ターミナルケアは、病院、自宅、介護施設のどこで受けたらいい?

介護

人生や、疾患の終末期を心穏やかに過ごすためのターミナルケアは、患者さんが最期の時間を自分らしく過ごし、死への不安や恐怖を軽減し、納得して人生の最期に臨むことができるよう、行われるケアのことです。

ターミナルケアは自宅だけでなく、病院や介護施設で受けることもできます。それぞれのメリット・デメリットや特徴、ターミナルケアの前に決めておくことなどをご紹介します。

ターミナルケアを受けるとき、事前に決めておくべきことは?

ターミナルケアを受けるに当たって、「どこで行うのか」「延命措置をするかどうか」の2点は非常に大きなポイントです。少なくともこのポイントについては、できるだけ早めに患者さん本人と家族が話し合いをもち、本人にとっても家族にとっても納得のいく最期を過ごすとともに、後悔のない意思決定をできるようにしておきましょう。

ターミナルケアを行う場所は、大きく分けて自宅・病院・介護施設の3つがあります。本人が意思決定できる状態であれば、本人と家族でよく話し合い、「本人がどこで過ごしたいと思っているか」「一緒に過ごす家族がそれに対応できるかどうか」「受けられるサービスの種類」「在宅なら往診時の時間」などを十分よく考慮して決めましょう。本人の意思決定が難しい状態であれば、家族間で同じ内容をよく話し合い、決定します。

延命措置をするかどうかなど、医療方針についてもよく話し合っておくことが大切です。食事が難しくなったときは点滴にするのか経管栄養にするのか、容態が急変したときは心肺蘇生を行うかどうか、在宅の場合は緊急時に搬送するかどうか、こういった内容は、本人が意思決定できる間にきちんと決めておくことで、本人の意思を最大限尊重できます

しかし、これも本人が意思決定できない場合、家族間で話し合って決定することになりますので、家族全員で事前に相談しておくほか、万が一のときに慌てて混乱することがないよう、意思決定における代表者をあらかじめ決めておくと、スムーズに意見がまとまりやすいです。

ターミナルケアは、病院と在宅、介護施設でどう違うの?

ターミナルケアは、受ける場所によってそれぞれ内容やメリット・デメリットが異なってきます。そこで、在宅・病院・介護施設のそれぞれで行うターミナルケアについて、メリット・デメリット・費用に加え、特徴をご紹介します。

在宅でのターミナルケアって?

慣れ親しんだ自宅、長く一緒に過ごしてきた家族とともに過ごせる在宅でのターミナルケアは、患者さんの精神的な面において非常にメリットが大きい反面、介護する家族の負担が大きくなりやすいものです。介護疲れなどの負担を軽減し、患者さん本人と十分に向き合う時間がとれるよう、ソーシャルワーカーや介護サービスなども積極的に利用していきましょう。

在宅でのターミナルケアのメリット
  • 残された時間を家族と一緒に過ごせて、リラックスできる
  • 本人の精神的・身体的な負担が少なく、病院よりも費用がかからないため経済的
  • 家族としても「病院で一人にさせて寂しくないか、苦しんでいないか」といった心配を軽減できる
  • 頻繁に病院や介護施設へ行く負担がかからず、本人の様子を常に把握できる
在宅でのターミナルケアのデメリット
  • 床ずれ(褥瘡)ケア・食事介助・トイレ介助などを24時間体制で行う人が必要
  • 場合によっては仕事を辞めたり引っ越したりなど、介護者のその後の人生に大きく影響することも
  • 介護をしながらの生活は体力的に大きな負担であり、患者さん本人が快適に過ごせるような環境づくりをするのは精神的に大きな負担となるため、患者さんと家族の関係が悪化するリスクも
  • 容態が急変したときも、すぐに医師に診てもらえるとは限らない
  • 上記のようなことから、家族の心身の負担が大きい
在宅でのターミナルケアにかかる費用
  • 在宅医の往診費…約2〜3万円/回
  • 訪問看護費…約1万円/回
  • その他…ベッドやポータブルトイレ、車椅子などのレンタル費用など

以上のように、在宅でのターミナルケアは患者さん本人にとっても家族にとっても、最期の時間をゆっくり向き合うことができるのですが、どうしても家族の心身の負担は確実に増えてしまいますので、そのことをしっかり考慮しなくてはなりません。寝たきり状態の場合、とくに床ずれ(褥瘡)ができやすいので、数時間おきに身体の向きを変える必要があります。

一方で、病院や介護施設と比べると経済的な負担が軽減されることもメリットの1つです。医師・看護師の訪問回数や、使うサービスの種類によっても異なりますが、医療保険や介護保険の適用によって自己負担は1〜3割になるほか、高額療養費制度の対象となります。利用する事業所によって、訪問に必要な交通費や各種書類の発行手数料などがかかることもありますので、こちらも利用前に確認しておきましょう。

病院でのターミナルケアって?

病院でのターミナルケアは、そもそも受けられる人が決まっています。対象となるのは「がん」「AIDS(後天性免疫不全症候群)」の人のみで、ホスピス・緩和ケア病棟での緩和ケアとセットで行います。緩和ケアを含む医療行為を行わない老衰などの人で、ターミナルケアのみを希望する人は、原則として病院でターミナルケアを受けることはできません。

病院でのターミナルケアのメリット
  • 医師や看護師が常駐し、常に容態を把握して側にいるため、急変があったときにすぐ対応してもらえる
  • プロに介護を任せることになるので、家族が介護で心身を消耗せずに済む
  • 医療ソーシャルワーカーのいる病院なら、経済的なことや家族の生活の相談もしやすい
  • 在宅で24時間体制の介護をするのと比べ、家族の負担が少なく、安心感も大きい
病院でのターミナルケアのデメリット
  • 入院費と治療費がかかるため、経済的な負担が大きくなる
  • 面会時間が限られているため、会えない間に本人や家族の不安が増すことも
  • 本人の生活環境として、完全にリラックスするように整えることは難しい
病院でのターミナルケアにかかる費用
  • 入院が30日以内…49,260円/日
  • 31〜60日以内…44,000円/日
  • 61日以上…33,000円/日
  • 加えて、1日3食分の食事医療費360円がかかる

病院でのターミナルケアは受けられる人が決まっていますが、対象者はいずれも重篤な疾患の患者さんですから、容態の急変にもすぐに対応してもらえる病院でターミナルケアを行うことで、本人も家族も安心感が得られますし、家族の心身の負担が在宅ケアと比べて大きく軽減できます

一方で、1〜3割が自己負担、さらに高額療養費制度の対象になるとはいえ、どうしても経済的な負担は在宅ケアと比べて大きくなりやすいです。さらに、いつも側で様子を見ているわけではないため、容態が急変したときにすぐに駆けつけられるとは限らないこと、会えない間に本人の不安感や孤独感がつのりやすいこともデメリットの1つです。

介護施設でのターミナルケアって?

有料老人ホーム・介護老人保健施設・特別養護老人ホームなどの高齢者用の入居施設では、基本的に看取り介護、つまりターミナルケアを前提として入居を受け入れます。とくに、平成18年に介護報酬が改定された際「看取り介護加算」が創設され、平成27年には要件の見直しもされたことにより、ターミナルケアを行う施設が増えました。

看取り介護加算の要件を満たさない施設であっても、事実上看取り介護を行っているところは多いのですが、やはり医療体制や看護体制がきちんと整っているかどうかの基準として、「看取り介護加算」があるかどうかを確認してから施設を選ぶのも良いでしょう。

介護施設でのターミナルケアのメリット
  • 介護のプロによるケアが受けられるため、褥瘡ケアや日常生活のサポートにも安心感がある
  • 着替え・トイレ・移動など、本人もストレスをあまり感じず過ごすことができる
  • 家族の心身の負担が減り、本人と向き合うことなど精神的なケアに集中できる
  • 介護士や他の利用者ともコミュニケーションを取りやすいため、孤独感や社会的な孤立感を感じにくい
介護施設でのターミナルケアのデメリット
  • 面会時間が限られているため、病院同様会えない間に本人や家族の不安感が増すことも
  • 生活する部屋やベッド周りが病院よりはリラックスした雰囲気になるものの、自宅と同じとまでは整えるのが難しい
  • 在宅ケアと比べて、経済的な負担が大きくなる
  • 常に家族が側にいられるわけではないので、容態の急変時にすぐ駆けつけられるとは限らない
介護施設でのターミナルケアにかかる費用(看取り介護加算)
  • 家族の同意から4〜30日間…144点/日
  • 死亡の前日・前々日…680点/日
  • 死亡当日…1,280点/日

介護施設でターミナルケアを受ける場合も、病院と同様、家族の心身の負担が軽減され、患者さん本人の精神的なケアや、ゆっくりと最期の時間に向き合うことに集中できるのが大きなメリットです。一方で、寝たきりや食事ができなくなった後、どのくらいの期間ターミナルケアが続くのかは誰にもわかりませんので、経済的な負担が大きくなることも考えられます。

おわりに:ターミナルケアは、患者さん本人と家族でよく話し合って決めるのが重要

ターミナルケアは、患者さん本人が死への不安や恐怖を軽減し、人生の最期を心穏やかに過ごすために行われるケアです。ですから、患者さんの希望を尊重するのはもちろんですが、家族の心身の負担を考慮することも重要です。

本人が自分で意思決定できるうちに、どこで行うか、延命措置はどうするかなど、よく話し合っておきましょう。また、病院は受け入れる対象の患者さんが決まっていますので、その点にも注意が必要です。

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