移乗介助をうまくするには、どんなことに注意すればいい?

介護

足腰の衰えや筋力の低下によって、ベッドから自力で立ち上がれない人は、ベッドから車椅子に移動するための「移乗介助」を受けなくてはなりません。そのため、介護職の人や在宅介護を行っている人にとって、非常に多い動作の1つと言えます。

しかし、移乗介助は頻繁に行うにも関わらず、介護者への負担も大きい動作です。そこで、移乗介助をうまく行うために重要なポイントについてまとめました。

移乗介助するときに心がけることは?

移乗介助は、ベッドから車椅子へ、そして車椅子からベッドへの移動の際に行うため、頻繁に行うにも関わらず介助者の身体的な負担が多い動作です。移乗介助が原因で腰痛になったという人も多く、さらには転倒などのリスクも伴いますので、ある程度のスキルが必要です。そこで、まずは腰への負担を軽減することを心がけましょう。

腰への負担を減らすには?

まず「長時間、20度以上の前かがみの姿勢で作業しない」というポイントをおさえましょう。前かがみのまま作業を行うと、腰への負担が大きくなり、腰痛の原因となります。とくに、自分の腰より低い位置で作業する場合、背中は伸ばしたままひざを曲げて作業するのが良いでしょう。ベッド上で行う作業の場合は、ベッドの高さを上げて前かがみにならないようにするのがおすすめです。

背筋を伸ばしたまま介助するためには、ときに利用者のベッドにひざをつく必要がありますが、これを可能とする施設はまだ少ないようです。利用者宅に訪問して行う訪問介護の場合はさらに難しいですから、前かがみになる動作の時間をできるだけ少なくすること、ひざを曲げることで代替できる作業は背筋を伸ばしてひざを曲げて行うことから始めましょう。

また、腰痛予防のためには、介護を行っている以外のとき、日常生活全般の動作で腰に負担をかけないことも重要です。皿洗いや掃除などの家事、パソコンの作業など、さまざまな動作で背筋を伸ばし、腰を曲げないよう気をつけましょう。

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相手の能力を引き出すには?

介助の基本的な考え方として「相手(利用者)の能力を引き出す」というものがあります。相手に伝わるコミュニケーションをし、相手の能力を引き出す部分介助を行い、全介助を行うときにはできるだけ福祉器具を利用する、というものです。この3つのポイントについて、さらに詳しく見ていきましょう。

相手に伝わるコミュニケーション
丁寧すぎたり、言葉が多すぎたりすると伝わらない場合も
「今日は何年何月何日ですか?」が無理でも、「今日は何月何日ですか?」なら大丈夫なこともある
相手に伝わるコミュニケーションだけで、介助しやすくなることも多い
お互いに不快な思いをしないためにも、まずその人に合わせたコミュニケーションを心がけよう
相手の能力を引き出す部分介助を
「どうすれば引き出せるのか」を中心に考える
足を少し引くと力が入れやすくなる、片麻痺でひざが開くなら横から押さえるなど
すぐに全介助に移行せず、相手の能力を引き出す部分介助のための試行錯誤が重要
全介助にはできるだけ福祉器具の利用を
部分介助でもどうしても難しければ、全介助を
全介助は介護者の負担が大きくスキルも必要なため、安全面でリスクが大きい
リフトやスライディングボードなど、できるだけ福祉器具を利用する

相手とコミュニケーションをとることで、スムーズな介助をしやすくなります。さらに、足腰が弱っている人であっても、身体の位置を変えたり押さえたりといったサポートを行えば、全介助でなくても部分介助で済むことも多いです。できれば、リスクの高い全介助を介護者一人で行うことは避け、部分介助か福祉器具を使った介助を行いましょう

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移乗介助前には、どんな準備をしておけばいい?

移乗介助は大きな動作になりますから、周辺の環境や車椅子の準備をしっかりしましょう。環境では、ベッド上で介助を行う範囲のサイドレールを外したり、布団をベッドの外に置いたりして、移乗介助の邪魔にならないようにしておきます。また、利用者の足が滑らないよう、リハビリシューズを履いてもらいましょう。

車椅子の準備も重要です。介助の邪魔にならないよう、アームサポートを上げ、フットサポートを外し、ブレーキをしっかりかけておきます。ただし、お尻が車椅子に当たらないくらい立ち上がれる利用者の場合は、アームサポートはそのまま、フットサポートとブレーキの準備だけで構いません。

これらの準備を介助中に行うのは難しいだけでなく危険なため、必ず介助前にすべての準備を終えておきます。また、毎回でなくても構いませんが、ブレーキの効きやタイヤの空気が抜けていないかも適宜チェックしましょう。

実際に移乗介助するときの手順は?

最後に、実際に介助するときの手順を見ていきましょう。できるだけ腰に負担がかからないような基本の全介助についてご紹介しますので、普段全介助を行っている人はぜひ、自分の動作と比べてチェックしてみてください。

ベッドから車椅子に移乗するには?

まずは、ベッドから車椅子への移乗方法をご紹介します。

車椅子を寄せ、ベッドを車椅子より高くする
まず、移乗介助をするという声かけを、しっかり利用者に伝わるよう行う
アームサポートを上げてフットサポートを外した状態の車椅子をベッドの近くに寄せ、しっかりブレーキをかける
ベッドの高さは、車椅子の座面よりやや高くなるように調節する
※車椅子とベッドの角度は、約30度にする
起き上がり介助をする
起き上がり介助を行い、利用者がベッドの端に座っている状態にする
浅座りにし、利用者の車椅子側の足を半歩前へ
スムーズな移乗のために、重心を前に移しておくと良い(※難しければ、無理はしない)
利用者に浅く腰掛け直してもらい、足がしっかり床につくようにする
移乗時に足が絡むのを防ぐため、利用者の車椅子側の足を半歩前へ
※足を出すのが難しい場合、無理はしなくてよい
足を開いて立ち、利用者を支えながら車椅子を寄せる
介助者は両足を開き、腰を落とした状態で立つ
左手を利用者の肩に、左足を利用者の右ひざに当て、利用者を支える
車椅子の角度を変えず、空いている右手で引き寄せる
※前かがみにならず、自分の腰をひねらず移乗できるため、腰への負担軽減につながる
利用者を前傾姿勢にさせる
利用者のわきの下や肩甲骨あたりに手を当て、若干利用者の左足の方へ意識しながら前傾姿勢にさせる
重心が足部に移動し、ベッドとお尻の間にある圧が減って前方へ滑り出す
ひざを利用者のひざに当ててアシストしながら、車椅子へ
利用者のお尻が滑り出したら、自分の左ひざで利用者の右ひざを少し押しながらスライドするように車椅子へ移乗する
※持ち上げず、スライドするように移乗することで、腰への負担軽減になる
深く腰かけ直し、背もたれとの隙間をなくす
移乗したら、車椅子のアームサポートを戻して利用者の姿勢を整える
深く座れていなければ、背もたれとの隙間がなくなるよう座り直しの介助を行う
座り直しても身体が傾く場合、クッションやタオルなどを入れて安定した姿勢を保てるようにする
フットサポートを装着し、フットサポートに利用者の両足を乗せて終了

ベッドに起き上がってもらった後、座り直しができるようなら、以下のような手順で浅く座り直してもらいましょう。

  1. 左側のお尻を動かすため、利用者の身体を右側へ傾けて左側のお尻を浮かせる
  2. お尻が浮いたら、左側の腰に手を当てて手前に押し、滑らせる
  3. 右側のお尻も同様に滑らせることで、前方へ移動し、浅座りになる

車椅子からベッドへ移乗するには?

車椅子からベッドへの移乗は、前述のベッドから車椅子への手順を逆に行うのが基本です。具体的には、以下のように行いましょう。

ベッドの高さを車椅子よりやや低めに
利用者に声かけをし、車椅子のフットサポートを外してベッドの近くに車椅子を寄せる
移乗しやすいよう、ベッドが車椅子の座面よりやや低くなるように高さを調節する
足が絡まないよう、利用者のベッド側の足を半歩前へ出す
※足を出すのが難しければ、無理はしなくてよい
前傾姿勢にさせ、ベッドへスライドする
アームサポートを上げ、利用者のわきの下や肩甲骨あたりに手を添えて上体を倒す
前傾姿勢にさせて車椅子とお尻の圧が減ったところで、右ひざで利用者のひざの外側を少し押してアシストしながら、スライドするようにベッドに移乗する
利用者が倒れないよう、手を離さない
ベッドに寝る場合、横向きに寝かせてから仰向けにするか、ギャッチアップでベッドの上部を上げてベッドに寝かせる
ベッド上の身体の位置を調節し、かけ布団やサイドレールを戻して終了
※ギャッチアップした場合は摩擦が起こるため、背抜きを忘れないように

移乗介助を全介助で行うときのポイントって?

全介助で移乗介助を行う場合、「利用者を前傾姿勢にする」「足をしっかり開き、ひざを軽く曲げて立つ」という2つのポイントが重要です。まず、利用者を前傾姿勢にするのはお尻の圧を減らすためで、前方へ滑り出したタイミングでスライドするように移乗すれば、持ち上げる動作が必要ありません。介助者の負担が大きく軽減されます。

「足をしっかり開き、ひざを軽く曲げて立つ」のは、腰への負担を軽減するためです。前かがみの姿勢では腰に大きな負担がかかりますので、背筋をまっすぐにした状態で足をしっかり開き、腰を落としてひざを軽く曲げて立ちましょう。また、前かがみにならないことを意識しすぎて背中が反った状態になるのも腰への負担となりますので、注意しましょう。

おわりに:移乗介助は、腰への負担をかけないように行うことが大前提

移乗介助は、介護者にとって非常に大きな身体的負担がかかる動作でありながら、日常的に頻繁に行われる動作の1つです。そこで、まずは腰に負担をかけないよう、できるだけ福祉器具を使ったり部分介助にしたりするのが良いでしょう。

どうしても全介助を行うときは、前かがみにならないよう足をしっかり開き、ひざを軽く曲げて背筋を伸ばして立ちます。背中が反ってしまうのも腰痛の原因となるため、注意しましょう。

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