最近は「老後もひとり、賃貸派」を公言する人も増えてきています。ただ、高齢者のひとり暮らしが賃貸を続けられるか不安に思っている人もいるのではないでしょうか。また、戸建てはひとりで管理しきれないから売却を考えているけど、売ってしまった後が不安というひいともいるでしょう。マンションにすればいいか、サ高住にすればいいか、悩んでいる人もいるかもしれません。
今回は、ひとり暮らしの老後の住まいについて、それぞれのメリット・デメリットを解説していきます。後悔のない選択のための参考にしてください。
ひとり暮らしの老後、住まいを探すのは大変?
40代、50代の持ち家率が低下している反面、住宅余りは解消に向かっているといわれています。持ち家率の低下は、景気の影響や考え方の変化によるものが大きいと予想されますが、住宅余りが解消に向かっている理由はどこにあるのでしょうか。
あくまでも予測の範囲ではありますが、新築の戸数が減っていること、古い住居が取り壊されていること、空き家対策が順調であることなどが理由として考えられます。
つまり、数年前までは家が余り気味でしたが、今はその傾向が低くなっているということです。マンションや戸建てなど「自己の住まい」を所有している人は良いですが、老後も賃貸を続けるつもりの人は、お部屋探しに苦労する可能性があります。
また、戸建てや広めのマンションを持っているが、1人では広すぎるので売却して新しい手狭なマンションを購入するか、賃貸しようと考えたときも注意が必要です。以前に比べて高齢者のひとり暮らしでも部屋を探しやすくはなりましたが、貸し渋りの例はまだまだあります。
老後のひとり暮らしが住み替えるときは、それぞれのメリットとデメリットをきちんと理解し、納得したうえで行動に移すようにしてください。
老後におけるマンションのメリット・デメリット
老後に自己所有のマンションに住むことのメリットとデメリットは以下の通りです。
- メリット
- 監視カメラや管理人、オートロックなどがある物件であれば、セキュリティ性が高い
- 戸建てに比べるとコンパクトなので、生活がしやすい
- 庭や階段など、共用部のお手入れや管理をまかせられる
- 利便性が高い場所にあることが多いので暮らしやすい
- 積立は必要だが、改修・修繕をある程度まかせられる
- 戸建てよりも売却するときに手間がかからない
- デメリット
- 生活音や生活時間帯などについては、戸建てよりも周囲の住人への配慮する必要がある
- 住宅ローンの支払終了後も、毎月の支払いが発生する(管理費、修繕積立金など)
- 古くなるにつれて管理費や積立修繕費が高くなることがある(毎月の支払い金額が増える可能性がある)
- 災害時に、避難が難しくなることがある(とくに高層階)
自分にあったスペースで暮らすことができますし、安全性や利便性が高いところが多いので、ひとり暮らしの高齢者にマンションはおすすめといえるでしょう。最近は、中古物件でもバリアフリーを進めているところも増えてきていますので、そういった物件を選ぶことをおすすめします。
ただし、毎月の支払いが必ず発生するうえに、長く住むにつれ毎月の負担が増える可能性があることは理解しておきましょう。また、災害時にパニックにならないようにするために、避難経路などはきちんと確認しておきましょう。
老後における戸建てのメリット・デメリット
老後に戸建てに住むことのメリットとデメリットは以下の通りです。
- メリット
- ローンが終われば資産となる(担保や賃貸収入に使える)
- ローンが終われば毎月決まった出費は必要なくなる
- リフォームなどは自分のやりたいようにできる
- ペットの飼育や家庭菜園なども比較的自由に楽しめる
- デメリット
- ひとり暮らしには広すぎてお手入れが行き渡らない
- 孤独感が強くなりやすい
- 庭や玄関、階段、水回りなどのお手入れが大変
- 修繕、改修は自分で手配する必要がある
- 修繕費など、大きな出費は自分で用意しなければいけないので、計画性が必要
元気なうちは戸建てでも良いですが、体力が落ちて活動範囲が狭くなると、ひとり暮らしに戸建ての広さは手に余るようになります。マンションと比べるとセキュリティ面の不安もあるので、自身で対策を講じる必要がありますし、修繕費などの積立も自分で計画的に行わなければいけません。売却を考えたときも、成立しにくい傾向があります。
ひとり暮らしの老後で賃貸を選択するべき?
以前は賃貸契約に連帯保証人が必須でしたが、現在は高齢者も対応可能な保証人不要賃貸物件も増えてきています。賃貸は、月々の家賃や更新料がかかりますが、共用部や付帯設備のメンテナンスは管理会社がやってくれますし、最低限の費用は家賃に含まれていますので自己所有に比べると煩わしさがありません。
ただし、必ず継続した費用が発生しますので、老後の収入の確保が必要です。人生百年時代ともいわれていますので定年後も就労先はあるかもしれませんが、健康面のことを考えるとリスクを避ける対策は必要でしょう。
借り上げ制度の利用も
自己所有の戸建てやマンションを借り上げ、他の人に賃貸して、安定収入を保証する制度「マイホーム借り上げ制度」があることを知っていますか。
これはJTC(一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)が行っている事業であり、この制度を使うことで、自己所有の戸建てやマンションを売却することなく安定収入を得られるようになります。
所有物件を売却して賃貸の支払いにあてると、資産を管理する必要がありますし、資産はどんどん目減りしていきます。すでに戸建てやマンションを所有しているが、管理が楽な賃貸に引越しを考えている人にはおすすめの制度です。
サ高住とシニア向け分譲マンションの利用も
サ高住とは「サービス付き高齢者向け住宅」のことで、2011年に作られたシニア向けの賃貸住宅のことです。バリアフリー構造が義務化されているので、高齢者でも暮らしやすく、安否サービスや生活相談などが受けられ、施設ごとに独自のサービスが提供されています。介護サービスに関しては個別の契約が必要になりますが、要介護者でも入居可能なところもあります。
シニア向け分譲マンションは、バリアフリー構造が義務化されていませんが、クリニックや訪問介護サービスを併設することで、高齢者がより暮らしやすくなるように工夫されているマンションのことです。義務化はされていませんが、バリアフリーに配慮した工夫をしているところも少なくありません。
サ高住は「賃貸」、シニア向け分譲マンションは「自己所有」ということが大きな違いですが、それぞれ民間事業者が運営しているため、温泉付き、アクティビティが充実している、自然を楽しめる、シティライフを楽しめるなど、施設ごとでサービスや特徴に違いがあります。
おわりに:必要なサービスを使いながらメリットを最大限利用するのがポイント
ひとり暮らしであっても、老後であっても、毎日の生活は楽しめるものであったほうが良いです。戸建て、マンション、自己所有、賃貸、それぞれメリットとデメリットがあります。特徴をしっかり理解し、自分の状況にあったサービスを利用しつつ、メリットを最大限享受できるように工夫するのが、ひとり暮らしの老後を楽しく安全に過ごすポイントになります。お金のこと、住まいのことは、大きな決断になりますので、専門家に相談しながら後悔のない選択ができるようにしましょう。
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