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体位変換の目的と体を痛めない介助のコツとは?

介護

寝たきりの人は、自分で体を自由に動かせないため、自由に動ける人が寝返りを打つのと同じように、誰かに体の向きを変えてもらう必要があります。それが体位変換というわけですが、そもそも、人間はなぜ寝返りを打たなくてはいけないのでしょうか。

介護において非常に重労働ですが同時に大切なことでもある体位変換について、その目的や必要性、介助者自身の負担になりにくいようなコツをご紹介します。

体位変換はなぜ必要なの?

私たち人間は、生活の中でさまざまな活動をし、必要に応じて体の向きや姿勢、格好を変えています。意識的に姿勢を正したり、無意識に楽な方へと体を動かしたり、関節を動かしたりするのには、いろいろな方向から加わる圧力やズレの力をなくしたり、受け流したりといったほか、関節が動かない苦痛を軽減したり、蒸れや暑さを逃して体温調節したり、内臓機能を助けたりと、さまざまな作用があります。

このように、体を動かすということは私たちが自分で思っている以上に、生きていく上で重要なことなのです。ですから、寝たきり状態で自力では寝返りを打てないという人にとっても、やはり寝返りなどで体を動かすことは必要です。そこで、介護士などの手で体の格好や姿勢を変える「体位変換」を行います。

体位変換は、基本的に訪問介護で行う「身体介護」の1つに分類され、長くても2〜3時間を目安に、ずっと同じ姿勢にならないよう行われます。体位変換において大切なことは、「介助者のペースで無理矢理に引っ張って動かさない」ということです。介護を受ける本人にまず「これから体位変換をしますね」と伝えた上で、本人の意見を取り入れながら行いましょう。

体位変換の目的は、主に以下の3つにまとめられます。

日常生活ケアのため
おむつ交換食事口腔ケア身体清拭着替え移乗など
長時間体を動かさないことによる弊害を避けるため
褥瘡や拘縮、肺炎、むくみ、内臓機能の低下、廃用症候群などの予防
QOLの向上のため
コミュニケーションによる安心感、関節が動かない苦痛の軽減、循環不良による疲労感の改善、不眠や意識の改善、蒸れや暑さ対策

中でも、とくに大切なのが褥瘡予防です。褥瘡予防のための体位変換では、骨が浮き出ている部分の皮膚や組織にかかってしまう外力をなくす、あるいは軽減することを目的として行います。体位変換によって外力がずっと続いてしまう時間を短くするとともに、体圧分散作用のある寝具を使うとより効果的です。このように、褥瘡リスクが高いとされる患者さんには、全員に体位変換を行わなくてはなりません。

体位変換での介助の負担を軽くするための正しい手順とは?

体位変換とは、前章でもご紹介したように、ただ体をごろりと動かせば良いというものではありません。利用者に声かけをしたり、希望や意見を取り入れたりするとともに、介助者自身に余計な負担がかからないよう、正しい手順で行うことが重要です。具体的には、以下のような手順で行いましょう。

1:横向きになることを本人に説明し、介助しやすい位置にベッドの高さを調節する
  • 最初に、本人に横向きになること、ベッドが動くことを伝え、了承を得る
  • 次に、介助者が介助しやすいよう、ベッドの高さを調節する
2:枕を引き、向く方向へ顔を向ける
  • 枕を引いて、本人の顔をこれから体位変換する方向へ向ける
3:両腕を胸の上でしっかり組む
  • 本人の両腕を、胸の上でしっかりと組む(または、組んでもらう)
4:下半身を動かしやすいよう立てる
  • 本人の両ひざを高く立て、かかとをお尻に近づける
5:体位変換の準備
  • 本人の腰に右手を置き、膝に右肘を当て、左手は本人の肩を持つ
6:体位変換を行う
  • 右肘で本人の膝を倒し、右手で腰を回転させてから、左手で本人の肩を起こす

慣れてくるとついつい「作業」になってしまうこともあるかもしれませんが、介助される側は、声かけをしてもらうことで心の準備ができます。逆に、声かけせずいきなり体位変換を始めてしまうと、介助される本人は驚いたり不安になったりして、不快な思いをしてしまうかもしれません。しっかり声かけをしてから始めましょう。

また、準備段階で腕を組んで膝を高く立てるのは、ベッドと接する部分が少なくなり、摩擦が少なくなることで、手足を伸ばして寝たままの状態と比べて少ない力で介助でき、介助者に余計な負担がかかりにくいからです。膝→腰→肩の順番で倒すのも同じ理由で、膝を倒すと本人の腰が自然と体の向く方向へ回転するため、少ない力で体位変換でき、介助者にとっても本人にとっても負担がかかりにくくなります。

また、体位変換の際には以下の点に注意しましょう。

  • 介助者自身の体に負担がかからないよう、ベッドの高さや力加減などを工夫する
  • 腕組みや膝立てなど、本人が自力でできる部分はできるだけ協力してもらい、できるだけ自立していけるような関わり方をする

体位変換したときにチェックしておくべきことは?

体位変換をしたときは、「皮膚の状態」と「シーツの状態」に気をつけましょう。

皮膚の状態を確認しよう

体位変換の後、着衣や脱衣・排泄介助などを行うときは、皮膚に異変がないか十分に確認しましょう。とくに、体の片方が麻痺していて、麻痺している側に床ずれなどの異変が起きている場合、本人はどうしても気づきにくいものです。このように本人の皮膚を確認できる状態のときは、介助者が少し気をつけて観察しておきましょう。

また、体位変換のときにおむつを交換することも多いですが、排泄物で汚れたおむつを長時間着用している場合も皮膚の炎症を引き起こしやすいため、おむつ交換や排泄のタイミングを見計らって行うようにしたり、交換から次の交換までが長時間になりすぎたりしないよう気をつけましょう。交換後は、皮膚の状態も合わせて確認します。

シーツは清潔でピンと張った状態に

ベッドにずっと寝たままでいると、どうしても汗・油分・垢などでシーツや枕カバーが汚れてきます。定期的に交換して清潔な状態を保つとともに、シーツにはしわができないよう、ピンと張った状態のものと交換しましょう。高齢者は皮膚の張りも少なくなっていることから、小さな布のしわでも自重で圧迫され、床ずれの原因となってしまうのです。

おわりに:体位変換は寝返りと同じように、生きていく上で大切なこと

体を自由に動かせる人では、昼間に活動しているときも、夜に寝ているときも、頻繁に体の向きを変えたり、姿勢を正したり、関節を動かしたりしています。これは、さまざまな方向からの圧力を受け流したり、体温調節をしたり、内臓機能を助けたりするためです。

ですから、寝たきりの人でも同じように、体位変換を行わなくてはなりません。本人に声かけを行いながら、介助者自身が体を痛めないよう、正しい手順で行うことが大切です。

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