認知症が進行すると、食べ物を認識できない、道具をうまく扱えない、集中できないなどの理由から徐々に食事をとることが難しくなってきます。
そこで今回は、認知症患者に食事をとらせるための環境整備について、介護する側ができることや環境づくり、声掛けのコツなどをご紹介します。
認知症の人の食事の目標って?
食事の目的は「生きるのに必要な栄養を摂取すること」、そして「食事を通して、生活の時間を裕にすること」の2点です。
通常、私たちは上記2つの目的を満たせるよう、食事の内容やとり方を調整しています。
しかし、認知症を発症し認知機能が低下すると、過食や拒食、極端な偏食に陥って適切に栄養を摂取できなくなったり、食事を通したコミュニケーションが難しくなってきます。
自分の力だけで食事を用意して食べることが難しい認知症の人の場合、周囲で介助・介護する人が、認知症患者が食事の目的を達成できるよう配慮してあげる必要があります。
認知症患者の食事のために、介助・介護する周囲が目標とすべきポイントとしては、以下の2点が挙げられるでしょう。
介助・介護する側が、認知症の人への食事において目標にすべきこと
- 認知症患者が、食事で「生きるのに必要な栄養を摂取する」ために
- 必要な栄養・適性カロリーに配慮し、栄養失調や病気を予防する食事内容の提供
- 認知症患者が、食事で「食事を通して、生活の時間を裕にする」ために
- 食事がおいしく、楽しいものと認識できるような食事空間・時間の提供
次項からは、特に認知症の人の食事を楽しく豊かなものにするために、周囲ができる環境づくりのコツを見ていきましょう。
食事のときの環境作りのコツとは?
認知症の人に楽しく食事をとってもらうには、とにかく本人が落ち着いて、安心して食事できる環境を整えてあげることがコツです。
認知症発症前の本人の食事習慣に配慮し、現在の食事中の様子をよく観察したうえで、以下を参考に落ち着ける食事環境を整えてあげてください。
日常的に1人で食事をする習慣があった人には…
大人数が集まる食道ではなく自室、または個室で食事を提供する、または他の人と食事時間をずらすなどして、静かに食事できる環境を整えてみましょう。
家族または知人と、大勢で食事する習慣があった人には…
大勢でテーブルを囲んで食事できるよう、食事の時間や場所を工夫してみましょう。
場所が気に入らず、食事に集中できないようなら…
いま食事しているところよりも広い部屋、または狭い部屋、屋外や景色の見える部屋など、本人の意見を聞きながら食事する場所を変えてみましょう。
場所を変えることが難しい場合は、テーブルの上に花瓶やコップを置いて花を生けるだけでも、その場の雰囲気を変えることができますよ。
食事姿を見られることに、ストレスを感じるようなら…
自分や他人の食事マナーが気になったり、食べている姿を見られることに抵抗を感じているようなら、少人数または1人で食べられる席に変えてあげましょう。
一緒に食事する相手と、相性が良くないようなら…
認知症の患者さん同士、また介助・介護をする職員とも、相性の問題はあります。
一緒に食事をする相手との相性が合わず、食事を楽しめないようなら、食事するメンバーや人数を調整して様子を見ましょう。
食事中はどのくらい声をかけてあげればいい?
認知症になると、食事中に介助や支援が必要になる人も少なくありません。
しかし一生懸命食事している認知症の人にとって、必要としないときに支援の声掛け・手出しをされることは、ストレスにもなり得ます。
食事中は認知症患者の隣に座るか、隣に座られるのを嫌がるようなら周囲で待機して、本人の食べるペースに合わせ以下のタイミングで声掛けをすると良いでしょう。
- 食事の進みが遅くなってきたとき、料理の味や見た目など、食欲をそそる声掛けをする
- 咳き込んだりきょろきょろするなど、本人が支援を必要とするのを見計らって声掛けする
- 本人の人柄によっては隣で一緒に食事し、家族のように会話しながら声掛けする
おわりに:認知症の人にとって食事が楽しい時間になるよう、環境を整えて
食事は生きるための栄養を摂取するためのものであると同時に、日々の生活に楽しみや豊かさを与えてくれるものでもあります。認知症の人が、これらの食事の目的を達成できるようにするには、周囲で介助・介護する人が食事の内容と環境を整えなければなりません。本人のもともとの食事習慣や現在の食事の様子を観察して配慮し、食事する場所や時間帯、雰囲気を工夫して、安心して楽しく食事できるようにしてあげてくださいね。
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