認知症は、高齢者の4人に1人がかかると言われ、誰にとっても身近な症状の1つです。自分で気づくこともありますが、多くは周囲の人が「認知症かもしれない」と思うことが多いと言われています。
自分や家族が認知症かもしれないと思ったら、どんな病院に行けば良いのでしょうか?また、病院ではどんな検査をするのでしょうか?
認知症で病院にかかることの目的とは?
認知症かもしれないと思ったとき、病院を受診することで、まずは今困っていることを整理できます。実際に自分が体験している不自由さ、生きづらさ、感じ方、気になることなどを専門家に話し、体の中で何が起こっているのか、なぜ生きづらさや不自由さを感じるようになったのか、などを整理し、理解する手助けをしてもらうのです。
体の中で起こっていることは、認知症かもしれないし、認知症でないかもしれません。認知症だった場合は、認知症の中にもさまざまなタイプがありますので、そのうちどのタイプなのかということも診断できます。このように、まず問題を切り分け、その原因を理解するという点がメリットの1つです。
2つめのメリットは、医療面での最適な支援を受けられるということです。上記で理解した原因に応じ、それぞれに合った方法で適切な支援を受けられるので、困っていることの一部や多くが解決されることがあります。
これらを踏まえて、「これからの暮らしをつくる」という目的を持って通院していくと良いでしょう。認知症はその原因も症状の現れ方も個人差が大きく、個人の健康状態や周囲の生活環境、それまでの考え方や生き方、得られる支援によっても不自由さや生きづらさへの対処が変わってきます。
認知症は完治する病気ではありませんから、症状の進行を防ぎながら上手に付き合っていかなくてはなりません。その方法は人それぞれで、誰にでも合ういい方法というのはありません。本人と医師などの専門家、周囲の人が力を合わせ、その人に合ったやり方を試行錯誤しながら探していく過程がどうしても必要になります。病院に通院することは、そのための大切な第一歩と言うことができます。
どんな病院を受診すればいいの?
認知症というと、近年では専門のクリニックや外来も増えてきていますが、普段からかかりつけの病院があるのなら、まずはそこに行くと良いでしょう。というのは、かかりつけ医であればこれまでの経過を把握してくれているため、認知症である可能性をある程度判断したり、程度に応じて適切な専門医を紹介してもらうこともできるからです。
かかりつけ医がない場合、精神科・心療内科・脳神経外科・神経内科などの病院や診療所、クリニックで認知症の検査を受けることができます。これらの外来がある病院やクリニックなら基本的にどこでも検査が受けられますが、最近では「もの忘れ外来」「認知症外来」などといった専門外来も増えてきています。
また、「老年内科」という、高齢者を専門に診察してくれる外来もあり、認知症を含めて全身を検査してもらうことができます。このような専門外来では、日本認知症学会などで専門医の資格を取得した医師が診察していることが多いですから、認知症の疑いが強い場合は初めからこうした外来に行くのも良いでしょう。
認知症の疑いが強いかどうかは、病院を受診するほかに、まず自宅で一度テストをしてみる方法もあります。認知機能のテストはインターネット上に内容が公開されているものもありますので、病院の予約まで時間がある場合や、専門外来に行くかどうか迷った場合など、こうしたテストを試してみるのも良いでしょう。
しかし、テストはあくまでも認知機能の低下を見るだけの目安ですので、テストだけで認知症かどうかを判断することはできません。認知症かどうかを正確に診断したい場合、日常生活での困りごとを解決したい場合はきちんと病院を受診しましょう。
病院ではどんな検査をするの?
病院で行われる検査には、主に以下の5種類があります。
- 長谷川式認知症簡易評価スケール
- かかる費用が比較的安い
- 国内でもっともよく使われている認知機能テスト
- 簡単な質問を行い、その答えによってどのくらい認知機能が低下しているか判断する
- 名前や生年月日を尋ねる、簡単な計算、記憶力を試す、など
- トータル30点満点中、20点未満だと認知症の可能性が高いとされる
- ミニメンタルステート検査(MMSE)
- かかる費用が比較的安い
- 長谷川式と同様、簡単な質問で認知機能を評価する。長谷川式よりも少し質問項目が多い
- 22〜26点で軽度認知症の疑い、21点以下で認知症の疑いが強いとされる
- ウェクスラー記憶検査(WMS-R)
- かかる費用が比較的安い
- 世界的に使われている、総合的な記憶検査テスト
- 言語の問題と図形の問題の両方があり、記憶力や集中力・注意力などを評価できる
- 画像検査
- かかる費用が比較的高い
- CTやMRIなどの画像検査によって、脳の状態を診断する
- 脳のどの部分がどのくらい萎縮しているかによって、認知症のタイプや進行度を見る
- その他の検査
- かかる費用:比較的高い
- 認知症以外の病気がないか確認するため、血液検査や尿検査などが行われる場合も
- どの検査を行うかは医療機関や医師、本人の健康状態によっても異なる
基本的に、上記3つの認知機能テストのうちどれか1つと画像診断を組み合わせて認知症かどうかを診断します。また、本人の体調や健康状態によっては、その他の血液検査や尿検査なども行うことがあります。そのため、かかる費用は数千円〜約2万円程度と、個人差が大きいことに注意しておきましょう。
おわりに:認知症かもしれないと思ったら、まずはかかりつけ医を受診しよう
認知症かもしれないと思ったら、まずはかかりつけ医を受診するのがおすすめです。かかりつけ医はそれまでの本人の経過や体調を把握してくれていますので、認知症かどうかのある程度の判断や、症状による適切な専門医を紹介してもらえます。
かかりつけ医がない場合は、精神科や神経内科などで検査を受けられます。その他、「もの忘れ外来」などの認知症の専門外来や、高齢者専門の「老年内科」などに行く方法もあります。
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