社会の高齢化に伴い、すべての人に身近な疾患として知られるようになった認知症。
その診断や検査では、どのような方法が採用されているのでしょうか。
今回は認知症の検査・診断を受ける前に知っておきたい、認知症の検査の流れや診断の助けとなるチェックシート、認知症検査を受けられる機関などについて解説します。
認知症の検査の流れは?何を準備しておけばいい?
認知症の検査は問診、診察、検査の順に進んでいきます。
それぞれの一般的な内容・流れは以下の通りですので、参考にしてくださいね。
認知症の検査1:患者本人と家族への問診
医師や看護師から、認知症の疑いのある本人やその家族に対し、普段の様子や日常生活で気になる点はないか以下のような内容を質問されます。
- 患者本人が物忘れや日常生活上の困難について思うことはあるか、自覚はあるか
- 家族は患者の異変や症状にいつ、どのようなきっかけで気が付いたのか
- 家族は本人の症状や様子から、現状どんなことで困難や支障を感じているのか
- 患者の様子が変化した前後に、家族構成や生活環境に変化はあったか
- 患者が今までにかかった病気や、これまでに飲んできた薬について など
認知症では、発症疑いのある本人が症状や困難を自覚していないことも少なくありません。
家族からの証言が、医師が認知症の兆候を見極める重大なカギとなりますので、受診前に上記の内容を簡単なメモにまとめて行くと良いでしょう。
認知症の検査2:医師から患者本人への診察
医師が認知症疑いのある患者本人に対し、聴診や血圧の測定、聴力や視力、発語能力、手足のまひや不随意運動の有無、歩行状態などを調べます。
認知症の検査3:機器を使った患者本人への検査
ここまでに行った問診と診察内容をもとに、以下のような記憶障害の有無を調べる神経心理検査と脳や脳の血流、血液などを調べる検査を行います。
- 認知症検査で行われる神経心理検査
- 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
- ミニメンタル検査(MMSE) など
- 認知症検査で行われる機器を使った検査
- 脳梗塞や脳出血の有無を調べるための頭部CT、MRI
- 脳血流が保たれているかを調べる脳血流SPECT
- レビー小体型認知症診断のためのMIBG心筋シンチグラフィ
- 診察結果によっては、血液検査や心電図検査を行うことも
認知症は症状を自覚することが難しいため「自分は認知症ではない」「認知症だなんて認めたくない」という想いから、患者本人が検査を嫌がるケースも少なくありません。
本人が納得せず、どうしても検査を受けさせることが難しい場合は、まずは家族だけで受診して対応を相談するか、認知症検査とは告げずに受診させるよう促してみましょう。
受診時に持って行った方がいいチェックシート
以下に、問診時に医師に日ごろの症状を伝えるのに役立ち、現れている症状の程度を見極める目安となる認知症チェックシートをご紹介します。
認知症状の程度、チェックシート
- 認知症の軽度症状
- 家計を管理できなくなっている
- 計画的に、必要なものだけを買うことができない
- 買い物をするとき、お金の支払い方がわからなくないようだ
- 物事の段取りがつけられず、料理や掃除をできなくなった
- 認知症の中等度症状
- 状況や季節を判断できず、適切な服装を選べなくなった
- 毎日の入浴を忘れたり、嫌がることがある
- 一人での買い物ができなくなった
- 感情や行動、睡眠が不安定になった
- 認知症の重度症状
- 一人で衣服の着脱ができなくなった
- 体がうまく洗えず、一人で入浴することができなくなった
- トイレの水を流し忘れる、きちんと拭けないなど排泄トラブルが出てきた
- 尿失禁や、便失禁が見られるようになった
受診前にチェックしておき、問診での回答に役立ててくださいね。
認知症の検査はどこで受けたらいいの?
認知症の検査を受け入れているのは、主に神経内科、精神科、心療内科、脳外科、または物忘れ外来のような専門科目を持つ病院の外来です。
近所に適切な診療科目の病院が思い当たらない、何科を受診すれば良いかと悩んだときには、かかりつけの医師に相談すれば適した病院への紹介が受けられるでしょう。
また、地域の高齢者相談窓口などで相談しても、アドバイスがもらえますよ。
おわりに:認知症の検査は問診・診察・機器による検査の流れで行う
認知症の検査は医師や看護師から発症疑いのある本人・家族への問診に始まり、基本的な身体機能の診察、機器を使った脳や精神神経・血液の状態の検査などを行います。症状を自覚しにくい認知症の診断は、最初の問診でいかに家族から普段の様子や症状を聞き取れるかが、重要なカギとなります。本人が受診を拒む場合の対応や、受診する診療科目がわからない場合は、かかりつけの医師や地域の相談窓口で相談してみると良いでしょう。
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