一人暮らしの高齢者が認知症かも?症状と必要な支援について

老後の不安・悩み

一人暮らしの高齢者に伴うリスクとしてよく知られるのが「孤独死」ですが、「認知症」の発症や進行、それによる火事も近年問題視されています。認知症になるとどんな症状が見られるのか、また必要な支援は何か、お伝えしていきます。

高齢者の認知症の症状は?

高齢化が進む日本では、認知症の高齢者の数も増えています。

2012年時点では、高齢者のおよそ7人に1人(約462万人)が認知症であり、認知症の前段階である「MCI(Mild Cognitive Impairment)」の人も加えると約4人に1人の割合にのぼります(政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン」)。

年をとると誰でもすぐに物事を思い出せなかったり、新しいことを覚えられなくなったりしますが、
加齢による「物忘れ」と「認知症」は下記のように異なります

加齢による物忘れ認知症
体験したこと一部を忘れる(朝食のメニュー等)全て忘れている(朝食をとったこと自体)
物忘れの自覚あるない
探し物自分で見つけようとする「誰かに盗られた」など他人のせいにすることがある
日常生活への支障ないある
症状の進行徐々にしか進行しない進行する

認知症には「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」など複数の種類がありますが、脳の神経細胞が死滅したり、異常なタンパク質が脳に蓄積されたりすることが原因で発症します。

症状は、脳の神経細胞の死滅に伴う「中核症状」と、本人の性格や環境などが原因で起こる「行動・心理症状」に分けられます。

中核症状

記憶障害
新しいことを記憶できず、少し前に聞いたことも思い出せなくなったりします。
見当識障害
時間の感覚が薄れ、迷子になったり遠くへ出かけようとしたりするようになります。
理解力や判断力の障害
思考のスピードが低下し、2つ以上のことが重なると混乱をきたすようになります(駅の自動改札を使えない、ATMの操作ができない等)。
実行機能障害
同じものを何個も購入する、料理を同時に進められないなど、物事をスムーズに進められなくなります。
感情表現の変化
状況がうまく認識できず、周囲の人が驚くような感情的な反応を見せることがあります。

行動・心理症状

しまい忘れたものを「他人に盗られた」と妄想する
徘徊する(行動や訴えがちぐはぐになる)
能力の低下を自覚して自信を失い、引っ込み思案になる など

どの症状が出たら認知症?

「少し前の出来事を思い出せなくなった」「料理の作り方がわからなくなった」「家に引きこもりがちになった」「綺麗好きなはずなのに、家が前より散らかっている」等の症状が高齢者に見られた場合、認知症を疑うご家族もいます。

確かにこれらは認知症の可能性がある症状ですが、加齢に伴う物忘れやうつ病、腰痛等の身体的な不調が原因の場合もあります。複数該当する症状が見られたとしても、一概に認知症だとは言い切れません。

ただ、認知症の一歩手前の「MCI」である可能性は捨てきれず、今後の生活を考えれば早めに対策を考えておくことが重要です。

特に一人暮らしの高齢者が認知症になると、家族や周囲が気づかない間に症状が進行し、徘徊や火の消し忘れ、詐欺被害に遭う等の事態が起こり得ます。ここまで症状が進行すると、一人暮らしを継続させるのは難しく、また本人と意思疎通がうまく取れなくなってしまう恐れもあります。

一人暮らしの高齢者の認知症、必要な支援は?

もし一人暮らしの高齢者に認知症のような症状が出ていたら、家族や近しい人が、早期に下記のような支援をすることが望まれます。

本人の意思を確認し、尊重する姿勢を見せる

まずはじっくり時間をとり、高齢者本人の話を聞きましょう。もし認知症が疑われる様子や行動が見られても、「本人は今の生活をどう思っているのか」「今後どう生活していきたいのか」等の意思を尊重することが大切です。

「認知症かもしれないから、一人で生活するのは無理だよ」「徘徊すると周りに迷惑だよ」などと否定的な言葉をかけると、本人の心が傷つき、必要な支援を拒むようになる恐れがあります。認知症の話題には直接触れず、ニュースや知人の話などを例に、「お母さん(お父さん)はどうしたい?」とさりげない形で意思を確認するのがポイントです。

地域包括支援センターで情報を収集する

地域包括支援センター」とは、各市区町村に配置された、65歳以上の高齢者の困り事に応じてくれる相談所です。高齢者の健康状態の維持や、保健福祉医療の向上、生活安定に必要な援助を包括的に行っています。

地域の介護情報に詳しく、高齢者ご本人の情報を持っている可能性もあるので、一度相談に行ってみましょう。必要に応じて福祉サービスが受けられるよう、関係機関との連絡調整を行ってくれる場合もあります。

医療機関に受診させる

認知症のような症状が見られても、他の疾患や体調不良によるものの可能性もあります。高齢者は定期的な健康チェックが欠かせないので、「健康診断に一緒に行こう」といった呼びかけで医療機関に付き添うようにしましょう。

「認知症だろうから頭の病院に行こう」と言ってしまうと、高齢者本人が拒絶反応を示す恐れがあります。本人の心を傷つけない、さりげない声かけが大切です。

介護施設への入居の検討

もし医療機関で認知症という診断をされた場合、今後症状が進行し、火の不始末や詐欺被害などのトラブルに直面する可能性があります。それを想定すると、たとえ高齢者本人が一人暮らしを希望したとしても、諦めてもらう必要性が出てきます。

そこで必要なのが、介護施設の利用です。認知症と診断された人は、介護保険などのサービスが利用できます。
症状が軽いうちに、まずは在宅での介護サービスや、ショートステイなどの宿泊を含めた介護サービスを活用してみましょう。いきなり入居型サービスに移行すると、一人暮らしの生活に慣れていた高齢者にとってかなりストレスになる場合があるからです。

なお、「自分が親をしっかり介護しなくては」という責任感が強いご家族もいらっしゃいますが、介護にはゴールがありません。また、高齢者の介護のために自身の生活を犠牲にすると、介護離職や介護うつといった別の問題も降りかかってくる恐れもあります。

自分自身の時間も大切にし、労わりましょう。それが認知症のご家族の精神的な安定にもつながります。

おわりに:高齢者本人の意思を尊重した支援を

一人暮らしの高齢者に認知症のような症状が見られると、ご家族や周囲の人はかなり心配になってしまうものです。しかし、高齢者本人の意思を尊重せずに病院や介護施設に無理やり行かせると、必要な支援も拒むようになってしまう可能性もあります。介護する側もされる側も、お互いの生活や意思を阻害しない形で、無理なく関わり合うことが大切です。

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