発症すると少しずつ脳が委縮し、心身の状態に異変を来すようになる認知症。
発症後、患者の気持ちを落ち着けたり、身体機能を維持するには自宅でのリハビリが有効だとされています。
今回は認知症に有効的なリハビリの種類や、具体的な方法、注意点を解説します。
認知症のリハビリの種類とは?
認知症のリハビリには、用いる手法や期待される効果ごとに以下のような種類があります。
運動療法
理学療法士の指導のもと、できることを増やし、認知症患者が自立した生活を送れるように身体機能を維持・向上させるために行うリハビリです。
また身体だけでなく、運動することを通してストレス発散と精神的安定もはかります。
音楽療法
楽器を演奏したり、歌を口ずさんだり、音楽に合わせて体を動かすなどするリハビリです。
個人の好みに合わせが音楽を聞かせることで脳の活性化をはかったり、リズムや音の刺激で、患者の情緒を安定させる作用が期待できます。
美術療法
絵を描いたり、粘土などで造形物を自由に作ることで五感を刺激し、脳の活性化や認知機能の維持・改善をはかるリハビリ方法です。ストレス発散にも効果的とされます。
回想療法
一対一、または数人単位のグループで語り合ったり、ときには昔の写真やおもちゃなどを使って、過去の思い出や感情をよみがえらせるリハビリ方法です。
記憶を引き出すことで脳の活性化を、過去のプラスの感情を引き出し共感することで、患者の情緒の安定をはかれるとされます。
アニマルセラピー
訓練された動物に触れたり、話しかける機会を持つことで、日々の生活に安らぎや希望、動物のお世話をする意欲を持つきっかけとなるリハビリです。
人間同士のコミュニケーションが難しい認知症患者にも、有効的な方法とされます。
自宅でできるリハビリ方法は?
前項でご紹介した5つのリハビリは、以下のようなかたちで自宅でも行えます。
ラジオ体操やストレッチ
認知症患者は外出を嫌う傾向が強く、どうしても引きこもりがちになります。
このためラジオ体操や、テレビで紹介されている体操、ストレッチを家族が一緒に行うだけで、認知症患者にとっては十分な運動療法となり得るのです。
また動かないことによる不眠や、生活の昼夜逆転解消にも効果が期待できます。
好きな音楽をかけたり、歌う時間を作る
家族や近隣の方と一緒に合唱したり、本人が好きな曲や想いでの曲を家でかけてあげるだけで、立派な音楽療法と回想療法になります。
特に歌は喉の筋肉を使うため、ストレス発散の他、嚥下機能の改善効果も期待できますよ。
趣味や楽しめる作業、脳トレーニングを行う
患者本人が趣味にしていた手芸や裁縫、折り紙などを家で行えば美術療法に、またパズルや計算、字の書き取りなどゲーム要素のある学習も回想療法になります。
家で介護者が家事や作業をしている間、スキマ時間にやってもらうだけでも、認知機能改善効果が期待できる十分なリハビリとなるでしょう。
リハビリのときに心がけることとは?
リハビリは認知症の進行速度を遅くし、ときには、認知機能の改善も期待できるものですが、劇的に症状を改善するようなものではありません。
あくまで、自分の世界にこもりがちになる認知症患者の生活に楽しみを与え、活動意欲を向上させることで症状の進行を遅らせるためのもの、と認識しておきましょう。
この他、認知症患者に対し自宅でリハビリを行う際に、介護者・家族が理解しておくべきポイントとしては以下が挙げられます。
本人に無理をさせてまでやらせないこと
リハビリの目的は、認知機能の改善と同時に患者の生活に楽しみを与えることです。
本人の体調や気分がのらないのに無理にリハビリをさせると、患者がリハビリに対し「嫌なもの」というイメージを持ち、取り組む意欲をなくしてしまいかねません。
どうしても意欲を持てないようなら無理はさせず、気が向くのを待ってあげてください。
リハビリの内容は、本人のプライドを傷つけないものにする
認知症になると、本人の意思に関係なく少しずつできないことが増えてきます。
できないことは患者本人にとって多大なストレスになりますから、リハビリ内容は本人のプライドを傷つけず、楽しく続けられるものを選びましょう。
体、心、脳への刺激になる内容を意識する
手先や五感への刺激は脳を刺激し、運動療法は体に作用して体力低下を防ぎます。
同時に、リハビリを通しての家族や介護者とのコミュニケーションは患者の心を満たすものとなりますので、リハビリは各種バランスよく取り入れると良いでしょう。
おわりに:認知症のリハビリには、自宅でも行えるものがたくさんある
音楽や美術で五感を刺激し、回想することで脳を活性化し、運動療法で体を動かす認知症のリハビリは、自宅でも実践可能です。例えば、家族や介護者と一緒に音楽を聴いたり歌うこと、またラジオ体操をするだけでも立派なリハビリになります。ペットを飼っている家庭では、一緒に生活するだけでアニマルセラピーの効果も期待できるでしょう。患者本人と家族が楽しめるよう、毎日にリハビリの時間を設けてみてくださいね。
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