高齢になり生じやすい病気の1つとして、老人性のうつ病が挙げられます。
認知症と間違われることも多い高齢者のうつ病には、どのような特徴があるのでしょう。
今回は高齢者の認知症とうつ病の違いを、治療や予防の方法とあわせて解説します。
認知症とうつ病の特徴の違いとは?
認知症と高齢者のうつの症状には、以下のような違いが見られます。
- 症状の進行速度が、早いか遅いか
- 認知症は徐々に進行しますが、うつ病は比較的短期間で症状が進行し、周囲が異変を感じるような症状が見られるようになります。
- 記憶障害の現れ方や程度
- 認知症では、直近の出来事を少しずつ記憶できなくなりますが、うつ病では突然、数日間の出来事を思い出せなくなることがあります。
また思い出せないことに対して、強い不安や焦りを感じるのもうつ病の特徴です。 - 認知機能の低下に関心があるかどうか
- 認知症では、症状が進行すると自分の認知機能の低下を自覚できなくなり、関心自体がだんだんと薄れてきます。一方、うつ病では自分の認知機能の低下を自覚し、症状が悪化してさらに認知機能が低下していないかを気にするようになる傾向があります。
- 自責の念の有無
- 認知症では、記憶障害や問題行動を本人が自責するケースは少ないとされます。一方うつ病では、自分の状態や周囲への迷惑に対し、強い自責の念を抱きがちです。
- 質問に対する反応の違い
- 認知症の人は、質問に対して答えになっていない回答をすることが多いです。
うつ病の人は、質問に適切に答えようと熟慮しますが、結果的に答えられないというケースが多く見られます。
高齢者のうつ病は治る?
一般的に認知症は、加齢と共に徐々に進行するため、症状の進行を遅らせるくらいしか治療方法がありません。
しかし高齢者のうつ病は、認知症とは違いきちんと治療すれば治る病気なのです。
具体的な治療方法としては「環境調整」「薬物療法」「精神療法」の3つがあります。
高齢者のうつ病の治療法
環境調整
発症原因の1つである環境的要因を取り除くため、高齢者の生活環境を整える治療法です。
家族のサポートのもと、安心して暮らせる新居への引っ越しや入院、適度に心身に刺激を与えられる家事手伝いや散歩ができる生活環境など、本人の様子にあわせて整えましょう。
薬物療法
一般的なうつ病と同じように、症状を改善するための薬を処方する治療法です。
ただし高齢者の場合、その人の体調や持病の有無、日常的に服用している薬の有無や種類に対しては、十分な配慮が必要です。
精神療法
本人の精神状態を追い詰めないよう、医師の指示のもと接し方を変える治療方法です。
「頑張れ」などの声掛けはせず、その人の人柄や症状により医師の指示のもと周囲の人たちが接し方を変えて、精神状態の回復をゆっくりと待ちます。
うつ病の症状が進行すると、本人の自殺の恐れや家族が著しく疲弊する可能性もあります。
まずは精神科の病院に相談して診断を受け、医師の指導のもとデイサービスなど介護施設を利用したり、入院することも視野に入れて治療していきましょう。
高齢者のうつ病を予防方法はある?
高齢者のうつ病を予防するには、社会とのつながりを絶やさず、以下のポイントに留意して日常生活を送ると効果的です。参考にしてくださいね。
- 地域の活動や趣味を通じて、社会や他者と積極的な交流を続ける
- 散歩やウォーキングを習慣化し、日光を浴びて適度に運動をすることを心がける
- リラックス、リフレッシュできることを見つけ、ストレスをため込まない
- ビタミンやミネラルが不足しないよう、バランスの良い食事を心がける
おわりに:認知症と高齢者のうつ病には、症状の現れ方に違いがある
症状が似ていて、間違われることも多い認知症と高齢者のうつ病ですが、その症状の現れ方や進行速度には違いがあります。ゆっくりと進行し、周囲が気づきにくい認知症に対し、うつ病は比較的短期間で進行し、周囲が症状や異変に気付きやすいのが特徴です。うつ病は認知症とは異なり、きちんと治療すれば治ります。うつ病を疑うような異変に気づいたら医師に相談し、適切な対処や治療法について指示を受けてくださいね。
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