認知症とは、主に高齢の人で脳機能が衰え、脳の認知機能(認識、記憶、判断などの力)が低下する症状のことです。症状を引き起こす疾患はさまざまですが、中でもアルツハイマー病は有名です。
このように、認知症と一口に言っても、状態や原因は人によってさまざまです。そこで、認知症かもしれないと疑われる場合は、認知症に関する十分な知識や経験のある専門医にかかるのが良いと言われるようになってきました。
認知症専門医とは?何科にいけば診てもらえるの?
認知症専門医とは「認知症の治療にかかわる十分な知識と経験がある」と判断できる医師に対し、「日本老年精神医学会」と「日本認知症学会」がそれぞれ認定している制度です。2019年現在、約2,000人が認定を受けていますが、厚生労働省によれば今後の高齢者・認知症患者数の増加予想に伴い、さらに約2,000人の専門医が必要になると考えられています。
認知症専門医は通常、精神科や内科・老年科などにいることが多く、「認知症センター」や「もの忘れ外来」などの名称を掲げていることもあります。そのような診療科を訪ねていくのも良いですし、日本認知症学会や日本老年精神医学会のホームページから専門医のいる医療機関を検索することもできます。
「認知症センター」や「もの忘れ外来」をはじめ、認知症専門外来のある病院には、たいていCTやMRIなど、脳の状態を把握して正確に診断するための画像検査機器が備えられていたり、あるいはこうした機器を持つ大病院と連携して速やかに紹介受診できるようにされているなど、設備や制度が整えられているのが特徴です。
また、厚生労働省は各地域での認知症治療の中核施設として「認知症疾患医療センター」を全国約250ヶ所に設置しました。ここは認知症専門医が鑑別診断や治療を行うだけでなく、精神保健福祉士などの専門の相談員が行う医療福祉相談、地域の保健・医療・福祉関係者を支援する体制が整えられています。
最初から専門医に診てもらえばいいの?
家族や自分自身が認知症を発症したかもしれないけれど、どこに相談に行けばいいかわからない、という場合は、まずかかりつけ医に相談するのが良いでしょう。というのも、かかりつけ医であれば、普段の患者さんやご家族の様子を知っていることから、認知症かどうかの兆候に気づきやすく、また近くの地域の専門医、それも患者さんの状態に合わせた医師や病院を紹介してもらいやすいからです。
もちろん、かかりつけ医が認知症の専門医も兼ねていればそれにこしたことはありませんが、そうでなくても、普段のちょっとした体調の変化はかかりつけ医、認知症に関わる専門的な検査や容態の急変時には専門医、と使い分けて受診できると理想的です。自宅から通える範囲なども含め、ぜひかかりつけ医に相談してみましょう。
しかし、かかりつけ医がない、あるいはかかりつけ医に診断が難しいと言われた、といった場合は地域の「認知症疾患医療センター」や「地域包括支援センター」などで相談するのもおすすめです。「地域包括支援センター」は、地域の高齢者が安心して生活できるよう、日常生活や介護に関する幅広い相談を受け、それを必要なサービスにつなぐ役割をしている相談窓口です。
本人がとくに受診に乗り気でない場合など、まずはこのような相談窓口で話をしてみるだけでも、と連れ出すのも良いでしょう。最初に「地域包括支援センター」に相談すると、認知症と診断された後に要介護認定を受ける場合や、ケアマネジャーを選定する場合など、スムーズに進みやすいという利点もあります。
最初から患者さん本人の状態に合うような専門医を自分で探そうとすると、手間がかかるうえ、どの医療機関がより合っているのか判断しづらいことも多いです。さらに、大きな病院に直接行ってしまうと、待ち人数が多く、時間や体力的な負担が大きくなってしまう場合もあります。ですから、できるだけかかりつけ医や支援センターなどで一度相談してから、適切な医療機関に紹介してもらうのが良いでしょう。
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病院に行くときにどんな準備をしておけばいい?
実際の診察の流れとしては、以下のようになっています。
- 問診
- 本人と家族からこれまでの経過を聞き取る
- 本人に自覚がない場合も多いので、家族や身近な人からの情報が重要
- 診察
- 血圧測定・聴診
- 発語・聴力・手足の麻痺・不随意運動の有無・歩行状態など
- 検査
- 神経心理検査…長谷川式簡易知能評価スケール、ミニメンタル検査など
- 画像検査…頭部CT検査、頭部MRI検査、脳血流SPECT、MIBG心筋シンチグラフィなど
- その他…血液検査、心電図検査などを必要に応じて
- 診断
- 認知症かどうかの診断を行う
- 場合によっては当日に診断結果が出ないこともある
問診・診察・検査から総合的に判断して診断となります。とはいえ、患者さんの体力や都合などを鑑み、これらの検査をすべて1日で行うわけではありませんし、必要がないと判断される検査もあります。しかし、中でも家族や周囲の人の感じている違和感や生活の困難さを問診するのは非常に重要な項目ですから、とくに以下のようなことをメモなどにまとめて整理しておくとスムーズに診察を進めることができます。
- どのような症状に、いつ頃気づいたのか
- 家族や身近な人は本人のどんな症状で困っている、または違和感を感じているか
- 症状に気づいた前後から現在までに、家族構成や生活環境に変化はあるか
- 日常生活でどんな困りごとが起こっているか
- 今までにかかった疾患、現在飲んでいる薬があれば
検査では記憶障害などの程度を調べるペーパーテストを中心としたものと、画像診断などを中心とした脳梗塞・脳出血・脳萎縮などを検査するものがあります。脳の血流が保たれているかどうかを検査する場合は「脳血流SPECT」、レビー小体型認知症かどうかを調べるためには「MIBG心筋シンチグラフィ」を行うこともあります。
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おわりに:認知症の専門医は専門外来のほか、精神科・内科・老年科などにいる
認知症の患者さんは、今や高齢者の4人に1人と言われています。高齢者が増加し、認知症を抱える人も増えたことから、認知症の専門医や専門外来は年々増えています。認知症かもしれないと思ったら、専門医にかかるのが良いでしょう。
とはいえ、突然初めての病院に行くのではなく、かかりつけ医や地域の支援センターなどに相談して紹介を受けた方がスムーズです。受診の際は、問診で話したいことをメモなどにまとめて行きましょう。
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