認知症の症状が進んでくると、トイレ関連のトラブルも増えてきます。トイレが見つからない、動作が間に合わないなどで失禁が増えてくると、介護者にとっても大きな負担となるため、介護おむつの導入を検討する時期ではないでしょうか。
そこで、認知症の人のための介護おむつにはどんなメリット・デメリットがあるのか、種類や選び方などについてご紹介します。介護おむつを考え始めたら、ぜひ一度チェックしてみてください。
介護おむつにもメリットとデメリットがある?
介護おむつとは、認知症の患者さんをはじめ、介護が必要な人のための大人用紙おむつのことです。「トイレに間に合わず、よく失禁してしまうようになった」「認知症の症状が進み、トイレに自分で辿り着けなくなった」などの排泄のトラブルを防ぐために使われます。介護おむつの購入費用は医療費とみなされますので、「6ヶ月以上寝たきりである」「医師におむつの使用を認められている」など、一定の条件を満たせば医療費控除の対象になることもあります。
介護おむつのメリットとデメリットには、以下のようなものがあります。
メリット
- 介護される人にとってのメリット
- 失禁に対する不安が軽減される
- 外出の際の不安が軽減され、活動的になれる
- トイレ移動や下着の着脱といった動作の負担が軽減され、転倒しにくくなる
- トイレのたびに起きなくてもよいため、安静・安眠を保てる
- 介護をする人にとってのメリット
- トイレ介助の負担が軽減される
- トイレ介助のたびに起きなくてもよいため、安眠が保たれる
デメリット
- 介護される人にとってのデメリット
- 自尊心が傷つけられる
- 皮膚のかぶれや床ずれを起こす
- 介護おむつに対してネガティブな印象があると、引きこもりや食欲不振につながることも
- 姿勢が崩れやすくなるため、嚥下障害などをまねく恐れがある
- 自力でできることが減り、残存能力の低下につながる
- 介護をする人にとってのデメリット
- 費用面での負担が増える
- 介護される本人の要介護度が上がる可能性がある
このようなメリットとデメリットを考えた上で、使用するかどうかの判断をしていきましょう。
介護おむつにはどんな種類があるの?
介護おむつは、赤ちゃんの紙おむつのように1枚だけで使うのではなく、アウターとインナーを合わせて使うのが基本です。まずは、それぞれの種類を見ていきましょう。
介護おむつのアウターにはどんな種類があるの?
アウターには、大きく分けて以下の3つの種類があります。
- パンツタイプ
- 下着のように履くタイプの介護おむつで、おむつに抵抗がある人でも履きやすい
- 寝たままの状態で使うと横モレしやすいため、注意が必要
- 目立ちにくい薄型のタイプと、吸収力のある厚手のタイプがある
- 薄型は排尿1〜2回分、厚手は排尿4〜5回分程度を吸収できる
- テープタイプ
- ウエスト部分にテープがついているタイプの介護おむつ
- 寝たままの状態でも交換できるが、他のタイプに比べて比較的高価
- 薄手〜厚手までさまざまだが、平均して排尿2〜4回分程度を吸収できる
- ベルトタイプ
- おむつのウエスト部分にベルトがついていて、腰にぐるりと固定できる
- ベルトで簡単に着脱できるので、立ったままでも座ったままでも装着しやすい
- 販売しているメーカーが少ないのがデメリット
- パンツタイプとテープタイプの中間程度の形状で、排尿5〜6回分程度を吸収できる
このほか、おむつとはやや異なりますが、吸収布つき失禁パンツなど、紙おむつに抵抗があり、まだ排尿トラブルがそこまで多くない人向けの下着もあります。
介護おむつのインナーにはどんな種類があるの?
インナーには、吸収量によって以下の2種類があります。インナーは基本的にアウターに合わせて選ぶことになりますので、アウターを先に選び、アウターに合ったインナーを選びましょう。
- 尿とりパッド
- パンツタイプやテープタイプの内側に入れて使うパッド型の介護おむつ
- アウターとインナーを併用すれば、基本はパッドのみの交換でOK
- おむつ交換の手間がぐっと楽になり、外出時にもパッドだけを持ち歩けばよいので荷物が少なくなるメリットがある
- 長時間(高吸収)パッド
- 尿とりパッドの高吸収バージョンで、通常の尿とりパッドよりも吸収率がよい
- 便なども横モレしにくくなっていることから、日中長時間使いたいときや、夜間に適している
男性用にろうと状にできるパッドや、多量の尿や夜間にも対応しやすいギャザータイプなど、インナーは形状がさまざまです。肌に直接触れる部分ですから、ぜひ本人が一番使いやすいものを選びましょう。
介護おむつの選び方は?
介護おむつ(アウター)の選び方は、機能性以外にも以下のように介護される本人の「介護度」「体型」「好み」などを考慮して選ぶと良いでしょう。
- 介護度
- 自分でトイレまでは行ける、立ったり座ったりできる、という場合はパンツタイプがおすすめ
- 寝たきりである、自力で移動できないなど全面的な介護が必要な場合は、寝たままでもおむつ交換できるテープタイプがよい
※まだほとんど自力で排泄できているのに、介護おむつを強要すると、残存能力が低下し、認知症の急速な進行にもつながるので、専門家に相談するなど見極めが必要
- 体型
- 皮膚のかぶれや床ずれ、横モレを防ぐため、最適なサイズを選ぶ
- パンツタイプなら、ウエストのフィット感を基準に選ぶ(大きめは横モレしやすいので注意)
- テープタイプなら、お尻のフィット感を基準に選ぶ(装着したとき、おなかとテープ止めの間に手のひらが入る程度が目安)
- 好み
- 初めて介護おむつを使う場合、介護される本人の好みに合うものが見つかるまでいろいろ試してみるのがよい
- 使い始めの頃は、本人の羞恥心が大きくなりがちなため、本人が「下着に近いものを」と希望する場合は、吸収布つき失禁パンツから始めるなど、その意思を尊重する
インナーは外から見えないタイプですし、体型にもあまり関係ありませんので、純粋に機能性や肌に合うタイプで選んで構いません。「昼用」「夜用」「昼長時間用」など、パッケージに表示がありますので、用途に合ったものを選びましょう。目安としては昼用が2〜3回分、夜用が4〜6回分の尿を吸収できます。
また、性別によってより漏れにくい形状になっているタイプのインナーもありますので、漏れが心配な場合、トラブルが多い場合はそのようなインナーを試してみるのもおすすめです。
おわりに:介護用おむつは本人の介護度や体型、好みに合わせて選ぶ
介護用おむつは、失禁などの排泄トラブルが増えてきたら考え始めるものですが、おむつに切り替えることで残存能力が低下するリスクもありますので、始める時期は主治医などに相談して決めるのがおすすめです。
選ぶ際は、本人の介護度や体型、好みに合わせてアウターを選び、アウターに合わせてインナーを選びます。最初はいくつか並行して使ってみて、本人の好みに合わせて絞り込んでいくと良いでしょう。
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