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高齢者特有のむくみ、どうやって対策すればいい?

介護

高齢になると、体のいろいろな機能が衰えてくるのは仕方のないことです。とくに、全身の筋肉や血管が徐々に衰えてくることで、さまざまな疾患や症状につながることはよく知られています。そんな症状の1つに、高齢者特有の「むくみ」があります。

高齢者に多いむくみとは、どんなことが原因で起こり、また、どんな対策をすれば良いのでしょうか。むくみが起こる原因を知り、効果的に予防していきましょう。

高齢者がむくんでしまうのは、何が原因なの?

超高齢化社会と呼ばれる日本では、全人口の約27%を65歳以上の高齢者が占めています。高齢者の増加とともに増えているのがこの「むくみ」で、専門的には「慢性下肢浮腫」と呼ばれています。慢性下肢浮腫とは疾患や疾患による症状ではなく、高齢者特有の長時間動かない、歩くときに筋肉をあまり使わない、といった生活習慣から生じるものです。

通常、足のむくみが生じた場合は心不全(心臓のポンプ機能が低下して全身の血液循環が滞る)・腎不全(血中から余分な水分や老廃物を除去できなくなる)・深部静脈血栓症(下肢の奥の静脈に血栓ができ、まれに血流に乗って肺動脈に詰まって死に至ることも)などの生命に関わる疾患が疑われることから、足がむくんでいるからと病院を受診した場合、まずはこれらの疾患がないかどうか、複数の診療科をまたいで全身の検査を行います

ところが、生活習慣による慢性下肢浮腫では、検査をしてもどこにも異常がありません。もし、慢性下肢浮腫を先に知っていて未然に防いでいれば「何か重大な病気があるのかもしれない」と不安がることも、慌てることもありませんし、不必要な検査を受けなくても良いのです。そこで、普段から高齢者本人の身近にいる家族やヘルパー、介護福祉士などが慢性下肢浮腫の知識を持ち、むくみを引き起こしやすい生活習慣を改善に導いていくことが大切です。

慢性下肢浮腫を引き起こす生活習慣としては、以下の3つが挙げられます。

長時間座り続けている
  • 高齢になると、どうしても椅子や車椅子に座って1日を過ごすことが多くなる
  • 下肢の血流は、ふくらはぎの筋肉が収縮する力で足首から心臓へと戻る
  • 足を動かさずにじっとしていると、血液が戻って行かず、下肢の血流が悪くなる
  • そして下肢に溜まった余分な血液の水分が血管外へ漏れ出し、むくみが生じる
長時間立ち続けている
  • 長時間の立ちっぱなしも、座りっぱなしと同じように下肢の血流を滞らせてしまう
  • とくに一人暮らしの高齢女性に多く見られ、料理・洗濯・掃除などの家事に時間がかかることが原因
  • 無意識のうちに立ちっぱなしでいる時間が増えて下肢の血流が滞り、むくみを引き起こす
歩行時に十分な動きができていない
  • 筋力が低下していたり、膝や足首の関節が悪かったり、パーキンソン病を発症していたりして、小刻み歩行やすり足歩行になりやすい
  • すると、歩いていてもふくらはぎの筋肉がしっかりと動かないため、下肢の血流を押し流せない

このように、高齢者のむくみとは長時間同じ姿勢でいること、そして筋力の低下などが原因でふくらはぎの筋肉をしっかりと動かせないことの2つが原因で起こります。むくみは疾患ではなく、軽い段階では痛みなどの自覚症状も現れにくいため、本人も周囲も気づかないうちに進行してしまうことが大きな問題です。

そして、むくみが進行して足がぱんぱんに腫れ上がったり、強い痛みが生じたりして始めておかしいと気づき、病院を受診する人が非常に多いのです。もっと早い段階で慢性下肢浮腫の症状に気づき、適切な予防を行っていれば、痛みなどの症状が出る前に進行を食い止めることができます。次の章では、実際の予防対策について見ていきましょう。

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高齢者のむくみの予防対策は?

むくみ(慢性下肢浮腫)を起こさないためには、「長時間同じ姿勢をとらない」ということが最も大切です。同じ姿勢が続いてしまうときは定期的に足を曲げ伸ばししたり、少し足を高めにして座るようにしたりすると良いでしょう。筋力をつけるために、1時間おきに立ち上がって少し歩くというのも大切です。

寝たきりの人では、足ではなく背中やお尻に水が溜まりやすいことから、定期的な体位交換が必要です。いずれの場合も、夜に寝るときは足を少し高くして寝ると、翌朝のむくみが軽減されやすいです。ただし、「急なむくみの進行とともに体重が増えた」「むくみとともに息切れや呼吸困難などが見られる」というときは緊急を要する病気の可能性がありますので、できるだけ早く病院で診察を受けましょう。

また、日頃から「日中にむくみ予防の着圧ソックスを履く」「椅子に座るときは、足とお尻を同じ高さにする」という2つのことを実践していくとむくみ予防になります。

むくみ予防に着圧ソックスを履こう

足のむくみは、夜に寝ているとき(体を横にしているとき)よりも、日中起きているときに悪化しやすいため、起きているときに着圧ソックスを履いておくと効果的です。着圧ソックスは特別なものを購入しなくても、ドラッグストアなどで購入できる一般的なもので構いません。

就寝時にむくみを改善する目的の着圧ソックスを購入しても構いませんが、高齢者が使う場合は就寝時ではなく、日中に使いましょう。また、着圧ソックスはその性質上、高齢者が自力で履くのが難しいこともありますので、そのときは介助者が手助けすると良いでしょう。

椅子に座るときは足とお尻を同じ高さにしよう

椅子に座っているときは、足を下ろしていると下肢に血液が溜まりやすくなりますので、お尻と同じくらいの高さに上げておくのがおすすめです。低めの台に足を乗せるのではなく、座面と同じくらい、あるいはそれよりもやや高めの椅子をもう1つか2つ用意し、足を高く上げておける工夫をしましょう。

しかし、椅子に座るときに他の椅子を用意したり、わざわざ足を上げる動作が面倒になってしまったりして、続かなくなってしまうこともあります。できれば、毎日座る椅子をリクライニングチェアにして、自然と、そして楽に足を上げる体勢になれるのが理想です。

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おわりに:高齢者特有のむくみは多くが生活習慣による「慢性下肢浮腫」

高齢者は、全身の筋力の低下や体力の衰えなどから、どうしても動かない、あるいは長時間同じ姿勢でいる生活になりがちです。すると、座りっぱなしや立ちっぱなしによって下肢に血液が溜まりやすくなり、むくみの原因となります。

そこで、日頃から長時間同じ姿勢でいるときは1時間ごとに動いたり、足を上げておいたり、着圧ソックスをつけてむくみ対策をしておくと良いでしょう。慢性下肢浮腫は、生活習慣で十分改善できます。

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