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高齢者向けシェアハウスって、どんなところなの?

老人ホーム

近年、若者を中心に広がっている「シェア文化」は、「ミニマリスト」「持たない暮らし」「サブスクリプション」などのサービスとつながり、一つの大きな価値観の変化をもたらしています。こうしたシェア文化の一つに「シェアハウス」があります。

とくに近年は元気な高齢者が増えたことから、高齢者向けシェアハウスという物件も登場しました。そこで、この高齢者向けシェアハウスのメリットや注意点についてご紹介します。

高齢者向けシェアハウスの特徴は?

シェアハウスとは、一軒家やマンションに数名が同居する居住スタイルのことで、同居するメンバーは必ずしも血縁関係とは限りません。家の各部屋が入居者のプライベートスペースとなり、トイレ・キッチン・風呂や居間は他の居住者と共有します。こうしたライフスタイルは近年、若者の間で都市部を中心に流行し、一定の層に定着しました。

このシェアハウスのターゲットを高齢者に絞ったものが、高齢者向けシェアハウスというわけです。一般的なシェアハウスとの違いは、階段に手すりがついている、段差をなくすためのスロープがついているなど、高齢者向けの設備が充実しているところです。シェアハウスに住むことは、他の居住者とのふれあいによって社会との接点を保ったり、適度な緊張感を持って生活できたりと、社会性を維持するとともに、脳を適度に刺激し、活性化してくれます。

関連記事:認知症を予防するには、どんなことに取り組めばいい?

有料老人ホームなどとはどう違う?

高齢者向けの「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」などの居住型施設との最も大きな違いは、介護を前提としているかどうかというところです。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、いずれは介護を必要とすることを前提とし、介護スタッフが常駐し、施設のさまざまな場所が介護しやすいようにバリアフリー化されています。

しかし、高齢者向けシェアハウスは基本的に自分の身の回りのことや、日常生活がすべて自力で行える高齢者向けの住宅です。介護をしてくれるスタッフはいませんし、そもそも介護を前提として作られた家ではありませんから、バリアフリー化が十分でないかもしれません。こうしたことを踏まえ、高齢者向けシェアハウスのメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット
  • 月々の諸費用が施設と比べてリーズナブル
  • 入居者どうしの交流が密である
デメリット
  • 手厚い介護サービスが受けられない
  • バリアフリー対策に対して法的な規定がない

大きなメリットとして挙げられることは、シェアハウスの家賃は一般的なマンションやアパートよりも割安であり、介護施設のように一時入居金も発生せず、定期的にかかる自宅の修繕費は一般的な賃貸物件と同じように基本的に家主が負担することになりますので、圧倒的に金銭的な負担が軽くなることです。

介護施設のように介護サービスに対してかかるコストがないため、毎月必ず発生する費用は家賃と光熱費(他の入居者と折半する)のみで、食費や雑費は自分が使った分だけかかります。年金で暮らす高齢者にとって、生活費をリーズナブルに抑えられることは非常に大きなメリットと言えるでしょう。

また、シェアハウスでは介護スタッフがいないことから、入居者どうしの交流がメインとなります。とくに、居間やキッチンなどの共用部で他の居住者と顔を合わせる機会も多くなるでしょう。直接顔を見合わせて安否確認ができたり、一緒に食事をしたり、家事を分担して支え合ったり、という充実した社会生活が送れることも、大きなメリットの1つと言えます。

一方で、介護スタッフがいないことはデメリットとも言えます。現在、介護を全く必要とせず、一人暮らしが十分送れるほど元気な高齢者は問題ありませんが、日常生活に不安があったり、現在既にある程度の介護や介助を必要としていたりする高齢者には、シェアハウスは向いていません。例えば、認知症の患者さんや身体に大きな不自由がある高齢者の場合、入居を断られてしまうこともあります。

また、高齢者向けシェアハウスにバリアフリーに対する法的な規定はありません。そのため、介護状態を見据えて設計されている有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅とは異なり、バリアフリー対策に力を入れている家とは限らないのです。物件によっては、バリアフリーに対応していないことも考えられますので、事前に必ず確認しておきましょう。

高齢者向けシェアハウスに入るときの注意点は?

高齢者向けシェアハウスは、一般的な介護施設とは異なり、生活時間帯や外出時間などの制限はありません。しかし、逆に共同生活ならではのルールが必要となってきます。例えば、食事は個人で作り、個人で済ませるというシェアハウスもあれば、居住者どうしで助け合いながら作り、共有スペースで揃って食べるというシェアハウスもあります。

こうしたルールは、入居者どうしが決めるケースもあれば、シェアハウスのスタッフが間に入って時間割や作業分担を決めるケースもあります。具体的には、以下のようなポイントについて最初にルールづくりが必要です。

  • キッチンを使う時間割
  • 調理器具や食器の取り扱い
  • 生ゴミなど、ゴミの出し方
  • 入浴時間
  • 風呂、トイレ、キッチンなど共有スペースの清掃分担

とくに、食事のタイミングや入浴時間は、重なってトラブルにならないよう、最初に細かくルール設定しておく方が良いでしょう。また、清掃分担も誰か一人が大きく負担するのではなく、全員で公平に分担できるように設定します。困ったことや相談があれば、オーナーや管理人に連絡してきちんと解決しましょう。

このように、それなりの人数が同居して共同生活を送るという性質上、プライベートを重視したい人や、にぎやかな環境が苦手な人にはどうしても馴染みにくい環境と言えます。近年、規制緩和によって高齢者向けシェアハウス事業に参入する業者や個人が増えたことや、健康なまま高齢期を迎える人が増えたことから、高齢者向けシェアハウスは増えていますが、必ずしも高齢者全員が住みやすい環境ではないことを念頭に置いておく必要があります。

入居した以上は住み続けなくてはならない、といった義務感で生活を続けていると、ストレスで体調を崩してしまう可能性もあります。毎日同じ家で同じ人と顔を合わせることに苦痛を感じるようなら、共用スペースとプライベートスペースがはっきりと区別されているサービス付き高齢者向け住宅や、シニア向け分譲マンションなどの選択肢もあります。高齢者本人の価値観やライフスタイルに合った住居を見つけることが大切です。

認知症が予防できる?

2018年に日本福祉大学によって行われた調査では、同居人以外と週に1回未満しか交流しない高齢者が、毎日さまざまな人と交流する高齢者に比べ、要介護状態や認知症になるリスクが1.4倍も高くなることがわかりました。逆に言えば、さまざまな人と絶え間なくコミュニケーションを取っている高齢者は、要介護状態や認知症になりにくいとも言えます。

これより以前に行われた2013年の「国民生活基礎調査」によれば、会話する頻度が1週間に1回以下という高齢世帯の割合は、夫婦のみの世帯の場合、男性8.4%・女性7.4%なのに対し、単身世帯の場合、男性28.8%・女性22.0%と、一緒に住む人がいないだけで約3倍以上に跳ね上がるのです。つまり、一緒に住む人がいなくなればいなくなるほど人とコミュニケーションを取らなくなり、要介護状態や認知症になるリスクが高まってしまいます。

そこで、まだ十分に元気なうちに高齢者向けシェアハウスに入居していれば、毎日多くの居住者と顔を合わせ、コミュニケーションを取ることになりますので、要介護状態や認知症になるリスクを下げられると考えられます。今後、シェアハウスという居住形態は、単純に単身の高齢者が孤立しないためというだけでなく、要介護対策・認知症対策としてますます期待されることでしょう。

高齢者向けシェアハウスは、欧米では既に広まっている居住形態で、やはり孤独死や社会的な孤立が懸念される高齢者にとって、孤独感が緩和され、社会的な関わりを保てることのメリットが大きいとされています。家賃や光熱費がリーズナブルに抑えられることもメリットですが、お互いの安否確認を行う、健康を気遣うなど、自然に支え合いが生まれやすいのです。

もちろん、他人どうしが居住空間を共有することは、ライフスタイルの違いや価値観の差異からトラブルも考えられます。しかし、それ以上にいつも一緒に暮らし、会話を持つ人がいて、治安面でも安心できること、社会生活を続けることで脳を刺激し、認知症の予防につながることのメリットが大きいこともまた、確かなことなのです。

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おわりに:高齢者向けシェアハウスは孤立を防ぎ、認知症予防にも役立つ

高齢者向けシェアハウスも一般的なシェアハウスと同じように、居住者どうしによるルール作りを含め、自主的な共同生活を送ります。介護スタッフがいないため、基本的には自分のことは自分でできる元気な高齢者が対象です。

高齢者の単身世帯は、孤立が大きな課題の一つです。いつも一緒に暮らして会話し、社会生活を送れる人がいるシェアハウスは、高齢者の孤立を防ぎ、要介護状態や認知症になるリスクを軽減するのにも役立ちます。

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