高齢化と核家族化が進む日本では、配偶者との離別等により、一人暮らしをする高齢者が年々増えています。そして、一人暮らしの高齢者にとって大きな問題になっているのが「賃貸アパートやマンションをなかなか借りられない」ことです。この問題と解決策をご紹介していきます。
一人暮らしの高齢者が賃貸を借りられない理由
持ち家を持たない高齢者は、住んでいる賃貸住宅の建て替えを機に立ち退きを求められたり、また収入の問題から家賃の安い物件を探したりすることがあります。配偶者の離別で一人暮らしになり、小さめの間取りの物件への入居を考える高齢者も少なくありません。
そこで新たに賃貸住宅を借りようとしたとき、よく起こるのが「入居審査や内見の時点で断られる」事態です。日本賃貸住宅管理協会の調査によれば、一人暮らしの高齢者が部屋を借りることについて、大家の約6割が拒否感を持っているとの結果も出ています。
この理由については、主に下記の2つが挙げられます。
金銭的な懸念
高齢者の多くは既に仕事を辞めており、主な収入源は年金です。すると大家側は「家賃を滞納するのでは」というリスクを想定します。もし家賃を滞納された場合、年金暮らしの高齢者から回収することは非常に難しくなるので、リスク回避のために入居を断ることがあります。
孤独死の懸念
一人暮らしの高齢者に伴うのが、「孤独死」の懸念です。突然部屋の中で亡くなってしまった場合、長期間誰も気づかず、発見された時は遺体の損傷が進んでしまうケースがあります。
特に事件性があるわけではありませんが、「人が亡くなった」点や、「遺体の放置期間によっては、特別な清掃が必要になる場合がある」点から、物件自体の資産価値が低下することが想定されます。
すると次の入居者がなかなか入ってこないリスクもあるため、大家としては一人暮らしの高齢者の入居に消極的になりがちです。
一人暮らしの高齢者が賃貸を借りるには?
年金暮らしであること、収入が乏しいこと、孤独死の可能性があることなどから、一人暮らしの高齢者の賃貸入居は難航しがちです。
では、入居審査に通りやすくするには、どのような工夫が必要なのでしょうか?
連帯保証人を立てる
可能であれば、現役で働いている子供など家族に連帯保証人になってくれるよう頼み、サポートしてもらうのが理想的です。それが難しい場合は、一般財団法人高齢者住宅財団が実施している「家賃債務保証」制度を利用するのも手でしょう。
家賃債務保証を利用すれば、上記財団と提携した保証会社が、借り主の連帯保証人に近い役割を果たしてくれます。万が一家賃を滞納した場合、保証会社が一定範囲内立て替えてくれるという制度です。
子供の家の近くに住む
子供の家が近くにあり、あくまで「第二の住宅として」賃貸に住みたいというアピールが有効な場合があります。ご家族が近くにおり、頻繁に訪問し合う関係性が築けていれば、一人暮らしの高齢者が突然倒れたりしたときに気づくスピードが大分早くなるからです。
この点をアピールすれば、大家にとっての懸念点が少し減り、物件を借りられる可能性が上がることもあります。
シニア向けの賃貸物件を探す
近年は高齢者向けの賃貸物件の需要が高まっているため、シニア入居可の物件も増えつつあります。一例として挙げられるのが、高齢者向けの優良賃貸住宅や特別設備改善住宅、シルバー住宅などの、UR賃貸住宅が展開している支援制度です。
これらのシニア向け賃貸は、一般向けの賃貸アパート・マンションと比べ、バリアフリー設備が整っていることから、高齢者の転倒やケガのリスクが低減されるのが魅力です。また、物件によっては食事サービスや、ケアの専門家から安否確認訪問を受けられる等のメリットもあります。
ただ、こういったシニア向け有料賃貸は家賃が割高というネックがあります。
高齢者向けの公営住宅
UR賃貸では家賃が高いという人にとっては、自治体が運営している市営住宅などの公営住宅が選択肢になるでしょう。高齢者向けの公営住宅は基本的にバリアフリー仕様になっており、家賃負担も比較的安く済みます。
しかし、申し込み者が非常に多いため、簡単に入居するのができないのが現状の課題点です。
一定の条件を守れば、一般向け賃貸に住めることも
家庭の事情や経済的理由から、シニア向け賃貸に住めず、入居先がなかなか決まらない高齢者も少なくありません。
ただ、日本では高齢者向け賃貸の需要がかなり高まっているのが現状です。高齢者の入居を断ることで空き部屋が増え、家賃収入が乏しくなってしまうことも大家にとっては好ましくありません。
そこで近年では、一般向け賃貸物件の大家でも、下記の賃貸契約を結ぶことを条件に高齢者の入居を許可するケースも増えつつあります。
「見守りサービス」への加入
「見守りサービス」とは、遠くに住む家族の代わりに高齢者の安否を確認し、サポートしてくれるサービスです。事業者によってサービスは様々ですが、一例としては、定期的な安否確認の電話に出たり、プッシュボタンで体調について応答したりするシステムがあります。これによって高齢者の異変に早期に気づくことができ、孤独死のリスク回避につながります。
サービス費用は高齢者自身が負担することにはなりますが、加入を条件に入居を許可する大家も増えてきています。
一定期間連絡がつかない場合、警察立会いのもと安全確認を行う
一人暮らしの高齢者の孤独死を防ぐための条件になります。
室内で突然高齢者が倒れてしまった場合、できる限り早く発見することが大家側にとって非常に重要です。そこで、「◯日以上電話連絡がつかない場合、警察立会いのもと、室内の安全確認を行うことに同意する」という条項を契約書に盛り込むケースも増えています。
抵抗感を覚える人もいるかもしれませんが、異変に早く気づいてもらうことは高齢者自身のためにもなります。
おわりに:賃貸探しで苦労する前に、事前の心づもりを
超高齢化社会と呼ばれる日本では、年々一人暮らしの高齢者向け賃貸の需要が高まりつつあります。近年は人感センサー型の「見守りサービス」も開発されており、これを導入することで高齢者でも入居可能な物件は徐々に増えていくことでしょう。ただ現状では、そこまで取り入れた物件数はまだ少ないため、高齢者自身も早めに入居先を見据えて準備しておくことも大切です。
コメント