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生活保護を受けている高齢者は、老人ホームに入れる?

老人ホーム

生活保護とは、国が憲法ですべての国民に保障している「健康で文化的な最低限度の生活」を、経済的に困窮してしまったときでも営めるようにし、最終的には経済的な自立につながるよう補助するための費用です。

このような生活保護の性質から、高齢者でも生活保護を受けられる場合があることや、生活保護を受けていても老人ホームには入れることなどはなかなか知られていません。詳しく見ていきましょう。

そもそも、高齢者は生活保護を受けられるの?

高齢者であっても、生活保護を受けるための条件を満たせば、生活保護を受けられます。そもそも、高齢者であっても若年者であっても、生活保護は「資産、能力、他の法律による援助や扶助などその他あらゆるものを生活に活用しても、なお最低限度の生活を維持することが不可能な場合」にのみ適用される、という原則があります。この原則は、具体的には以下のようなことを示しています。

資産の活用
  • 生活保護の受給を検討する前に、まず換金できる資産があれば売却するなどして生活費に充てる
  • 資産に当てはまるものとしては、土地・不動産・預貯金・生命保険・自動車などが挙げられる
能力の活用
  • 生活保護の受給を検討する前に、シルバー人材センターや、高齢者でも働ける事業などを活用する
  • 能力に応じ、収入が得られるなら得ることがまず大前提とされる
扶養義務者からの扶養の活用
  • 強制ではないものの、子どもや兄弟姉妹、親戚などからできる限りの援助が求められる
  • 生活保護法で定められている「扶養義務者」とは、申請者本人から見て三親等まで
  • 高齢者の場合、多くは両親が存命でないため、兄弟姉妹や子どもからの援助を求めるのが一般的
他の制度の活用
  • 生活保護制度以外の法律や、制度による給付がある場合は、それを優先して受給し、生活費に充てる
  • 年金を受給している場合は、それでも足りない生活費を生活保護で補う

このように、まずは本人が持っている資産を換金できないかどうか、なんとか能力を活かして働き、給与を得られないかどうか、さらには扶養義務者からの援助が受けられないかどうか、他の制度は活用できないかどうか、という4つのポイントを順にチェックしていきます。

それでもどうしても生活保護以外に生活費を得る方法がない、あるいは生活保護を受けないと「健康で文化的な最低限度の生活」を維持できない、という場合であれば、生活保護を受けられます。よくある誤解として、年金を受け取っているのだからそれ以上に生活保護は受けられない、と考えている人もいますが、これも一概にはそう言い切れません。

なぜなら、生活保護には「生活最低基準」という金額の目安が設定されていますので、年金の支給額がこの最低基準額よりも下回っている場合には、基準額に至るまで生活保護費をプラスして受給することができます。一方、年金の受給を含めた収入が生活保護の基準額よりも多い場合は、生活保護の対象となりませんので、支給を受けることはできません。

生活保護の高齢者を受け入れてくれる老人ホームとは?

上記のように、高齢者であっても生活保護によって、最低限度の生活を営むための生活費の保障をしてもらえることがわかりました。では、そういった生活保護の高齢者を受け入れてくれる老人ホームなどの高齢者施設はあるのでしょうか。「生活保護を受けていると、申し込みの時点で断られるのではないか」といった不安を抱える高齢者の方も多いのですが、すべての施設とはいかないものの、生活保護の受給者でも受け入れを行っている高齢者施設もあります。

基本的には、公的施設であり個人負担額の少ない「特別養護老人ホーム(特養)」が理想的と考えられます。有料老人ホームなどと比較しても費用が安く、所得に応じた負担軽減の制度などもありますので、費用面での心配はありません。また、認知症を発症している人でも入居することができます。

しかし、上記のようなメリットの多さ、公的機関が提供しているという安心感などから、地域によっては入居希望の待機人数が多いところもあり、しかも原則として要介護度3以上の高齢者しか受け入れていないため、要支援や要介護度1〜2といった比較的自分でやれることの多い高齢者は受け入れてもらえないことも少なくありません。

他に入居できる高齢者施設としては、「住宅型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「認知症グループホーム」などの選択肢があります。生活保護者の受け入れについては、各施設(事業者)ごとにガイドラインがあり、一切受け入れ不可というところもあれば、人数に上限があるものの受け入れている、というところもあります。

施設では毎月の家賃・食費・光熱費がかかることになりますが、生活保護を受給している場合、家賃は「住宅扶助」の範囲内、その他生活費(食費・光熱費・雑費など)は「生活扶助」の限度内におさまる施設を探さなくてはなりません。有料老人ホームの場合は、入居一時金を撤廃している事業者もありますので、そういったところが見つかれば、より入居しやすいでしょう。

数はぐっと限られてきますが、入居者は生活保護受給者が中心、という老人ホームも存在します。住宅型の場合、介護サービスは入居者の意思で外部の事業者を選定しますが、入居者に対しその老人ホームと同系列の介護サービスを斡旋して収益を増やそうとする事業者もいます。

こうした事業者は一概に悪質とは言い切れないものの、いわゆる「貧困ビジネス」の温床となっているケースも考えられますので、口コミや身近な人からの意見などをよく聞き、信頼できる事業者を選ぶのが大切です。

生活保護の高齢者が老人ホームを探すときの注意点は?

生活保護を受給している高齢者が老人ホームを探すときは、まず生活保護受給担当のケースワーカー(自治体の福祉事務所職員)に相談し、施設に入居したいという意思を伝えましょう。ケースワーカーは日々多くの生活保護受給者と接していますので、生活保護受給者でも受け入れてくれる施設についても情報を豊富に持っています。

「今の生活環境をあまり変えたくない」「具体的には、このくらいの出費で抑えたい」など、自分の希望を合わせて伝えれば、どういった施設なら入居できるのかといった提案や紹介をしてもらえます。

もし、家族の近くで暮らしたいなどの希望があり、現在の住所を離れて別の自治体の施設に入居(転居)したいという場合は、移管の手続きが必要となりますので、この場合もまずは相談してみましょう。生活扶助・住宅扶助の上限額は自治体によって異なりますので、転居する場合は転居先の自治体が定める上限額をオーバーしない施設に入居しなくてはなりません

老人ホームの費用負担に上限がある?

上記のように、生活保護者に支給される生活費や家賃には、各自治体によって上限額が設定されています。収入の有無や世帯の人数、物価や家賃相場などによっても異なり、例えば単身者の家賃扶助・生活扶助はおおよそ以下のようになっています。

家賃扶助
月額22,000円〜54,000円程度
生活扶助
月額60,000円〜75,000円程度

2つの扶助を合計すると、月額82,000円〜129,000円と、かなり幅があることがわかります。全国的に見ても、地域によって大きな差があります。前述のように、引っ越しを伴う入居の場合は、事前に「希望の入居先が所属する自治体の費用上限額」「生活保護者の受け入れがあるかどうか」「ある場合は高齢者本人が条件に合致しているか」といったことを調べておく必要があります。

例えば、費用面で問題がなくても、施設によっては生活保護者の入居を受け入れていないところや、人数制限があるところもあります。近年では、ホームページに記載している施設や、地域名と生活保護をキーワードにインターネット検索を行うと見つかったりする施設もあります。ぜひ、さまざまな手段で本人に合った施設を探しましょう。

おわりに:生活保護を受給している高齢者でも、入居できる老人ホームはある!

そもそも、年金をもらっている高齢者であっても、年金の受給額が最低限度の生活を送るための基準額に達していない場合、不足分を生活保護から受けられます。このように、高齢者でも生活保護を受給できる場合があります。

また、生活保護を受給していても、入居できる老人ホームはあります。基本的には公的機関である特別養護老人ホームが理想ですが、他にも受け入れている施設がありますので、信頼できる事業者を選びましょう。

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