認知症は、加齢などが原因で脳が委縮し、認知や行動機能が低下していく病気です。
その症状は徐々に進行していきますが、ストレスも症状悪化の一因だと言われています。
今回は認知症の症状とストレスの関係を、認知症患者のストレスを減らすためにできることとあわせて解説していきます。
認知症の症状に個人差があるのはストレスのせい?
認知症の症状には、大きく分けて「中核症状」と「周辺症状」の2種類があります。
- 認知症による、中核症状
- 記憶障害、道がわからないなどの失行、計画的な行動ができなくなる実行機能障害、適切にものを認識できなくなる失認、物の名前が出てこない失語など認知症の代表的な症状
- 認知症状による、周辺症状
- 幻覚や妄想、睡眠障害、抑うつ、不安、焦燥、暴言・暴力や介護抵抗など、認知症が進行することで中核症状から発展して現れる症状
認知症の中核症状である記憶障害は、脳の海馬という場所の神経細胞が死滅していくことによって進行すると考えられています。
海馬は非常にストレスに弱いです。そのため、加齢に加えてストレスの影響でも神経細胞の減少が進みやすくなることから、認知症状の悪化速度もストレスによって倍増すると言われているのです。
また、ストレスがある人の方が「認知症による周辺症状」の現れ方も強くなるとされていて、認知症状の現れ方の個人差は、その人の性格とストレスによるものとも考えられています。
認知症の進行を少しでも遅らせ、周辺症状を現れにくくするには、患者のストレスをできるだけ減らすよう心がけることが大切なのです。
認知症の人のストレスを少なくするためにできることは?
認知症の人のストレスを減らすために、一緒に暮らす家族ができる対策としては、以下4つが挙げられます。
ちょっとしたミスを、細かく注意しない
ゴミの分別を間違える、家事の一部をこなせなくなるなど、認知症の初期症状として現れるちょっとした生活上のミスを細かく指摘すると、認知症の人は混乱してしまいます。
自分ではきちんとしているつもりなのに、いちいち注意されると、誰でもストレスが溜まりますよね。日々の小さなストレスや不安は、うつなど周辺症状悪化の原因となります。
本人が症状を自覚し、必要以上に落ち込むようなことはさせない
例えば計算ドリルなど、家族が脳の機能を強化しようと用意した問題集などを初期の認知症患者にやらせた場合、以前解けた問題が解けないケースが出てきます。
問題を解けなくても生活は遅れるのですが、問題を解けない現実に高齢者本人が必要以上に落ち込むと、うつや不安など周辺症状悪化の原因となってしまうのです。
お互いにとってストレスになる口論は、しないよう心がける
認知症になると、失語により思っていることをうまく口にできなくなります。このことがストレスとなり、認知症の進行を早めてしまうケースが考えられます。
また家族にとっても、親や祖父母を言い負かすのは気持ちの良いことではありません。
ちょっとしたことなら、加齢によるものとおおらかに捉えて、口論は避けましょう。
家族に認知症患者がいることを近隣に周知する
近隣の人に認知症を隠そうとすると、認知症の人は外出できないことから、家族は認知症患者と同じ空間に居続けることで、多大なストレスを感じるようになります。
認知症患者の閉じ込めは失踪や徘徊の原因となり、近隣トラブルのもとにもなります。
隣近所を始め地域に認知症患者がいることを周知し、地域包括支援センターに相談して介護サービスを受けた方が、高齢者・家族双方にとって有意義でしょう。
おわりに:ストレスは認知症の進行や、悪化を早める可能性がある
認知症状の現れ方には個人差があります。この個人差には認知症の種類の違いや、患者本人のもともとの性格の違いも影響しますが、ストレスの度合いも関係しているとされています。記憶障害を引き起こす脳の海馬の神経細胞は、加齢の他にもストレスで減少し、認知症の中核・周辺症状の両方を悪化させると考えられているのです。認知症を発症する高齢者本人と同居する家族、双方にとってストレスの少ない生活環境になるよう考えてみましょう。
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