認知症は、脳機能、とくに認知機能の低下により、さまざまな症状を発する病気です。
しかしひとくちに認知症と言っても、原因や症状の現れ方の特徴から、いくつかの種類があることをご存知でしょうか?
今回は認知症の種類について、治療や予防の可否とあわせて解説していきます。
認知症の種類には治せるものと治せないものがある?
認知症を大きく分類すると、「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」の3種類があります。
3種類の認知症の主な発症原因や特徴は、それぞれ以下の通りです。
- アルツハイマー型認知症
- 脳全体が少しずつ委縮することで、発症する認知症
- 初期症状として、物忘れなどの記憶障害が起こりやすい
- 脳血管性認知症
- 脳梗塞や脳出血など、脳の血流が滞る病気が原因で発症する認知症
- 典型的な認知症症状と合わせ、運動麻痺などが特徴的な症状として現れる
- 1日のなかでの症状の変動が見られる
- レビー小体型認知症
- 脳にレビー小体という異常なタンパク質が溜まることで、発症する認知症
- とくに幻視や幻覚の症状が起こりやすく、振戦などパーキンソン症状が見られる
このうち、発症割合が最も多いのが認知症全体の60%を占めるアルツハイマー型で、次いで脳血管性が20%、レビー小体型が10%となっています。
上記の3種類以外にも、栄養障害や脳炎、甲状腺機能低下症などの疾患から、認知症を発症することがあります。
認知症はおもに発症原因で種類分けされていて、発症原因により「予防や根本治療が可能なもの」と「予防や根本治療ができないもの」が存在しています。
病気が原因の認知症 「治せる・防げる認知症」の種類
認知症のうち、根本的な治療や予防が可能なのは、以下のような各部位の病気を原因とする認知症です。
- 治療と予防が可能な、認知症の原因となる疾患
- 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血
- 頭蓋骨と脳の間の脳室に脳脊髄液が溜まっていく、正常圧水頭症
- 頭蓋骨と脳の間に血のかたまりができてしまう、慢性硬膜下血腫
- 新陳代謝を高める甲状腺ホルモンの分泌量不足で、脳機能も低下する甲状腺機能低下症
上記のうち血管性認知症の原因となる脳梗塞、脳出血、くも膜下出血は、原因となる高血圧・脂質異常症・糖尿病などを予防することで、発症予防や根治治療ができることがあります。
正常圧水頭症は脳室に溜まった水を除去すれば治療できますし、慢性硬膜下血腫は頭部をケガしないように気をつけ、手術することで予防・治療が可能です。
甲状腺機能低下症も、ホルモン療法などで不足している甲状腺ホルモンを補ってあげれば、脳の機能も回復し認知症のような症状は改善します。
このように何らかの病気が原因の認知症なら、早期に発見・治療することで、発症を予防したり根治させることができるのです。
進行を遅らせる治療を施す認知症の種類
病気が原因の認知症が予防・治療できる一方で、根治が不可能で、進行を遅らせることが治療の中心となる認知症もあります。
根治が難しく、症状の進行を抑える対症療法のみが施される認知症は、以下の通りです。
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉・側頭葉が徐々に委縮し、同じ言動の繰り返しや発語能力の低下などの症状を引き起こす認知症です。
これらアルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型はいずれも変性疾患と呼ばれる脳の神経細胞が減少していく病気であるため、根本的な治療法はありません。
ただし発見と治療開始が早いほど、薬で病気と症状の進行を遅くできる可能性も高くなります。
おわりに:認知症には病気を原因とするもの、脳の変質を原因とするものがある
認知症にはアルツハイマー型やレビー小体型のように脳の神経細胞が減少していくものと、脳やその他の部位の病気を原因として発症するものがあります。脳の神経細胞が減少していく認知症には、根本的な治療法はありません。
ただ脳出血やくも膜下出血、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症などを原因とする認知症は、原因疾患を治療することで予防や根本治療も可能になります。覚えておいてくださいね。
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