親が一人暮らしの高齢者になった時、生活費はどれくらいかかる?

介護

今30〜40代の働き盛りの世代の方にとって、将来的な心配事の1つが、「親が高齢者になり、介護が必要になった時、どれくらいのお金を支援する必要があるのか」だと思います。実際に親が高齢者になったり、高齢で一人暮らしをせざるを得なくなった時、生活費はどれだけかかるのでしょうか?

親が高齢者になった時、生活費はどれくらいかかる?

夫65歳以上、妻60歳以上の高齢夫婦(どちらも無職)の場合、消費支出月額の平均は約23万5615円です。

年金等での収入によって、自由に使えるお金は約19万3743円得られるものの、毎月4万1872円の赤字になります(総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2018年(平成30年)平均結果の概要」)。

支出額の内訳は、税金や社会保険料、食費、住宅費、光熱費、水道代、生活用品代、交通費、通信料、娯楽代や衣服の購入費、交際費などが主です。交際費や娯楽代まで切り詰めれば、赤字は多少減らせるかもしれませんが、そうすると楽しみがなくなり、高齢者のQOLが下がってしまいます。

つまり高齢者の親がある程度楽しく生活していく以上、毎月4万円、年間で約50万円ほどの赤字は出てしまいます。もし90歳で寿命を迎えると仮定すると、65歳からの25年間は赤字が出続けたとして、単純計算で、「50万円×25年=600万円」ほどの負担が最低でもかかることが想定されます。

親が一人暮らしの高齢者になった場合は?

一人暮らしで無職の高齢者の場合、消費支出月額の平均は14万9603円です。自由に使えるお金は毎月11万933円ほど残りますが、毎月3万8670円の赤字が出ます(総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2018年(平成30年)平均結果の概要」)。

一人暮らしの高齢者の場合も毎月4万円、年間約50万円ほどの赤字が出ると想定すると、90歳まで健康に生きた場合でも、高齢者夫婦と同じくらいの金銭的赤字が考えられます。

高齢者の親が「厚生年金」に加入していたかもポイント

親が夫婦とも自営業であった場合、高齢者になった時の年金支給額はかなり減ります。平成30年度の国民年金支給額は、40年間満額支払っていた場合でも年77万9300円、月に約6万5000円です(途中で未納や免除があると、もっと少なくなります)。

一方、会社員だった人は、この国民年金に上乗せして「厚生年金」が支給されます。厚生労働省「平成29年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金保険第1号(民間企業のサラリーマン)受給者の平均年金月額は、約14万7000円です。国民年金の倍以上の支給額になります。

一人暮らしで高齢者の「女性」は、特に生活費が苦しい

夫は会社員、妻は専業主婦やパートというご両親の場合は、母親の年金受給額が乏しいケースが多いです。特に1960〜90年代の女性の就業率は5割程度、かつ非正規雇用だった率が高く、賃金も男性より少ないことが一般的だったため、資産形成が難しかったことが関係しています。

生活に困窮する高齢者は少なくありませんが、特に女性は老後の年金受給額が乏しく、経済的なリスクを抱える可能性が高いです。

高齢者の親が要介護状態になった場合の生活費は?

高齢の親が要介護状態になった場合、さらに必要な生活費は増えます。介護による出費が長年続き、老後破産を迎えてしまう高齢者も少なくありません。

介護サービスには、入居タイプの「特別養護老人ホーム」や民間の「サービス付き高齢者向け住宅」、在宅介護を主軸にする「デイサービス」、「ホームヘルパー」など様々な種類があり、どのサービスを受けるかによって必要経費は大きく異なります。

在宅介護でかかる費用

在宅介護にかかる費用は、デイサービスなどの「介護サービス利用料」と、オムツ代や介護リフォーム等にかかる「介護サービス以外の費用」の2つに分けられます。

要介護状態になれば介護保険に加入できるので、月々の自己負担は多少減りますが、在宅介護にかかる費用は月に平均5万円程度です。内訳としては、介護サービス利用料は月に1万6千円ほど、介護サービス以外での出費が3万4千円ほどになります(要介護が高くなるにつれ、費用は高くなる傾向にあります)。

また、介護期間がどれくらいかかるかによって、負担額も当然異なります。健康状態によって個人差はありますが、介護期間は平均5〜10年程度はかかるものです。在宅介護を10年間続けた場合、経費は少なくとも「月5万円×12ヵ月×10年=600万円」以上かかるという計算になります。

老人ホームでかかる費用

入居タイプの有料老人ホームには、「介護付」「住宅型」「健康型」の3種類があります。費用は施設によって異なりますが、入居一時金だけで数十万〜数百万かかることが多く、高級有料老人ホームとなると数千万円かかることもあります。

月額料金の相場は、有料老人ホームは約20〜25万円、特別養護老人ホームは約7〜15万円、サービス付き高齢者向け住宅は約15〜20万円です。特別養護老人ホームは比較的安価で利用できるのがメリットですが、入居条件の原則が要介護3以上であり、入居待ちの人が多くいるため、なかなか入居できないのが現状です。

関連記事:老人ホームを探すとき、確認しておくべきこととは?

高齢者の親に生活費をどれくらい支援すべき?

無職の高齢者は主に年金に頼って生活することになりますが、年金だけでは十分な生活ができず、介護費や医療費の出費も考えるとかなりの赤字になることが想定されます。

責任感の強い人だと「子供の自分が、親の介護費や生活費を負担しなければ」と思いがちですが、老後の資金や介護費用は、基本的には高齢者本人の貯金や年金から捻出させるのが原則です。それでも足りない分を、子供が多少支援するくらいのスタンスでいましょう。

親の口座に手をつけることに罪悪感を覚える人もいるかもしれませんが、働き盛りの子供が親の介護と仕事を両立させようとすると、心身や経済的な負担によって、介護うつや介護離職に追いやられるケースも少なくありません。するとご自身の将来や老後の生活が立ち行かなくなってしまうので、無理のない範囲で金銭的なサポートをするようにしてください。

高齢の親に生活費援助をしている人は「所得控除」を

高齢の親に毎月生活費を援助している人の場合、税務申告をすれば節税できる場合があります。使える所得控除(家族構成や事情に応じて、所得から各種の控除額を差し引き、税負担を減らす仕組み)は、下記の通りです。

扶養控除

親の所得が38万円以下の場合、親を扶養対象にできます。高齢の親が公的年金を120万円もらっていたとしても、公的年金には控除があるため、65歳以上であれば年金収入120万円までは所得が0という換算になります。

この場合、親を扶養控除の対象にすることで、子供の所得から48万円を差し引くことができます。

社会保険料控除

納税者が「生計を共にする家族」(親子が離れて暮らしていても、子供の仕送りによって親が生活をしている場合はこの定義に含まれます)の分まで社会保険料を負担している場合、その分を全額所得から差し引けます。社会保険料には国民年金、厚生年金のほか、公的健康保険や介護保険等の保険料も含まれます。

75歳以上の高齢者の場合、負担するのが「後期高齢者医療制度」と「介護保険料」で、介護保険料を子供が負担することはできません。しかし、後期高齢者医療制度と国民健康保険については、親が住む市区町村の窓口で手続きを行い、親の保険料を子供の預金口座から振替払いすれば、子供の社会保険料控除に含めることが可能です。これによって、多少の節税が見込めます。

親に介護費用の相談をしておこう

高齢の親の生活費や介護費を子供が捻出せざるを得ない場合は、子供のライフプランにかなりの影響が出ます。親が高齢化し、特に一人暮らしをしている場合は、自身の年金や貯蓄でどれくらい生活費・介護費を出せるのかを聞いておきましょう。

親自身が生活費やライフプランを見直す

前述の通り、高齢者の生活費や会議費は高齢者自身が負担するのが原則です。無職で高齢になった時、働き盛りの頃と同じペースで出費を続けていると、家計はどんどん赤字になってしまいます。

不要な支出は少しでも減らすよう、高齢者の親自身が家計管理を徹底することがまずは大切です。まずは下記のことから実践してみましょう。

住宅費(賃貸の場合)
より安い賃貸住宅に引っ越す。
水道費や光熱費
契約内容を見直し、安いプランに変える。
食費
レシートをこまめにチェックし、家計簿につける。むやみに高い食材や余分な嗜好品を買っていないかチェックする。
通信費
契約内容を見直し、必要なら格安スマートフォンに乗り換える。

親の退職金を老後資金に充てる

親が定年退職した場合は、退職金をもらえたケースが多いかと思います。退職金で数千万円もらえる人もいるので、金額によっては老後資金の一つとして活用するのが望まれます。

親が定年後も働く

年金支給開始年齢が遅くなった現在では、定年後から年金が支給されるまでの間、無年金で無収入になる人もいます。近年は高齢者向けの再雇用制度も充実してきているので、健康状態に応じて、元気なうちは働き続けるのも手段の1つです。

一例として、公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会の会員になれば、60歳以上の高齢者でも働き口を紹介してもらうことが期待できます。

おわりに:高齢者の親が年金だけで生活するのは難しい。事前の心づもりを

高齢で無職の親は、年金に頼って生活することになりますが、年金だけでは十分な生活ができないばかりか、家計が赤字になることが見込まれます。さらに介護費用もかかるとなると、多額の費用を親自身が準備しておく必要があります。
親の職種や就業形態によっては、老後の生活がさらに厳しくなることが想定されるので、早いうちにお子さんから一声掛けておくことが望まれます。

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