認知症を根治できる治療法は、2019年時点でまだ確立されていません。
しかし病気の進行を遅らせたり、症状を抑えるための治療は行われています。
今回は認知症の治療に使われる薬の種類について、期待できる効果や薬の特徴、薬が効かない可能性などをまとめて解説します。
認知症ではどんな薬が使われるの?
認知症は何らかの原因で脳の神経細胞が損傷・減少し、脳機能が低下していく病気です。2020年現在の医療技術では、損傷し破壊された脳神経細胞を修復する術はありません。
このため認知症の治療薬は、認知症の根本治療ではなく、脳の状態をある程度コントロールすることで症状を抑えたり、進行を遅らせる目的で使用されています。
認知症治療薬として認可・服用されている薬の主な効果は、以下の通りです。
- 認知症治療薬に期待できる効果
- 物事への気力や意欲の回復のため、脳を活性化して心身を元気にする
- 激しくなった感情の起伏を穏やかにするため、脳の神経細胞の働きを調整する など
ただし、医師の指示通り認知症の治療薬を飲んでいても、最終的には認知症は進行します。治療薬はあくまで、のこっている脳の神経細胞を活性化させ失われた機能を補うことで脳機能を保ち、病気の進行・悪化を遅らせるためのものなのです。
認知症の薬の種類別の特徴は?
2019年現在、認知症治療薬として使われているのは「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」に分類される3種類と、「NMDA受容体拮抗薬」の1種類です。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、脳内の情報伝達に必要な神経伝達物質・アセチルコリンが分解されないよう働き、認知症の進行や悪化を防いでくれます。
一方でNMDA受容体拮抗薬は、脳内で神経伝達物質から情報を受け取る役割を持つグルタミン酸の働きを抑えることにより、神経細胞を調整・保護する働きがあります。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬のうち、認知症の治療薬として使われる薬の名称と特徴は、それぞれ以下の通りです。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬に分類される、3つの認知症治療薬
アリセプト®
認知量治療薬としては最も早く、1999年に認可された薬です。
3㎎・5㎎・10㎎の大きさの製剤があり、形状は口のなかで溶ける錠剤や細粒、ドライシロップ、ゼリータイプなどさまざまな種類があります。服用回数は1日1回です。
アルツハイマー型認知症の他、レビー小体型認知症の治療薬としても認可されています。
レミニール®
2011年に、アルツハイマー型認知症の治療薬として認可された薬です。
基本的には1日2回、1日あたり最大で24㎎まで飲むことができます。薬の形状や用量は4㎎・8㎎・12㎎の大きさから選べる錠剤と口腔内崩壊錠、そして同じ成分量で1ml・2ml・3mlの分量になる液剤があります。
医師の指示のもと、本人の状態に合わせて薬の大きさや服用量を調整して使います。
イクセロンパッチ®、またはリバスタッチ®
2011年からアルツハイマー型認知症の治療薬として認可されました。この2つは、別の製薬会社が製造しているものですが、成分や効能的には同じ薬です。
他の薬が飲み薬であるのに対し、肌に貼って使う外用薬である点が最大の特徴です。4.5㎎・13.5㎎・18㎎のうち、成分が少ないものから使用して慣らしていきます。
NMDA受容体拮抗薬に分類される、認知症治療薬
2011年に認可された、現時点で唯一のNMDA拮抗薬系の認知症治療薬です。
アルツハイマー型認知症の患者に対し、神経の高ぶりや感情の起伏を穏やかにする効果があります。効き目や患者の様子、持病の有無などによって使用量を増減します。
薬が効かないこともあるの?
薬の効き目は、服用・使用する人の体質との相性によって変わってきます。
さらに認知症という病気は、1日のなかでも症状に波があり、日々状態が変化する病気です。
このため、症状の緩和・遅延を目的とした認知症治療薬の効き目の感じ方にも、非常に個人差が大きいといわれています。
治療薬を使用したすべての人が、必ずしも同じ効能を得られるわけではありません。
認知症治療薬の効き目やその感じ方は、使用者と薬との相性や、本人のその日の体調によっても大きく変わってくるのです。
認知症の治療薬は本人・周囲の家族が感じたことを正直に主治医に伝え、都度相談をしながら、その家族に合った治療薬を探していくことが大切だと理解しておきましょう。
おわりに:認知症治療薬は、2019年時点で4種類認可されている
認知症の治療薬は、症状を緩和して病気の進行を遅らせるために使用されています。2019年時点で認可されている治療薬はアリセプト®、レミニール®、イクセロンパッチ®・リバスタッチ®と、メマリー®の4種類です。ただ認知症という病気の特性上、本人や周囲の家族が実感できる薬の効き目には、その日の状態によって波があります。薬の効き目を観察し、主治医に相談しながら、自分達に合った薬を少しずつ探していきましょう。
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