認知症は、加齢や外傷などさまざまなことがきっかけで発症しますが、一部の認知症に糖尿病の人がかかりやすいと言われているのを、ご存知でしょうか。
今回は、糖尿病の人が認知症を発症しやすいとされる理由を、認知症の初期症状として見られやすい変化とあわせてご紹介します。
糖尿病の人が認知症を発症しやすい理由とは
認知症にはいくつかの種類がありますが、このうち「アルツハイマー型認知症」と「血管性認知症」は、糖尿病の人がそうでない人に比べ発症しやすいことがわかっています。
以下に、糖尿病の人がアルツハイマー型・血管性認知症になりやすい理由を、それぞれ解説していきます。
糖尿病の人が、アルツハイマー型認知症になりやすい理由
アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が徐々に死滅していくことが原因で発症します。
通常、脳の神経細胞は「グリア細胞」という細胞が常に血液中から糖を取り込み、これをエネルギーに変換することで働き続けています。グリア細胞は糖をコントロールする「インスリン」が作用することで、うまく糖を取り込めるようになるのです。
しかし糖尿病になってインスリンがうまく働かなくなると、血糖値のコントロールも脳の神経細胞への糖の受け渡しもうまくいかなくなります。
するとグリア細胞は糖を取り込めず、脳の神経細胞は少しずつ損傷を受けて「アミロイドβ」と呼ばれる物質を溜め込み、最終的には認知症を発症すると考えられているのです。
糖尿病の人が、血管性認知症になりやすい理由
血管性認知症は、脳の血流に障害が起きたことがきっかけで発症する認知症のことです。
糖尿病となり血中に糖が増えすぎると、脳の血流を阻害して動脈硬化や血管が詰まる脳梗塞、血管が破れて出血する脳出血などを発症するリスクが高くなります。
このため、糖尿病で血流障害が起こりやすい状況になるということは、脳の血流障害が原因で起こる血管性認知症発症のリスクも高くなることを意味しています。
このように糖尿病の有無と、アルツハイマー型認知症と血管性認知症の発症リスクには、相関性が確認されているのです。
糖尿病の人のこんな変化に気をつけよう
認知症は根治できる病気ではありませんが、早期に発見し適切な治療を開始することで、症状の進行を遅らせることはできます。
糖尿病の人に、以下のような変化・兆候が見られたら認知症の初期症状である可能性が考えられますので、早めに主治医に相談し脳神経外科や神経内科への紹介を受けてください。
- 糖尿病の人の認知症発見のために、気を付けるべき兆候
- 物忘れが増え、スムーズに段取りを組んで物事に取り組めなくなってきた
- 全体的に日常の動作がゆっくりになり、言葉数も少なくなっている気がする
- 感情をコントロールできないようで、急に笑ったり怒ったり、泣いたりする
- 無気力で活気がなく、うつ病のような症状が見られる
- お金の管理やお薬の管理、日常生活に問題が出てきているようだ
おわりに:血糖値が高くなると、脳の血管や細胞が損傷を受け認知症の原因となることがある
糖尿病となり、血中の糖コントロールやインスリンの働きがうまくいかなくなると、脳の神経細胞や血管は徐々に損傷されていきます。その結果、脳神経細胞の死滅が原因で起こるアルツハイマー型認知症や、脳の血管障害がきっかけで起こる血管性認知症を発症することがあります。このように糖尿病と一部の認知症の発症には、医学的な相関関係が確認されているのです。糖尿病の人に認知症を疑う兆候が現れたら、すぐ主治医に相談しましょう。
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