物事や記憶を認識・認知する脳の機能に問題が出ることで発症する認知症には、脳の変化が現れる部位や症状によって、いくつかの種類に分けられています。
今回は認知症のうち「アルツハイマー型認知症」について、発症原因や症状、また症状が進行していくうえで見られる特徴などを解説していきます。
アルツハイマー認知症とは?何が原因で発症するの?
アルツハイマー型認知症は、認知症患者のうち半数近くが発症しているとされる各種認知症のなかでも比較的発症例の多い認知症です。
一般的には60代以上の高齢者が発症しやすいとされていますが、アルツハイマー型認知症は他の認知症よりも40~50代の若年者の発症例が多いという特徴があります。
このことから、かつては40~50代が発症するケースを「アルツハイマー病」、60代以上が発症するケースを「アルツハイマー型認知症」と区別していました。
しかし現在は、発症・発覚時の患者の年齢にかかわらず、同一の疾患として「アルツハイマー型認知症」と呼称するのが一般的です。
アルツハイマー型認知症の発症原因は、「長年にわたって脳にアミロイドβやタウタンパクというタンパク質が少しずつ蓄積していく」ことと考えられています。
これは、アミロイドβやタウタンパクなどのタンパク質が脳に蓄積されていくことで、細胞の損傷や神経細胞の減少など脳の変質が起こり、最終的には脳全体が萎縮し認知症症状が現れ始めるとする説です。
なお、なぜアミロイドβやタウタンパクなどのタンパク質の脳への蓄積が始まるのか、そのきっかけやメカニズムは現在もわかっていません。
40~50代の若年での発症には親族間の遺伝の可能性も指摘されていますが、60代以上の高齢者では遺伝傾向が見られないため、発症原因について不明点が多いのが現状です。
アルツハイマー型認知症の症状はどのように進んでいくの?
アルツハイマー型に限らず、認知症症状の現れ方には個人差やそのときの条件・環境によるムラも大きいですが、進行の段階別の代表的な症状としては以下が挙げられます。
アルツハイマー型認知症:初期段階の症状
- 脳の記憶領域である海馬が損傷されることによって、近い時期の出来事・記憶を全体的に忘れてしまう「物忘れ」
- 昼や夜、日時、季節がわからず、間違えて認識してしまう「時間の見当識障害」
- 以前は問題なく手順や段取りを組んでできていた生活や仕事上の行動が、だんだんできなくなる「実行機能障害」
アルツハイマー型認知症:中期段階の症状
- 自宅や慣れ親しんだ場所で、現在地や順路がわからなくなる「場所の見当識障害」
- 衣服の着脱やスイッチのオン・オフ、お金の支払い方や排泄など、以前は普通にできていた生活上必要な行為のやり方がわからなくなる「失行」
- 思っていることを言葉にできない、または伝えられなくなる「言語能力の低下」
- 時間や場所がわからない、普通にしていたことができなくなることに本人がショックを受けることから起きる、うつや暴言・暴力などの「二次障害」
アルツハイマー型認知症:後期段階の症状
- 言葉や発語機能を司る脳機能が多く失われることによる「重度の言語障害」
- 脳と身体機能が著しく低下することによる「歩行困難」や「動作困難」、嚥下や飲食ができなくなることによる「栄養不良」や「誤嚥」
このように、アルツハイマー型認知症は初期には出来事や約束そのものの物忘れから始まり、その後少しずつ進行して患者の日常生活を困難なものにしていきます。
最期には自力で歩くことはおろか、寝返りや座るなどの動作や食事・排泄、会話など生活に必要な機能のほとんどが失われて、意思疎通が困難な寝たきり状態になります。
おわりに:アルツハイマー型認知症の症状を知り、兆候を見逃さないようにしよう
認知症のなかでもアルツハイマー型認知症は、脳に特定のタンパク質が少しずつ蓄積されることで少しずつ脳や神経細胞が損傷し、発症するとされています。
60代以降の高齢者を中心に40~50代の若年層にも発症が見られる点が大きな特徴です。
なぜ脳へのタンパク質の蓄積が起こるのか、発症原因についてはわかっていないことも多く、根本的な治療方法はありません。症状への正しい知識を持ち、兆候を見逃さないようにしましょう。
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