高齢になると、一人で外に出て買い物や通院を行うのも簡単なことではありません。そこで、外出や通院に付き添い、介助することを「外出介助」や「通院介助」と言います。これらの介助は頻繁に行うため、すべて自己負担となると出費も少なくありません。
そこで、外出介助と通院介助は、どこまでどのように介護保険が適用されるのか、詳しくご紹介します。利用したいと思っている人は、ぜひチェックしてください。
外出介助って?
外出介助とは主に訪問介護で行われるサービスで、一人で通所(デイサービス)や通院、気分転換のための外出などができない人のために外出の手助けをすることを言い、車椅子への移乗やトイレ介助、付添いなども外出介助に含まれます。お花見や音楽鑑賞などのイベントごとにも、付き添って介助を行います。
デイサービスや通院なども含め、外出はなにかとこもりきりになりやすい高齢者にとって生活の潤いにもなりますので、笑顔が増えたり気持ちが明るくなったり、元気になったりといったプラスの効果が見込まれます。最近では、運転や乗降の介助も行う「介護タクシー」も増えてきていて、近隣の買い物・通院・外食などさまざまな用途に使われています。中には、車椅子に乗ったまま乗降できる専用車が用意されていることもあります。
外出介助は介護保険を使えるの?
上記のように本人にとってメリットの大きい外出介助ですが、外出の際に受ける介助がすべて介護保険の適用対象となるとは限りません。介護保険の適用となるのは「日常生活上の必要性が認められる、通院や日用品の買い物などのための外出介助」と決められています。具体的には、以下のような用途であれば「外出介助として適切なサービス例」として認められます。
- 通院(原則として、病院内での介助を除く)
- 日用品の買い物
- 選挙の投票
- 官公署への届け出(原則として、郵送できないもののみ)
- 通所介護(デイサービス)の事業所や、介護保険施設の見学
- 家族へのお見舞い(ただし、あまりに頻繁な場合は除く)
つまり、基本的には「日常生活の上で、外出しなくてはならない範囲」ならば介護保険が適用されると考えて構いません。例えば、「居宅→病院などの目的地→スーパーなどの目的地→居宅」のように、必要の範囲内なら複数の目的地に立ち寄ることもできます。一方、日用品以外の趣味の買い物や、外食などは日常生活における必要範囲内の外出ではないと考えられますので、介護保険の適用対象とはなりません。
しかし、散歩の付き添い・介助については、「自立生活支援のための見守り的介助(自立支援や日常生活動作の向上という観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守りなど)」に該当し、算定の要件をすべて満たす、と認められた場合のみ、介護保険の適用対象となる場合もあります。
一方、外出介助として認められない、不適切であると考えられるサービス例は、以下のようなものです。
- 日用品以外の買い物や外食
- 通勤
- 趣味や嗜好のためだけの外出(ドライブ・カラオケ・観劇など)
- 冠婚葬祭への出席(結婚式・法事・葬式・お墓参りなど)
- 地域の行事への参加(お祭りなど)
もちろん、これらの外出介助は保険の適用とならないだけで、本人が希望するなら活動量をアップして脳や体を活性化させるためにも、行動自体はどれも推奨されることです。介護保険の適用範囲外であっても、サービス自体を行っているところはたくさんありますので、行きたいことややりたいことがあるなら、ぜひ探してみましょう。
通院介助も介護保険を使える?
医療機関への通院も、高齢者の病気改善や健康維持のために欠かせない行為であることから、必要の範囲内として介護保険の適用対象となります。とくに訪問介護における通院介助の場合、「居宅から病院へ、病院から居宅へ」という一連の流れがサービス行為として認められるため、逆にその途中で映画やカラオケなど、必要のない場所に立ち寄ることはできません。
ただし、「病院内での介助」「受診中の待ち時間」「入退院の付き添い」などは、介護保険のサービスには含まれません。病院内での介助は医療保険の適用となるサービスですから、基本的には着いた先の病院のスタッフが対応しますが、心身状態が悪い人や認知症の人など、ケアプランによっては介護保険の対象に含まれることもあります。院内での待ち時間や診療室内の付き添いなど、院内での付き添い行為だけを算定することもできませんので、注意しましょう。
入退院の付き添いは原則として家族が対応するべき範囲とされていますので、介護保険のサービスの対象外となりますが、家族の対応が難しい場合は、保険適用とならない別のサービスを利用することができます。また、入院中に介護保険サービスを利用すると、介護保険が適用されず、全額自己負担となりますので注意しましょう。ベッドや福祉器具などをレンタルしている場合は返却しなくてはなりませんので、まずは担当のケアマネジャーに相談しましょう。
逆に、徒歩・車椅子・公共交通機関(バスや一般のタクシーなどを含む)を利用して通院・外出介助を行う場合は、介護保険の対象となります。ただし、これらの交通機関の利用料金は本人の負担となりますので、注意が必要です。介護タクシーなどを利用することもできる場合がありますので、利用したい場合はケアマネジャーなどの専門家に相談してみましょう。
介護タクシーとは、要介護度1以上の人が対象で、必要性がある場合のみ、ケアプランに位置づけた上で利用できるものです。訪問介護員(介護職員初任者研修以上)の資格を持った運転手が、本人の乗降や移動の介助を行ってくれるタクシーで、乗降などの介助が介護保険の対象となります。ただし、運賃自体は自己負担となりますので、注意しましょう。
もちろん、介護保険の適当とならない場合でも、介護予防・日常生活支援総合事業やボランティア事業、その他にもさまざまなサービスを利用できる場合があります。利用したいけれど利用できるかどうかわからない、という場合は、ぜひ担当のケアマネジャーに一度相談してみてください。
おわりに:外出介助や通院介助は、必要の範囲内のみ認められる
外出介助や通院介助が介護保険の適用となるのは、日常生活を送る上で必要の範囲内とされる外出に限られます。日用品や食材・惣菜の買い出し、定期通院などはもちろん必要の範囲内ですが、観劇やカラオケなどの趣味の外出は介護保険の適用となりません。
とはいえ、介護保険の適用とならないだけで、他に利用できるサービスもあります。外出は良い気分転換にもなりますので、ぜひ一度担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
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