫になる
  • ハンドルやギアチェンジ、ブレーキペダルなどの運転操作が遅くなる
レビー小体型
  • 注意力や集中力にムラが見られ、運転技術も同様にムラが生じる
  • 自分で運転の危険性に気づいていることもある

アルツハイマー型認知症はもの忘れと空間認識、前頭側頭型は脱抑制的や反社会的行動が特徴です。そのため、アルツハイマー型認知症では行き先を忘れたり、幅寄せや駐車スペースの認識などに困難が生じます。前頭側頭型の場合、交通ルールを自分の都合で無視したり、前の車との間をわざと詰めるなどの行動が見られることもあり、非常に危険です。

血管性認知症では注意力が散漫になることが多く、運転中に集中していられない、または反射的な操作が行えないなどの事故が多くなります。レビー小体型認知症では注意力や集中力にムラが生じますが、もの忘れの症状はあまり見られにくいため、自分の運転の危険性には気づいていることも多く、もっともスムーズに運転をやめやすいとも言えます。

認知症の人に運転を止めさせるときのコツは?

運転する人が認知症であってもその疑いの段階であっても、事故を起こす可能性だけでなく、運転者自身の健康や安全を守るために、できるだけ早い段階で症状を発見しておかなくてはなりません。認知症かな?と思う違和感があれば、本人の自覚症状に関わらず、周囲の人が促して医療機関を受診すると良いでしょう。とくに、本人が実際に認知症であると診断された場合には、できるだけ早く運転を止めるよう本人を説得する必要があります。

しかし、長年運転を続けてきた人ほど、慣れ親しんだ運転を止めるということに大きな抵抗がある人が多いです。とくに、認知症であるということを受け入れられないと、単に行動を制限されるという不満になってしまい、運転中止もまた受け入れられないとなってしまう場合もあります。本人の意思や思いをよく聞き、受け止めながらも、その「目的」や「意味」を他のことで代替できないかなど、本人と家族・身近な関係者などで穏やかにじっくり話し合うことが大切です。

例えば、以下のようなことに工夫するとスムーズに運転を中止しやすいかもしれません。

  • 車がなくても生活に支障がないよう、環境を整備する
  • 運転の仕方や、事故への不安、実際の事例などをさりげなく話し、自発的に運転を止めるよう促す
  • 車を壁に擦ったり、標識を見落とすなどして本人が自分の運転に不安を感じたときに「危ないからやめよう」と自然に話す
  • 免許を返納すると「運転経歴証明書」という証明書を申請でき、身分証明書になることも話す

本人にとって、認知症で脳機能が低下したから運転免許を返納する、というプロセスを受け入れることは非常につらい決断でもあります。とくに、車が好きで運転を続けてきた人は単なる移動手段だけでなく、趣味も同時になくしてしまうことになります。その後のQOL(生活の質)を極端に低下させないためにも、本人と周囲の人がよく話し合うことが大切です。

おわりに:認知症の本人にとっての「車の運転」とは何かを話し合おう

高齢者が増え続けている日本では、認知症の高齢ドライバーの問題は近年の大きな社会問題の1つとなっています。2017年から、免許更新の際の検査と医師の診断で認知症と診断された場合は強制的に免許取り消しとなりましたが、代替の交通手段など、まだまだ課題は残っています。

本人が運転が好きで車に乗っている場合、趣味も同時に失ってしまいます。免許返納後のQOLも含め、本人と周囲の人がよく話し合うことが大切です。

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