噛む力や飲み込む力が低下し、手を動かすのが難しくなってくると、食事をするにも第三者の介助が必要になってきます。
そこで今回は、食事介助をするときに注意すべきポイントについて、介助を受ける側・提供する側の目線と、事前準備に分けて紹介します。
介助される側が食事するとき、どんな姿勢をとればいい?
高齢者の食事を介助するうえで、最も懸念されるのが誤嚥(ごえん)です。
誤嚥とは、口から入った食べ物や飲み物が誤って気道に入ってしまうことで、高齢者の命を奪うことの多い肺炎の原因にもなります。
食事介助を提供するときは誤嚥を避けるため、介助を受ける側である高齢者に、以下のような姿勢を取ってもらってください。
自力で座って食事ができる場合
まずはいす、または車いすに、足をしっかり床につけるようにして深く腰掛けてもらいます。
車いすではフットレストが付いているものもありますが、食事のときにはフットレストからおろして、地面に足を付けるようにしてください。
いすの座面の高さは、足を床につけた状態で膝が90度くらいに曲がる高さが適切です。
テーブルは、高齢者が軽い前傾姿勢をとって肘をついたときに、肘が90度に曲がるくらいの高さのものが良いでしょう。
食事のために体を起こしたり、机に向けて前傾姿勢を保つのが難しいようなら、背中にクッションを入れるなどして体を支えて安定させます。
リクライニング車いすで食事する場合
いすと同じく90度にして食べるのが最も安全ですが、本人と相談しながら、無理なく食事できる角度に車いすの背もたれの角度を調整してください。目安は45~80度です。
なお、どの角度で食事するにしても、足は膝が90度に曲がるようステップに乗せます。
体が安定しないようなら、背中の周りや頭の後ろにクッションをはさんでくださいね。
ベッドで食事する場合
リクライニング車いすの場合と同様、45~80度を目安に、本人の希望・状況に合わせて背もたれの角度を調節します。
このとき、ベッドの腰の間にスキマができないように、また軽く足を曲げられるように膝下にクッションを入れてあげると、楽に座っていられるようになります。
背中や首・頭の周りにも、本人の状況に合わせクッションを添えてあげると良いでしょう。
食事の前の手順って?
食事の介助を始める前に、以下の手順を踏み準備を整えましょう。
《1》声掛けをする
本人に食事の時間であることを知らせます。「今日は○○さんの好きなおかずですよ」などと声をかけて食欲を刺激し、しっかり起きてもらってください。
《2》部屋、身の回りを整頓する
手をきれいに拭き、食事で服が汚れないよう前掛けをしてあげます。寝室で食事をするなら、窓を開け換気も行いましょう。
《3》口腔内をきれいにする
唾液の分泌を促すため、また誤嚥により雑菌が気道に入る可能性を減らすため、うがいや口腔ケア用のスポンジなどを使い、口の中をきれいにします。
《4》食事に適した姿勢になる
前項で紹介した内容を参考に、その方の身体状況に応じた方法で食事に適した姿勢を取ります。
実際に食事を摂ってもらうとき、どうやってサポートすればいい?
準備が整ったら、以下の手順を参考に、食事介助を始めていきます。
《1》となりに座り、まずは水分を摂ってもらう
誤嚥を防ぐため、まずはお茶や水を与えて口の中を潤してあげます。
《2》水分の多いものから順に、食事の提供を始める
汁物など、水分の多い料理から提供を始めます。食べやすく、胃酸の分泌を活性化させてくれるので、固形物を食べる前の良いウォーミングアップになります。
《3》主食・副食・水分をそれぞれ交互に与える
一回に口に運ぶ量は、ティースプーン一杯分くらいが目安です。スプーンは下から差し出し、奥に入れないよう注意すると、誤嚥を防げます。
《4》本人の様子を見ながら、ゆっくり食事を進める
料理の温度や、本人の食べる速度に配慮しながら、きちんと前の食事を飲み込んだのを確認して食べさせていきます。
《5》食事が終わったら、食べた量を確認
完食、または本人がもういいと言ったら、食事は終了です。どのくらい食べられたかチェックし、健康管理の目安としましょう。
《6》口腔ケアをする
歯磨きをして口腔をきれいな状態にしたら、休んでもらってください。ただし、食後すぐ横になると食べ物が逆流する恐れがあるので、しばらく体を起こした状態を保ちます。
おわりに:食事介助は、本人への配慮と事前準備をしっかり行ってから提供を
食事を与えるだけが、食事介助ではありません。食事介助は、食事前後の口腔ケアや身の回りの整頓、姿勢づくりまで含めた介護サービスです。誤嚥と誤嚥による疾患を防ぎ、高齢者本人がおいしく、楽しく食事できるよう配慮してこそ、食事介助がスムーズに行えるようになります。本記事を参考に、介助する側もされる側も食事介助を楽しめるよう工夫してくださいね。
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